表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

6話 戦機

「準備は良い?」



 第一演習場――広いグラウンドに80人の女子生徒を前に、俺とアリステラは立っていた。



 あまりの人数と気迫に震えが止まらない……この戦闘が、俺が見てきたあのラノベの通りだとすると、激しい戦闘になる……それは避けられない。



「大丈夫よ。安心して。私が付いてる」



 アリステラが俺の肩に手を置いて言うが……元はと言えばお前のせいだからな?



 この戦闘が終わったら、日本の文化について詳しく説明してやる……長い付き合いになるだろうからな!



「そういえば名前を聞いてなかったわね? 私はアリステラ・バーンズウッド。貴方の名前は?」


「私は九条鈴芽。よろしくね? アリステラお姉ちゃん」


「鈴芽ね……可愛らしい名前じゃない!」



 それはどうも! 俺の大好きな推しキャラの名前だよ! 世界一。



 いや、宇宙一可愛い名前だ! この名前に隠された真の意味はだな〜。



「準備オッケーよ! いつでも来なさい!」



 おっと、この話はまた後日だ! アリステラが準備完了と言った……なら、すぐにでもアレが始まるはずだ。



「なら始めましょ? 戦機展開!」


「「「「戦機展開!」」」」



 80人の女子生徒が空に手を伸ばし叫んだ。

 瞬間、彼女たちの足元に歯車状の魔法陣が展開され、空から武器――戦機が降ってくる!



 戦機――個人の魔力が武器の形になったもの。機械的な見た目であり、武器の種類は多岐にわたる。



 その全てが頂上的な力を持ち、使用者の身体能力を底上げさせる。



「戦機展開!」



 アリステラも空に手を伸ばした。髪の色と同じ魔力の輝きが天に伸び、空から灼熱の大剣

 


 いやというほど挿絵で見てきた、彼女の戦機・ドラグナートがその手に握られる。



 残るは俺1人だけ――初めてだが、やれるはずだ!



「戦機展開!」



 皆を真似て空に手を伸ばす! 足元に歯車型の魔法陣が展開され、体の内側から力が込み上げてくる!



 いけた! なら鈴芽の戦機も来るはずだ!



 そう思い空を見上げると、親の顔より見た彼女の武器……戦機と呼ぶにはひ弱で、小さく、見窄らしいレイピアが小さな手に収まる。



「来てくれた……ライトニングスパロウ」



 雷光の雀。戦機自体の攻撃力は低いが、使用者の身体能力――特にスピードが格段に引き上げられる、身体強化極振りの戦機だ。



 ライトニングスパロウを振り、目の前の80人に向き合う!



「お互い準備が出来たようね?」


「そうね……」



 女子生徒の戦機は扇だ。



 あの見た目から予想するに風を起こす、もしくは空を飛ぶといったところか……考えるだけでも厄介だ。



 2人が武器を構える――一抹の静寂の果て……木の葉が1枚、2人の間を吹き抜けた瞬間!

 


 戦闘が開始された!



「先手必勝っ!! 焼き尽くせ! ドラグナート!」



 先に動いたのはアリステラだ!

 彼女の戦機の刃が上下にジャコッと裂けるように開き、隙間から莫大な熱量を誇る熱線が解き放たれた!



 有効射程1キロの熱線による薙ぎ払い! あれが初期のアリステラ最強の技だ!

 あれに対応できないと、一瞬で勝負が決まるぞ!



 その考えは正しく、80人いた生徒のうち左翼の端から30人ほどが焼き払われた。



 まずい! このままだとアリステラの圧勝だ!



 そう思い、俺は脚に力を入れ駆け出した! この場にいる誰もが俺の速度に目を追いつかせることができない。



 雷光の速度――その速度は光を超え、俺は瞬く間に相手の左翼、アリステラの攻撃の目の前に辿り着いた。



 単純な力比べだと鈴芽では勝てない……ここは俺が知ってる4巻先の知識を使ったチートで攻める!



 ライトニングスパロウに魔力を注ぐ! ありがたいことに、戦闘知識は鈴芽の記憶で体を動かすことができる!



 俺は真っ直ぐアリステラの薙ぎ払いに突っ込み、魔力の緩い場所を目指した!



 見えた!パリィポイント!



 大規模な攻撃には、そう呼ばれる魔力の薄い層がある。そこに別の魔力をぶつければ軌道を逸らすことが可能! これが4巻先の知識だ!



 ライトニングスパロウがアリステラのパリィポイントを叩く!



 その脆い箇所に俺の魔力が反発し――最も容易く軌道を空に逸らした!



「嘘!?」



 アリステラが驚愕の声を上げた。あいつに気づかれるより前に移動して、元の場所に戻る!



 そう考え、俺は光の速さでアリステラの後方に戻った。



 思ったよりハードだな!!



「な、何が起こったの? あいつの攻撃は? 誰かが逸らした? いや、魔力が尽きたの?」




 向こう側の生徒たちも動揺を隠せないようだ。



 そうだよな。あれ程の魔力の奔流が一瞬にして空に消えたんだから。



「何が起きたかわかんないけど……まだよ!」



 アリステラが残った生徒に向かって駆け出した。



 先程の攻撃は一度しか使えない。2発目を使うと魔力切れを起こし、戦闘不能になるからだ。



 だから今からのあいつは近接戦で地道に戦うしかない。そうなると、次はこいつのサポートだ……全く、鈴芽ちゃんは忙しいぜ!



「鈴芽! 貴方は私の後ろで見てなさい!」


「う、うん! 分かったわ!」



 嘘である。

 分かったと言いつつ、彼女が戦闘に集中している隙に俺は駆け出し、後方の生徒を1人ずつ処理していく。



 ライトニングスパロウ――レイピアの切先で生徒の背中を突き、HPを0にする。HPが尽きた生徒は強制的に戦機が解除され、しばらくの間行動不能になる。



 力は無くとも、この圧倒的な速度を乗せた突きは、如何なる相手の防御をも貫く最強の矛になる。



 だが、この戦い方が通用するのは4巻先までだ……それから先は俺自身が新しく編み出さなければならない……



 今はこの戦闘で少しでも感覚を掴む!



 そうして俺は、誰の目にも止まらない速度で着実に敵を処理していった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし面白いと思って頂けたら

評価とブックマークをして頂けると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ