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45話 会議は柔らかく、楽しくね

「は〜い。これから明後日の作戦について会議をしま〜す」



 場所は戻り基地内の一室。

 鈴芽を歓迎するために彩られた空間。

 机と椅子を端に寄せ、一つ大きな机に集まり、来栖が大きな模造紙を開いた。



 まるでグループワークが始まるのか? と思わせるこの空気感に私たちは置いてけぼりを食らった。



 八重さんに丹色さん、柳先生を見ると慣れているのか、皆、机に広げられた模造紙にペンで名前を書いていく。



「あの〜。今から会議ですよね? 何してるんです?」


「ん〜? 名前を書いてるのよ〜」



 それは見ればわかる! と鈴芽と大樹は思った。



 だけどさっきの戦いでこの人に逆らわない方が身のためと思い、そんな文句は空気と一緒に胸の中に押し込んだ。



「鈴芽さんは初めてだものね〜。説明するわ。まずここに名前を書いて〜」


「りょ、了解」



 来栖から渡されたマジックペンを受け取り、キュッキュと自分の名前を書く。



 模造紙には横一列に隊員達の名前が並んだ。右側にはスペースが空いていて、多分ここに作戦内容を書くんだろう。



「ではまず桜場アビスについて整理しましょうか。二ノ宮さんお願いしま〜す」


「う〜い。じゃあ早速だけど桜場アビスについて説明するね」



 丹色が模造紙に文字を書き始める。

 なるほど、話した内容を書いて、気になったところを書き足したり修正していくタイプの会議ってわけね。



「ボクが前に別の部隊で突入作戦に参加した時の話だけど。桜場アビス次元の狭間内部は洞窟だったね」



 〈洞窟(真っ暗ヒヤヒヤ)〉と書かれた。

 そのカッコの中は必要なの?

 どうでもいい情報だと思うんだけど……。



「洞窟内は外のアビス同様、虫型が多いね。他の国みたいに動物型、幻想型の存在は皆無だったよ」



 幻想型?

 そう私が首を傾げると大樹が説明してくれた。



『幻想型は授業で出てこないからね。まあファンタジー要素の強い【エリミネーター】だよ。例えるならドラゴンとかワーウルフとかだね』


『そんな物がいるんだ。私てっきり動物と虫ばっかだと思ってた』


『メタ的に言うと作者……この世界の神様が“ファンタジー要素も入れた〜い”って思いから幻想型が生まれたらしいよ?』


『外の世界から来たアンタが言うとムカつくわね。そんな軽いノリでこの世界を絶望色に染めた神様……。斬り刻んで豚の餌にしてやりたいわ』



 鈴芽の猟奇的発言にドン引きするように声を漏らす大樹。そんな話をしていると、丹色の話も進んでいた。



「向こうはひたすら暗く、冷たい空気が辺りを漂ってる。洞窟の横幅も狭い。連携するとすれば二人一組が限界だね。それ以上はお互いの動きが邪魔になる」


「となると、互いの武器の特徴を改めて整理する必要があるわね」



 丹色さんの説明に八重さんが呟いた。

 今の話だけで想像してみる。



 狭い洞窟で私がライトニングスパローで戦う、もう一人が来栖さんだと……。うん、確かに狭い。



 実際に見てきた丹色さんが“狭い”って言うんだもん。私の想像より狭いって思った方がいいわよね。



「じゃあ〜。みんなの戦機を名前の下に書いていこうか〜。戦機の形、効果、戦闘スタイルを書いていってね〜」



 来栖の指示通り、皆マジックペンで名前の下に書き足していく。



 私もみんなに倣い、〈レイピア型。光速移動からの一撃離脱戦法〉と書き足した。



 来栖さんの内容はさっき戦った通り、棒術で単体特化の戦闘スタイル。



 気になったのは他の三人だ。

 八重さんは弓型。遠距離攻撃が基本で、近接戦は可もなく不可もなくと書かれている。



 丹色さんは機関銃!? これまたとんでもない戦機ね。

 戦闘スタイルは「後方ブッパ」と書かれている。

 多分その文字通り後ろから掃射するんだろうことが窺えた。



 最後の柳先生はダガー型。隠密行動からの暗殺・奇襲。なるほど、私と似たスタイルなんだ。



 皆が文字を書き終える。その文字を皆は読み、考え込み、部屋は静寂で満たされた。



 私も書かれた内容でどう連携するか想像する。

 いろんなパターンを想像してると、八重さんが静寂を破るように声を出した。



「鈴芽さんが加入したことで連携バリエーションが増えたわね」


「そうだね。今まで前衛の隊長が面倒な敵を処理、後方でボクとヒガミが雑魚の殲滅。柳が全体のサポートって感じだったもんね〜」



 それって来栖さんの負担すごくない?

 でもあの強さがあってこそ成り立つ連携ってことよね。



『そんなチームに鈴芽ちゃんが入るわけだ。にしても困ったぞ……。洞窟だと鈴芽ちゃんの能力を生かしきれない』



 大樹の言う通り、私の能力は光速移動。速度を上昇させて高い威力の攻撃を放つのがほとんどだ。



 狭い洞窟だと突っ込むか退却するかしか走ることができない。これはなかなか無理難題なようね。



「そんな新メンバーの鈴芽ちゃんは光速移動でレイピアと来た。さっきの戦いぶりからすると、あまり戦力にならないかもしれないね」


「ちょっと丹色、やめなさい! 言っていいことと悪いことがあるわよ!」



 丹色がバッサリ切り捨てた。

 八重さんが気を遣って言ってくれたけど、事実だ。



 きっと丹色さんは思ったことをそのまま口にしてしまうタイプなんだろう。

 あまりに正直すぎる発言に、自分の実力不足さ加減に落ち込んでしまう。



 肩を落としていると、柳先生が肩に手を置いてきた。



「そうとは限りませんよ、二宮さん」


「どういうこと柳? 鈴芽ちゃんにはまだ何かあるっていうのかな?」



 若干挑発気味に柳に問う丹色。

 この二人の睨み合いに、部屋の空気が一気に張り詰めたものになる。



 この殺伐とした空気感の中、隊長の来栖さんは「正直に話し合えて有意義な会議ね〜」と微笑んでいる。



 やっぱりこの人どこかズレてるわよね? このどこが有意義なのよ……。



「私は鈴芽さんの実力を見た一人として断言します。この中の誰よりも攻撃力が高いと」



 柳先生がまさかの言葉を放った。

 私がこの人達よりも攻撃力が高いですって?



「せ、先生!? それはいくらなんでも言い過ぎです! 私にそんな力はありませんよ!」


「いいえ、あります。二ノ宮さん、八重さん。あなた達アルケミー卒業生に聞きますが、学校設備、ひいては演習場を半壊させることはできますか?」



 柳先生は私の言葉を否定しつつ二人に聞いた。

 確かに私……というか大樹が演習場を半壊させちゃったけど、私たちにできるならこの人たちにもできるはずよ。



「出来るわけないじゃん! だって魔力を帯びた校舎だよ? 核爆弾が落ちても傷一つつかない強度を誇る建物を半壊だなんて。ね〜? ヒガミ?」


「そ、そうよ柳。無理無理。あんな硬いの、世界中どこを見たって壊せる人がいるはずないわよ」



 そう答えた二人に、柳は笑みをこぼす。

 まさかこの二人にも破壊できないことに私は驚いた。



 ならあの時の私の攻撃は相当な威力を放ってたってことになるんだけど……。



「そうですよね。私にも出来ません。ですが、ここにいる鈴芽さんはそんな演習場を半壊させてしまいました。たったの一撃で」


「「嘘でしょ!?」」


「まあ!?」



 丹色さんと八重さんだけでなく、静観していた来栖までも驚いていた。



 一斉に私に顔を向けてくる皆に、ペコっと頭を下げながら苦笑いを浮かべる。



「となると〜。この作戦の肝は鈴芽さんになるわね〜。鈴芽さん、その威力を出すために何か条件はあったりするのかしら〜?」



 来栖さんが目を少し開いてこちらを見てくる。

 その目にドキッと胸が高鳴るのは、恐怖からだ。



「条件は……走ることです。走って速度を上げたら撃てます。ですが洞窟だと上手く走れないと思うので、上手くいかないかも……」



 そう申し訳なく伝えると、丹色が目を輝かせた。



「ほんと!? マジでその威力が出せるなら、あの最奥にいる奴を倒せるかも……」


「奴?」



 首を傾げた鈴芽に、丹色は答える。



「次元の狭間の主。【冥王】だよ」



 出された名から尋常ならざるものではないことがわかる。一体どんな【エリミネーター】なんだろうか……。

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