ニンジャ、魔女と出会う 002
おとこたちの纏う沈黙に不穏なものを感じた彼は、とりあえず手をあげると声をかける。
「よお」
なんとも間抜けな声掛けであったが、黒スーツのおとこたちは気にしたふうもなく彼との間に距離をたもったまま言葉を発する。
「で、あんたは抱いたのか?」
彼は怪訝な顔を、黒スーツのおとこにむけた。黒スーツは意に介したふうもなく、横たわったおんなを指差す。
彼は、やれやれと首を振った。
「抱いたと言ったら、どうなんだ」
黒スーツのおとこは、平板な口調で言葉をかえす。
「空気感染も接触感染もする可能性は、1パーセント以下だ。しかし、抱いたのなら九割がたの確率で感染している」
彼は、困惑したように眉根を寄せたが黒スーツのおとこは平然と言葉を続ける。
「三日以内にあんたはそこのおんなのように、血を吐きながら死に至るだろう」
彼は、ため息をつく。
「そいつは、困ったな」
「あんたの身柄を、確保する。一緒に、きてもらおうか」
彼は、少し肩をすくめた。
「あんたらは、何者だい? WHOの職員には、みえないが」
「おれたちは、カンパニーさ」
彼は、黒スーツのおとこが嘲笑を浮かべたように感じる。彼は、やれやれと苦笑をかえす。
「それは、ラングレーに本社があるやつか?」
「好きに考えるがいい、あんたの名前を聞いておこう」
彼は、うんざりしたような口調で名乗る。
「おれの名は、アカワ。アカワ・ハク」
空気が、鋼を含んだように硬質のものへと変わる。黒スーツのおとこたちが、一斉に銃を抜いた。九ミリのダブルアクションオートマチックが正確に、ハクと名乗った彼に照準を合わせている。
「なんでおまえが、こんなところにいる。ニンジャ・ボーイ」




