7:ただいまと敵視点ですわ!
「あ! お嬢様! おかえりなさいませ!」
「ただいまイザ。……あぁ、そこの! 悪いけどこの子を厩舎に返してきてくれるかしら。十分な休養を取らせてあげて。それと彼が背負ってる荷物は私の自室に。」
「かしこまりました、すぐに。」
小走りでこちらに近づき迎えてくれたイザにそう返しながら、近くにいた他の使用人にこれまで乗って来た馬を預けます。行きも帰りも頑張ってくれましたから、大いに報いてやらねばなりません。……とりあえず落ち着いたら名前を付けてあげるところか始めましょうか。同中ずっと彼とか貴方呼びで不便でしたし。
(出発から約2週間。ですがもっと離れていたような気がしますわね。ずっと気を張り詰めていましたし、仕方のないことかもしれませんが。)
伯爵領から6日かけて、ようやくこの村。自分の屋敷がある村まで帰ってきました。
道中は特に大きな問題は起きず、盗賊に襲われたり魔物に襲われたりはしましたが幸いなことに10体以下。戦意を落さず頑張り続けてくれた馬の彼のおかげもあり、簡単に撃退。その途中で少々不安になり、他の村。屋敷のある村とは違う残りの二つの村にも少し顔を出してから帰って来たのですが、どこも戦前の雰囲気など感じさせない穏やかな日々を送っていました。
免税の触れが完全に伝わっていたこともあり、大いに歓迎されたのは嬉しかったですが……。ちょっと歯がゆいものがございますよね。事前にスキルを知っていれば免税などしていなかったでしょうし。
ま、皆様元気そうで何よりです。
(最悪、どれか切り取られている可能性もありましたからね。)
最高戦力にして唯一の戦力である領主。生前の父や今の私の現在位置は、非常に重要な情報です。
何せ領主が領地にいないことがバレれば、こちらが無防備であることを示すことになります。故に我が家の使用人には、父や私の居場所を絶対に口外しないよにと強く教えられています。……ですがどこにでも例外は起き得るもの、何処かから『私が不在』であることが漏れる可能性がありました。
それをクレーマン家が察知し攻め込んでいた可能性もありましたし、普通にこの2週間で準備を終わらせ単純に攻めてきていた可能性もありました。
「お嬢様?」
「ん? あぁ皆が問題なく日々を送れているようで何より、と。……してイザ。私が不在の間、何かありましたか?」
「お屋敷の方は特になかったと思います。それ以外ですと、何人かの商人さんたちが帰って来てお嬢様にお目通りを願って来てました。……あ! もちろん村から出ないように徹底させておきましたので!」
ふふ、流石ですわね。やはりイザは私がしてほしいことをちゃんと理解しています。
おそらくですが、彼らに指示していた『麦の買い込み』が終了したのでしょう。口止め料としていくらか持たせましたが、あるだけ買ってきてくださいとお願いしたので差額分の要求と商品の受け渡しに来ているのでしょう。情報漏洩防止のための動きも出来てますし、流石私のお付きですわね。
「完璧よ、イザ。悪いのだけど、全員を呼んで買い上げておいてくれる? 保管場所は村の倉庫、溢れるようでしたら父のコレクションが入っていた所に放り込んでおいて。」
「かしこまりました! 受け渡しが終わった後の商人さんたちはどうしましょう!」
「いくらか持たせて『別命がある』と伝え待機してもらっておいて。額は……、ひとりこのぐらいかしら。貴女に預けておくから適当に使って頂戴。」
そう言いながら取り出すのは、何重にも重ねられた皮の大きな袋。
そのサイズからイザも気合を入れて受け取ろうとしますが……、その腕がすぐに、下へと落ちます。
「解り……、お、おもっ!? なんですかコレ!」
「金貨よ。ざっと30枚って所かしら。」
「にじゅ!?」
その枚数を聞いた瞬間、目を白黒させる彼女。あぁ、やはり反応が良いですわね。
彼女に渡したのは、金貨に銀貨に銅貨。父のコレクションを伯爵様に献上した際に頂いた金の一部を使いやすいように崩したものです。伯爵領で行った冒険者組合との取引や、ちょっとした先行投資などで使ってしまいましたが、それでもかなりの量が残っています。小さな村一つの一年で金貨一枚なのです。それだけあれば商人たちを黙らせても大いに余る事でしょう。
イザ、信頼して預けますからね?
「ワ、ワカリマシタ! スグイッテキマス!」
「そんな急がなくていいのに。……さて、私も頑張りましょうか。」
金額のせいか、蒼い顔をしながら走って行くイザを見送りながら。これからすべきことを脳内で挙げていきます。
領地に帰って来た以上、これからは戦に焦点を向けていかなければなりません。伯爵様の兵力は頼れず、傭兵で数を揃えることも難しい。以前として兵力は私一人という最悪な状況ではありますが、全て投げ出し絶望するほどではありません。
足掻けるなら全力で足掻く。ゴトレヒトの家に生まれた以上、諦める気など毛頭御座いません。
(幸いなことに今回は防衛線。まだやりようがあります。)
いざクレーマン家と戦争になった際、私が取るべき行動は『如何に相手の頭を刈り取るか』以外ないでしょう。
私達男爵のような規模の小さい貴族は、その経済状況から多くの常備兵や騎士を置くことができません。けれど戦争とは、一部の例外を除き数の勝負です。どれだけ兵力を揃えられるかという話になった時、我らは領民を徴兵し農兵という形で運用します。そして不慣れな農民を常備兵が支え、騎士や男爵がそれを指揮するという感じ。
ですがこれは、父のような圧倒的強者などによって行われる『首狩り戦術』に酷く弱いという特徴を持っています。何せメインが戦いをしたことのない農兵なのです。指揮官がいなくなればもう烏合の衆。恐慌は一瞬にして軍に広がり、瓦解してしまうでしょう。
少数、いや私一人でひっくり返すには、これしかありません。
(戦後の統治政策の為に農民を殺したくないというのもありますが、ね?)
相手が貴族同士の一騎打ちを受けてくれれば話が早いのですが、対外的にゴトレヒトは超人の家系。たった一人で化け物相手に戦おうとするようなお馬鹿ではないでしょう。まだ父が存命中に兵を集めていたのならば、父を倒す算段を用意し持ってくるはず。それを打ち倒しかつ、敵の首を取る。
つまり必要なのは、策。
相手が攻めてくると言うことは、こちらが戦場を指定できると言うこと。幸いなことに、我が領とクレーマン家を繋ぐ街道はひとつのみ。我が領に入ってからは三つの村へと続くそれぞれの道がありますが、必ず一つに収束します。100人以上の敵が進軍できる道はそれ一つなのです。罠を仕掛けるなど、簡単に出来てしまいます。……相手もそれは考えているでしょうから、念入りな調査が必要なことには変わりありませんが。
「村に立派な城壁があれば民と共に防衛線をしても良かったのかもしれませんけどね。柵ぐらいしかありませんし。……そうなれば足りぬ頭を捻って考えるしかないでしょう。あ、そこの!」
「あ、お嬢様! おかえりなさいっスー!」
「ただいま! ……どうしたのその喋り方。」
「お嬢様が当主様になられたので、ちょっと砕けた感じにしてみましたっス! ……お、お気に召しませんか?」
「大丈夫! そういうの大好きよ私! 貴女の活発な感じに合致していて好み! あと、悪いけど父の部屋から地図を取ってきてくれる? ありったけの全部。すぐに私の部屋に持って来て!」
「ありがとうございまっス! かりこまりっス! すぐにー!!!」
近くにいた使用人の子にそう言いながら、自室へと戻ります。
伯爵領からこの屋敷まで、ずっと頭の中で対クレーマン家のための罠を考え続けていました。ゴトレヒトの娘として自領の地理は全て頭に入っていますが、何か間違いがあるかもしれません。クレーマン家領地の地図も大まかにですがあったはずですし、そちらも合わせながら考えをより深めていくしかないでしょう。
そして罠を敷き終われば、彼らに対する嫌がらせの開始です。古来より戦は相手の嫌なことをし続けるに限ると決まっているのです。あっちは少なくとも100以上いるのです、ハラスメント攻撃ぐらいしても、悪くないでしょう?
(できたら、食糧輸送車とか破壊したいですよねぇ。)
ま、そんなところでしょうか。
幸いなことにお金はありますし、物を運ぶ商人もいます。どこまで頼れるか解りませんが、秘密兵器みたいなのも幾つか用意中です。時間の許す限り準備するとしましょうか。
「あぁ、そうだ。あちらの正確な数の調査も必要ですわね。流石に想定の倍以上はないでしょうが、楽観は危険。クレーマン家の方に行った商人が帰ってきたら、その辺りのことを聞いておきましょう。」
◇◆◇◆◇
場所は代わり、ギーベリナが治めるゴトレヒト男爵領から西。
クレーマン男爵が保有する領地にある開けた場所、そこでは兵たちの練兵が行われていた。
「首尾はどうだい、ベック。」
「これはオスカー様。シュミット殿も。」
兵たちに指示を出していた男に声をかけたのは、線の細く優男という風貌の者。このクレーマン男爵領を治める『オスカー・クレーマン』。数年前に親から爵位を継承し、男爵となった男だ。
どうやら兵の視察に来たようで、騎士の一人を護衛としながら顔を見せに来たようであった。
そんなオスカーはベックと呼んだ自身の騎士の言葉に会釈をもって返答しながらも、その配下である兵士たちの鍛錬を眺め始めている。なにせ彼にとっては、この侵略戦争が初めての戦。自身が指揮することになる兵士たちの様子を確認しようと思うのは、そう可笑しな話ではないだろう。
「皆、頑張っているようだな。」
「そう言って頂ければ、皆もより奮起するでしょう。……我ら側の常備兵の練度は十分だと推察致しますが、やはり農兵に関しては不安が多く残ります。」
「……やはり改善は難しいのかい?」
ほんの少しの不安を表情に出しながらも、落ち着きのある声で聞き返すオスカー。
練兵を担当する騎士ベックからすれば、その『若さ』に少しの不安を感じながらも、首を縦にふる。いくら領主が現場に顔を出したとしても、兵の練度が上がらない。なにせ農民を徴兵して訓練させているのだ、槍を持って言うことを聞いてくれるだけで御の字である。
彼らは麦を育てるのであって、人殺しを生業にするわけではないのだから。
けれど未だ経験の薄いオスカーからすれば、少し理解に苦しむことなのだろう。一旦の納得をしながらも、常備兵と比べると極端に動きの悪い農兵に対しての不満が、顔に出てしまっている。彼からすれば明確な目標を与え、達成するために必要な時間と食事と装備を与えているのだ。達成して貰わなければ困るし、『面子』の問題もある。
彼が顔を顰めてしまうのも仕方のないことかもしれないが……、その表情が兵に見られてしまっていると言うことを、彼は未だ気が付けていなかった。
能力はあり大成の兆しはあるが、未だ未熟。ベックは自身の主に対し、その様な評価を下していた。
「まぁいい。ともかく我らは兵の命を預かっているのだからね、まだ正確な時期は決まってはいないが、出来るだけ多くを家に帰せるよう全力を尽くしてくれ。頼めるかい、ベック。」
「全力を尽くします。……して、オスカー様。」
「あの話かい? なら場所を変えた方がいいか。」
少々思案した後に口を開いたベックの表情から、『何の話題』かを思い至ったオスカーは移動を提案する。彼の後ろに仕えていた騎士であるシュミットは礼をもって返答し、オスカーは感謝の言葉を主君に送った後、練兵中のものたちへ一度休息をとる指示を出した。
そして彼らが向かうのは、その近くに建てられた天幕の一つ。長期の戦争を想定し、常備兵たちが訓練の一環として設営された場所。そこには幾つかの椅子と、様々な資料が並べられた机が、鎮座していた。
「それで……、またあの話かい、ベック。」
「はっ! オスカー様、ゴトレヒト家への侵攻はお考え直し頂けないでしょうか。やはりあの超人の一族相手にことを構えるのは、得策ではないかと。」
「ベックッ! 既にそれは若様が決めたこと! その決定に従わぬつもりかッ!」
「いいんだシュミット。彼が僕を思っての諌言だと言うことは理解している。」
彼らクレーマン家や、ギーベリナのゴトレヒト家が存在するこの地域は『タールリング』と呼ばれている。山や河川によって外界から攻められにくいという特徴を持つこの場所は、リーベラウ伯爵家や王家の庇護を受けながらも、長年幾つかの家に別れての統治が行われていた。
現在の体制は、男爵家7つによる分割統治。ギーベリナ率いるゴトレヒト家が長年『超人』を輩出してきたことから一歩リードはしているが、彼女たちが拡大思考を持たないせいか互いに監視し合うような状態に落ち着いている。立地の関係からどの家も2つ以上の家と接しているため、領土を増やそうにも背後を気にしなければいけないという状況が続いていたのだ。
「僕としても、あの超人の一族は恐ろしい。だがそう感じているのは僕らだけでなく、残り6家すべてだ。つまりゴトレヒト家さえ落としその力を示すことができれば、他の家も自然と我が家に従うだろう。」
「まさにその通りかと。しかもかのベンツェルには娘一人しかおりませぬ。オスカー様が第二夫人として娶ってしまえば、あの超人の力がオスカー様のものとなるのです。これほど素晴らしいことはないでしょう!」
「……その辺りはルイーゼとよく相談しなければならないだろうし、そもそもあちらの気持ちもあるだろう? 皮算用をし過ぎては駄目じゃないか、シュミット。」
結婚したばかりの妻の名を出しながらも自身の騎士を窘めるオスカー。けれどそれを見るベックの顔は、以前として晴れなかった。
確かにあのゴトレヒト家を下すことができれば、『タールリング』におけるクレーマン家の優位性は確固たるものに成るだろう。けれど大きくなりすぎた力は周りから叩かれるもので、ゴトレヒト家との戦争の後は、残り5家の連合軍との戦いになる可能性が高かった。
それにそもそも、ゴトレヒト家との戦争に勝利できるかすら未知数である。ベック個人としてはここで博打を打たずとも、他の弱い家を落し時間をかけて領土を拡大しながら、最終的にゴトレヒト家を飲み込んでしまうのが良いと考えていた。
「オスカー様、やはりここは自身の案を聞き入れてはくださらないでしょうか。昨今の麦の動きを見るとやはり何かおかしいのです。」
「……すまない、ベック。僕も男なんだ、ここで一つ家を大きくしたい。いやしなければならない。それは君も理解してくれていただろう?」
ゆっくりと宥めるように言葉を紡ぐオスカー。
彼としても、ベックの策は一考の余地があることは理解している。むしろ時間があるのであれば、そちらの方がいいということも。しかし彼には、あまり時間が残されていなかった。いやもっと正確に言うなれば、彼は『時間がない』と考えていたのだ。
ギーベリナは全く知らぬことだが、オスカーは昨年妻を迎え結婚している。その相手はルイーゼ・ローヴァルト。先日ギーベリナが訪問したリーベラウ伯爵家と敵対している、ローヴァルト伯爵家の三女であった女性だ。
現在のリーベラウ伯爵家からの支配を良く思っていなかったオスカーの両親は、自分たちの息子をローヴァルト伯爵領の学園へと派遣。両親からすれば単なる顔つなぎだったようだが、オスカーは伯爵令嬢との大恋愛を果たすことになり、彼らは将来を誓い合ったのだ。
「彼女、そして産まれてくるだろう子供のためにも、僕は……。」
「あぁオスカー様! ここにいらしたのですね!」
「ルイーゼ! 何かあったのかい?」
どうにかベックを説得できないかと言葉を紡ごうとしていたオスカー。けれどそれは、天幕にやって来た彼女の声によってかき消される。
「いえ、何も。ただ皆様がここにいると聞きまして。」
「何もなくて良かった。それとありがとうルイーゼ。こんな場所で君の顔が見れるなんて、思いもしなかったからね。」
「まぁオスカー様!」
それまでの少し強張ったオスカーの顔が喜色で染まり、ゆっくりと自分の妻の顔に触れその逢瀬を楽しみ出す二人。新婚ゆえに仕方のないこともあるのかもしれないが、ベックからすればせっかく得れた説得の機会が失われたようなもの。表情に出すことはなかったが、内心に積もるものは大きかった。
常備兵からその功績を認められ騎士となったベックからすれば、今の領主夫婦の様子を微笑ましいと思う気持ちはあれど、戦を知らぬものが現場に出てほしくないという感情があった。本来であれば長年騎士の家系としてクレーマン家を支えてきたはずのシュミットが、すべき諌言を一切していないことへの不満も。
確かに彼は元々ただの農民で、農兵だった。けれど戦功をあげることで常備兵となり、騎士まで成り上がった人間。クレーマン家への深い忠と大恩が彼にはある。
だからこそ、勝利を捧げなければならない。だからこそ、戦は任せてほしい。それがベックの真意だった。しかも結婚する前のオスカー、いたもっと言うなればルイーゼと出会う前のオスカーであれば、彼に一任することも考えただろう。
けれど、今は違う。
「見てくれルイーゼ。これが僕たちの住む『タールリング』だ。君の実家であるローヴァルト伯爵領に比べれば小さいが、良い場所なのは君も知ってくれているだろう?」
「えぇ、もちろんですわ!」
自分の膝に妻を乗せながら、机の上の地図を見せるオスカー。
「此度の戦、この男爵7家の中で一番強敵な、ゴトレヒト家を攻めるんだ。厳しい戦いになるだろうが、確実に勝てる手を用意した。君のお父様に『幾つかの支援』を頂いたしな。」
「お父様が……。」
「待っててくれルイーゼ。伯爵家で産まれた君からすれば、この男爵家での生活は酷く窮屈なものだっただろう。だがそれも、すぐに変えてみせる。このタールリングを統一すれば、子爵家は確実。今後の戦で戦功を重ねることができれば、伯爵家だって見えてくるかもしれない。君と、これから生まれてくるだろう僕たちの子。……絶対に、幸せにして見せる。」
「私はオスカー様と共にいられれば、それでよいのです。ですが……、そのお心、感謝いたしますわ。絶対に、生きて帰ってきてくださいまし。」
「約束するとも。」
そんなオスカーの視線の先は、此度の戦場となりうる幾つかの地図。
その上には全て、クレーマン家側の兵力が総勢600。伯爵家より貸し出された精強な兵、伯爵という強大な権力を構成する力が総勢の半数以上を占めていることが、示されていた。
〇税外小話
「お嬢様ー! 地図持ってきたっスよ……、って震えてますが大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ。さっきの。いえ何だか途轍もない悪寒がしたもので。……というかどっちが素なのですか?」
「元はスっ!って感じだったんですけど、先代様のおかげでメイドとしての振る舞いが出来るようになった感じっスね。ほんと感謝……、してるっス!」
「あぁ私と同じクソ親父の被害者。感謝しなくてもいいからね、うん。」
「ならしねぇっす! あともし寒いんでしたら毛布とか上着とかご用意するっスけど、どうしますっスか? 多分コレぐらいならイザさんも許してくれると思うっスし。」
「あの子は別に自分の仕事取られたとか思わないから気にしなくていいわよ? それと大丈夫だから気にしないで。届け物ありがとうね。」
「お気になさらずっスー! んでそれ、なんスか? 一杯線があるっす。」
「攻城兵器の図面ね。学生の時に貰ったのを引っ張り出してきたの。ちょっと仕事で使うものだから、内密にね?」
「りょっス!」