秋の空気は不思議
秋の空気は不思議
垣根の合間に咲いていた昼顔が可憐さを増す
秋の空気は不思議
夕刻チャイムの音楽が心の真ん中に流れてゆく
秋の空気は不思議
暮れかかる影の合間、澄んだ木々たちの静かな
息づかいに寄り添っていたい庭
秋の空気は不思議
洗濯物を畳みながら 新しくした
柔軟剤の香りが花のように清らかに薫る
秋の空気は不思議
神祭の拍子木の音が凛として時を止めて静脈まで響いてゆく
秋の空気は不思議
真夜中にはテレビも電気も消してコオロギを聴く
秋の空気は不思議
ただただ澄んでゆく空気に音楽の調べあたたかく
沁み渡る
秋の空気は不思議
カマキリの動きを真似て笑ってた夏の笑顔は
風に吹かれてセピア色
秋の空気は不思議
夏の痛みさえ秋の夜に優しく包まれ溶けゆく
秋の空気は不思議
あなたに語りかけながら自分の内部へと還ってゆくみたいだ