/shadow of dawn [No.1]
The Avantesの第一作目です。文書が拙かったり話に脈絡がなかったりすると思いますが温かい目でご覧いただけると幸いです。
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第一話 退屈な日常
「今日も今日とて平和過ぎてなんにも変わり映えがないなー」俺は教室の机の上に頬杖をつきながらそう呟いた。俺の名は秋元創士、現在進行形で高校生をやっている。高校に上がり一年目ははじめての環境で自分を退屈させないものに期待していたがやはり何処まで行っても普通の学校生活だ。俺は全てが異常な程に退屈に感じてしまう。どんな物にも興味は余り湧かない。自分ですら俺が本当に人間かと疑うレベルでだ。平和な世の中っていうのは大層いい事であるとは理解している。しかし毎日退屈に思っていたら平和じゃない非日常な世の中に期待してしまう自分がいる。ただそんなことなどいきなり起こる事は無いので今日も無駄に時間を浪費しているのだ。
「おい、創士。面白い話を持ってきたぞ」俺の右肩を叩きながら男が話しかけてきた。友達の聡だった。 「面白い話?それは退屈凌ぎになる話なのか?」そう俺が聡に問うと嬉しそうに返答した。「ここら辺にあったんだよ。かなりやばい心霊スポットが。」心霊スポットか。そういえば俺は一回も行った事が無かった。俺は神だとか幽霊とかはあまり信じていないが気晴らしには丁度いいと思ったので、「んじゃあ今日の夜試しに行ってみるか?まあ多分何にもないだろうが。」そう俺が言うと聡は明確な集合時間を言って残りの作戦会議は放課後にすると言った。
放課後になり聡を待っていると教室の扉が開き聡が入ってきた。聡は数人引き連れて俺の前に立った。どうやら聡は他の人も誘ったらしい。そして結果的にこの二人が参加するらしい。「こいつが俺のダチの秋元創士だ。ささ、二人も自己紹介してやってくれ。」暁がそういうと二人も自己紹介を始めた。男の方の名は青山京也といい俺達と同じ二年生らしい。女の方は佐山鈴と名乗りどうやら一年生のようだ。俺は適当に会釈して作戦会議に移った。まあ作戦会議とは言ったもののそこまでガチガチに決めるわけではなかった。
今回行く心霊スポットは放置された廃ホテルらしい。当時はかなりの利用客がいて大庭園やプールなどもあったらしい。潰れた理由は諸説あるが聡が言うには従業員の失踪などが相次ぎ黒い噂が立ったために客は減り経営難になり潰れたようだ。その後経営者も謎の死を遂げたなどの噂もあった。
「話によればそこは異世界への門があって知らぬ間に従業員が迷い込んだなんて噂もあるぞ。まああくまで噂なんだがな。」
「とはいえそんな噂気にしてたって意味はないだろ。とりあえず何処から見て回るんだ?」
そう俺が聞くとオカ研の青山が話を切り出した。
「先にプールを見にいかないか?水場ってのは幽霊が集まりやすい。最初に本命を潰しておけば後の探索は気楽になると思うんだが。」皆青山の意見に賛成だったためにプールから回ることにした。となれば後は持ち物の話だがオカ研からはビデオカメラを持参するらしい。まあオカルト研究会だからそういう現地で取れる資料も必要なのだろう。そして聡は全員分の懐中電灯を準備するらしい。そこら辺の探索必需品は聡に任せることにした。さて、俺は何を持つべきだろうか。まあただ見て回るだけだからそこまでガチガチに装備を固める必要はないが万が一ということもある。それに俺は今回の心霊スポットに少し期待していた。従業員の失踪、異界への扉、経営者の謎の死。もしかすると怪異が存在しているかもしれない。だから俺は護身用の武器を持つことにした。怪異は非日常的で面白いが自分達が死んだら面白みもないためである。そうして集合時間の夜までは時間があったので俺は自分の部屋でゆっくりするのだった。
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第二話 闇への突入
俺が廃ホテル前の林道に着くと三人も既にそこで待っていた。全員揃ったということで聡が懐中電灯を配ってゆく。そうして突入前の準備を終えると四人で林道の中を歩き始めた。
「秋元先輩はこういうのとかって慣れてるんですか?あまり怖くなさそうですが…」そう聞いてきたのは一年のオカ研部員の佐山だった。そういえば入部して初の心霊スポット巡りとか言ってたか、ならオカ研だからと言ってこの雰囲気にビビるのも仕方ないか。
「俺はあまり恐怖を感じないんだ。どっちかと言うと退屈を紛らしてくれそうで楽しみにしているぐらいだ。」俺がそう言うと佐山はそうなんですねと不思議そう顔で言った。
いよいよ見えてきた。あれが廃ホテルなのか。6階建の立派な建物のようだ。七時ぐらいなため暗くても少しは外観が見えるくらいの暗さだ。このホテルは外側はあまり痛んではいないが植物がかなり壁を覆っているようだ。
「よしじゃあまずはプールに先に向かおう。場所はサーチ済みだ。ホテルの裏側から行ける。」まさか青山の奴全員で来る前に一人でも視察に来たのから。流石はオカ研、やる気が違うらしい。ホテルの前には駐車場と少し広めの庭園があった。メインの庭園は少し離れた場所にあるがここにある庭園も地味に広い。軽く迷路のようになっていた。しかし迷路を行ったり来たりするのは面倒だし何より時間の無駄なので俺は準備した護身用のサバイバルナイフで強引に棘の迷路をこじ開けた。
「お前、そんなもんまで持ってきたのかよ。それ本当に必要だったか?」びっくりしたような声で聡がつぶやいた。
「念の為だ。野犬とかに襲われたらひとたまりもないだろ?」まあそれならと聡も二人も納得した。俺が強引に道を切り開いたためにエントランスがある駐車場までショートカットすることができた。そして建物の外側を周り後ろの方へ行くとかなりの大きさのプール跡が姿を表すのだった。
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第三話 泥界のプール
かなりでかいプールだったようだ。一昔前結構流行ったリゾート地を彷彿とさせる。しかしプールとは似ても似つかない風景がそこにはあった。以前水が入っていたであろうプールはかなりの泥に埋もれていた。普通は水が干上がるか雨水とかで水溜りのようになる筈だがそこにあるのは泥のプールだった。
「そうそう。俺が視察に来た時もこんな感じの泥プールだった。どうやったらこんな量の泥がプールに入り込むんだ。」青山もこの異様な風景に対し疑問を抱いていた。誤ったここに落ちてしまったらかなり悲惨な事になるだろうから慎重に歩くことを心がけた。そうして歩いているとウォータースライダーのようなものを発見した。滑り台は各地に散らばりボロボロに壊れている。やはり多少の泥が付着している。一体なぜこの量の泥がプールにあるのか。森が近いから風雨で運ばれてきたと推論することもできるがたった10なんでこんな量の泥が運ばれるだろうか。その後はプール全体を歩いて回ったが泥以外特に発見はなかったのでいよいよ中に突入することになった。先程通ったエントランスを潜ると中はかなり傷んだ風景が目に入った。床は所々窪んでいて全体にヒビが入っている。ただ歩いても床が抜けることはないので表面上だけのようだ。中には外にもあった植物が侵食して異様な世界を表現している。
「ここは昼に来た時には天窓から日光が差し込んでて結構神秘的な風景だったがやはり夜になると異様な光景だな。」青山はどうやらプールだけではなく中も視察していたようだ。
「んで、中に関しては何処が怪しいとか情報はないのか?」俺がそう聞くと聡が口を開いた。
「5階にある客室514号室にどうやら出るらしい。どうやらそこである二人組が首を切って自殺したらしい。それもホテルが廃業した後だ。運が良ければ事件当時の証拠が残されてるかもしれない。」5階か、結構中はボロボロな感じだから上層階は床が抜けたら崩落したりしないか心配だったがどうやらそれは杞憂だったようだ。あそこまで傷んでいるのは一二階だけらしい。他の階は植物の侵食こそはあるがあまり傷んではいなかった。
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第四話 潜む不穏な影
514号室を探しながら廊下を四人で進む。青山と聡は雰囲気に少しビビりながらも好奇心の方が勝ったような感じだった。佐山はやはり怖がっている様子だった。この感じを見るに聡か青山が強引に連れ出したのだろう。四人で他愛のない話をしながら514号室を探しているとある物音を俺は聞き逃さなかった。グチャ…グチャ….微かに肉を潰すような音が聞こえる。他の三人にはこの音は聞こえていないようだったのでパニックにならせないようにあえてこのことは言わなかった。水滴が落ちる音とか壁や天井が軋む音ならわからなくもない。しかしこの不愉快な音は生物でなければ立てられないだろう。それからずっと壁を這うようにその音は俺らの方は近づく。ただ止まったりすると音は止むので一定の距離感を保っているのだろう。そんなこんなでようやく514号室と思われる部屋を発見した。扉を開けると辺りが異様な雰囲気に包まれる。それは他の三人でも肌で感じられるらしく警戒しながら中へと入っていった。中にはベッドが二つある洋室だった。あまり傷んではいなかったが懐中電灯を床に照らすと変なシミがついていた。
「あの話は本当だったようだ。恐らくこのシミは血痕だ。」聡は嬉しそうでもあり恐怖したいるようでもあった。俺らはそれから部屋で物色を開始したが例のあの音は一定の距離から近づいてくることはなかったが今でも肉を潰すような不快な音は続いている。
俺は棚を物色した。棚の一番下にはあるノートのようなものを発見した。全員を呼び中身を読むことにした。どうやらこれは死んだ二人組の遺した日記のようだった。この二人は廃ホテルで二日間滞在すら気だった。その二人は偶然にも泊まるところをこの部屋に決めたらしい。寝巻きを着ていざ二人が寝ようとすると異変が起こった。辺からグチャっという音が聞こえ始めた。俺が聞いた音と似ている。何か関係があるのかが気になり次のページをめくるがここから先には何も書いていなかった。その音が聞こえ始めるまでは余裕があったために日記で記そうとしたのだろう。もしかしたらその後に日記を書けない何が起こったのかもしれない。俺たちは物色を再開した。
「おーい皆んな、すごいもんを発見したぞ。」青山が俺達を呼んだ。そうして青山が見せてきたのは一昔前のビデオカメラだった。俺達は早速中身を拝見することにした。このビデオカメラはあの二人組のもののようだ。一人が日記を記し一人がビデオを撮るというスタンスの様だった。そしてそのカメラには例のシーンも記録されていた。その内容は到底信じられないものだった…
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第五話 牙を剥く怪異
そのカメラに映っていたものは到底信じられない内容だった。あの音が鳴り始め二人はカメラを手に取り撮影を開始した。その音は段々と強くなりはじめみるみると壁が臙脂色へと変色してゆく。それがなんだったのかが分かった。あの音はやはり肉の音。壁が肉塊へと変貌すると二人組は部屋の外へ行こうと走り出した。しかし壁から肉塊が伸びて一人の首を巻き付きその首をへし折った。一人もすぐに逃げ出そうとするが手からカメラが落ちて骨が折れる音が聞こえてこのビデオは終了した。ビデオカメラを置くとあの音がまた近くで鳴り出した。どうやら全員にも聴こえているらしい。そしてあのビデオのように壁が肉塊へと変わっていった。他の三人はあまりに現実離れしていてフリーズしていた。俺はと言うとようやく求めたいた非日常がそこにあると知ると恐怖や放心よりも高揚感が感情を制した。あのビデオと違うのはこちらにはナイフという明確な反撃手段があること。あの肉塊を切り落とせるかは分からないがこのナイフが最後の希望だった。肉塊が勢いよく触手のような形状でこちらに迫る。狙いは青山の方だった。青山の首に届く直前で俺はその触手を切断した。その触手は音もなく霧散していった。俺は放心状態の三人に喝を入れると部屋の外に出るように言った。三人は慌てて外へ飛び出し俺も後へと続く。廊下の壁もみるみる臙脂色の肉塊へと変貌する。鉤爪のような触手が数十本こちらは牙を剥く。運動神経にはもともと自信があった。この触手の動きも俺の動体視力の前ではあまり意味がなかった。いきなり始まった非日常に脳内のアドレナリンが過剰分泌されてゆくのがわかる。一つまた二つと触手を切断してゆく。戦いを楽しんでいると聡の体に触手が巻き付くのが見えた。そして他の二人にも同様に巻きつく。そこで気を取られたのが良くなかった。その触手は俺の首にも巻き付いた。唐突に訪れた敗北。首が締まり始め目の前に明確な死があった。時間が遅く流れ始める。人は死ぬ前に走馬灯というものを見るらしいがそれの予兆だろうか。非日常の中で死ねるならそれもいいかと自分を納得させ俺は全てを諦め始めた…
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第六話 正体不明の処刑人
俺は全てを諦め始めた。目を瞑ったが何も起こらない。目を開けると触手が切断されていた。それは他の三人も同様だった。何が起こったのか分からないでいると俺の前に人が立っているのが分かった。暗くてよく見えないがそれは女性のような人影にも見えた。他には杖のような槍のようなものを持っていた。触手の注意がその人は向く。その人は俺たちに目配せをした。おそらくは逃げろということだろう。俺は三人を押しながらも階段へと向かった。壁がどんどん肉塊へ変わってゆくがそれを気にしている暇はない。やがてエントランスが見えそこ抜けると次の瞬間背後から爆発音と崩落音が聞こえた。巨大な化け物が庭園の方へ吹き飛ばされる。化け物はプールの方は飛んでゆきプールに大量に浸かっていた泥を自らの傷口に流してゆく。あの大量の泥は化け物の体組織の一部だったようだ。5階の部分には巨大な穴が開いていた。そこからさっきの人も飛んで行った。その化け物との戦闘は一瞬で終わった。化け物は槍で十字に切断され霧散していった。その様は淡々と罪人を断じる処刑人のようにも感じられた。化け物が消滅すると一瞬自分の体が軽くなった。さっきまで体にかかっていた重圧が突然無くなった。そしてさっきの人が近づき話しかけてくる。
「お前達は無事のようだな。いいか?今あったことは忘れろ。あと二度とこんな事に首を突っ込むな。」
俺は色々と聞きたかったがその人はいつの間にか消えていた。さっきから何が何だか分からない。ただ一つ言えることは俺はようやく非日常というものを体感できた。そして同時にそれがとても危険なことであることも理解できた。
「さっき起こったのは一体なんだったんだ…」青山が放心しながら呟いたので俺は、
「さっきの人も言っていただろこれはあんまり覚えていても意味がない。とりあえずは一旦忘れて今日は帰ろうぜ」と提案した。三人はこの提案に賛成し今日はお開きとなった。廃ホテルに巣食っていた巨大な化け物、その化け物を瞬殺したあの人物。俺は今日の記憶忘れたくても一生忘れられないだろう…
To be continued…
この話の続きが読みたいと感じていただけたら評価の方をよろしくお願いします。アドバイスなどがありましたらコメントしていただけると幸いです。