第三十一章 第五部 入学祝い?
〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター
〇愛凜 ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖
〇きらり ライフ・アテンダント/愛凜の先輩アテンダント・友人
〇ゆらり ライフ・アテンダント/愛凜の先輩アテンダント・友人
〇みらい ライフ・アテンダント/ゆらりの姉
〇萌絵未もえみ ライフ・アテンダント/ゆらりの妹
第三十一章 第五部 入学祝い?
「ただいま…… おお、みなさんお集まりで。今日はまた何ごと」
テーブルの上がスウィーツ・バイキングのようになっている。誰が持参したのか、チョコレートファウンテンまである。
「すごいねこれ。誰が持ってきたの?」
「わたし」ときらちゃんが手を挙げた。
「こんなの持ってたんだ」
「わたしのじゃない。クライアントのを失敬してきちゃった。キッチン棚の奥の方に寝かされてたものを引っ張り出してきたの」
「例の、ひとりでいるのが好きなクライアント女子がこんなものを持ってたの?」
「そう。家でぼっちスウィーツ・パーティーやってて、夢のチョコファウンテンを稼働させて楽しんでたんだけど、だんだんひとりでやってるのが空しくバカらしく思えてきたらしく、途中で止めて洗って箱に入れて棚に押し込んでそれっきり。だから今日が稼働二回目で、三年ぶりくらいに日の目を見たの」
「それはそれは。活躍の場を見いだせて良かった。
で、なんのパーティーやってるの?」
「ゆきちゃんが大学に入学するって聞いたから、入学祝い」
「入学する? もう決めたのか?」
「決めてない。わたしがゆらちゃんときらちゃんに送ったRAINを読んで、それを見たふたりが早合点したのよ」
「早合点って、この文面ならそう思うでしょ。『ゆき、大学入学』。その後『?』だけのメッセージが届いた。
最初に送ったメッセージの最後に付けるべき『?』を忘れたんで、別便で送信したんだろうけど、受け取った側は『ゆきちゃん、大学にはいったんだ』しか頭に残らん」
「そうよねえ。だからわたしがきらちゃんに電話して、スウィーツをたくさん買い込んでゆきちゃんのお祝いしよう、ってなったの」
「なるほどね。状況は判ったけど、肝心の主役が見えないね。ゆきちゃんは?」
「あの子、昼間の学内も見たいって、今日はひとりで電車と地下鉄とバスを乗り継いでキャンパスに行ってる」
「ひとりで? 大丈夫かな」
「大丈夫よ。あの子は姿こそまだ子どもだけど、精神年齢も意識体年齢も相応に高いから心配しなくていい。
『かわいい子には足袋を履かせろ』って言うじゃん」
「『かわいい子には旅をさせろ』だ。
で、この大量の駄菓子や液状化チョコはどうするの」
「心配ご無用。わたしらが責任もって食べつくします。アルトも駄菓子、食べていいよ」