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ライフ・アテンダント 人生の付添人  作者: アルシオーネM45
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第三十一章 第四部 特別講義

〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター

愛凜(あいりん) ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖

〇まりりん・ゆき 寿満寺学校二年生/愛凜の末娘

第三十一章 第四部 特別講義


 ふたりを九大学研都市駅の一般車乗降場で降ろし、タクシーに乗り込むのを確認してあとをつける。

 別にこっそり監視している訳ではない。見学が終わって再びタクシーを拾おうとしても、あの辺りだと夜間はまず無理だろう。

 だから事前の打ち合わせで、私は校門から一キロほど離れた位置で待機。見学を終えたら、愛凜とゆきちゃんが車まで徒歩、と言うか浮遊して移動し、乗車して帰路に着くのである。


 待つこと二時間半、【ラジオ深夜便】を聴きながらウトウトしているとふたりが戻ってきた。

 紙資料はないので、膨大な量のPDFファイルを持参のUSBメモリーに入れて持ち帰ったとのこと。ゆきちゃんは自宅で数日かけて学校説明や履修科目や専門科目、博士課程などの説明文書を読むことになる。

 夏休みは来年まであるし、進路変更するなら寿満寺学園に戻ることは考えなくていいから、準備に使える時間は無限大だ。


 「興味を惹くような成果はあった?」

 「ありました。やっぱり一流大学は教授の質が違うから、講義がとても専門的で、十分くらい聞いただけなのに、帰れなくなりそうなくらい面白い内容でした」

 「へえー どんな内容だったの?」

 「ブラックホールについての講義です。今日は客員教授のひとりで、ドイツのカール・シュヴァルツシルト博士が特別講義をしていたんです! あのシュヴァルツシルトですよ‼ 十月九日が生誕日なので、それで記念講義をしていたんだそうです」

 「マジかっ⁉ ちょっと引き返して講義を聴こう」

 「ちょっとアルトさん、あんた意識体じゃないから入れないよ。

 そのシュヴァちゃんって有名な人なの?」

 「有名なんてもんじゃない! あのアインシュタインの重力方程式を解いてブラックホールの存在を理論で証明した天才だ」

 「ふーん あのじいちゃんがねえ」

 「老けて見えるけど、相転移したのは四十三歳だったから、実年齢よりも老成して見えるんだ。

 ゆきちゃん、ラッキーだったね」

 「超ラッキーでした! たまたまかもしれないけど、あんな偉い人の講義を直に聴くことができるなら、もうわたしの心は決まりました」

 「ゆき、あなた今は舞い上がってるから、落ち着いて冷静によーく考えて決めなさい。『後悔先に立たず』よ」

 「そうそう。時間はいやになるほどあるから、決定するのは夏休みが終わる直前でいいんじゃない。

 それより、せっかくここまで来たんだから深夜ドライブして帰ろう。唐津に周ってライトアップされてない唐津城を見る。あとはどこか開いてる店に入ってごはん食べよう。どうせこんな時間だから、開いてるのはジョイ福か資産うどんくらいしかないだろうけど」

 「唐津に寄るなら唐津バーガー食べたい」

 「わたしも食べてみたいです」

 「うーん 時間が時間だからねえ。多分バーガー屋さんは開いてないやろ。もし見つけたら言って」

 「わかった。見つからなかったらジョイ福でバーガー注文して、ライターで表面をあぶってパリパリにする」

 「やめなさい。一発で出禁になるぞ。チェーン店だから回状のブラックリストに載せられて地元店にも入れんごとなる。それでいいのか」

 「それはいかん。地元ジョイ福はわたしたちの拠点だから入店拒否は痛い。

 ジョイ福バーガーの唐津バーガー化プロジェクトは却下します」

 「自分で提案しといてなにが却下だ。

 ゆきちゃん、車でパソコンの文書を読むと乱視になるよ。店に入ってゆっくり読まないと」

 「はい、大先生!」

 素直な良い子だ❤


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