第二十六章 第三部 イントロデューシング・きらちゃん!
〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター
〇愛凜 ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖
〇きらり ライフ・アテンダント/愛凜の先輩アテンダント・友人
〇まりりん・ゆき 寿満寺学校二年生/愛凜の末娘
第二十六章 第三部 イントロデューシング・きらちゃん!
「入りまーす 5,4,3、…、…」
「こんばんはー 昨日に続いて今日も配信しまーす。愛凜です」
「ゆきです! みなさーん 集まってください!」
「今日はね、コスプレしてます。本職じゃないですよ」
「おねえちゃん、本物っぽい。似合ってる、すごく」
「ゆきもよく似合ってるよ。本職っぽい。繁華街でチラシ配ってる?」
「配ってない。配ってないけど配ってる子を見ると『メイド服着たいな』っていつも思ってた。だから今日はわくわくしてます。みなさん似合ってますか?」
「何人来てくれたかな」
「今ね、一〇二三人。三千超えたら今夜のスペシャルゲストを紹介するから、早く集まって」
「フォローしてくれてる人にはブザーかチャイムが鳴って、配信してるよーって連絡行くのかな」
「通知が行くんじゃない? でも今日はちょっと早い時間だから、まだみんな帰宅してないかも」
「帰ってなくても出先でスマホやタブレットを使って見てくれてるわよ。
ほら、もう一九五二人見てくれてる」
「あ、カンペ出てるわよ。ゲストの準備OKだって」
「あと千人だからもうちょっとまっててくださいね」
「ねえ、コメント来てる?」
「来てるきてる。流れるの早くて追っかけられない。
あ、これ面白い。『ふたりとも本当に芸能人じゃないの?』って」
「芸能関係のお仕事はしてないですよ。ふたりともトーシロの一般人です」
「芸能人は憧れるけど、自分がなりたいとは思わない。見て応援する方が楽しい」
「そうだよね。アイドルとかけっこう大変そう。ダンス覚えるとかセンター争奪とか色々めんどくさそう」
「そうよね。ゆきは勉強もしなきゃいけないし」
「それ考えると、学校行きながら芸能のお仕事してる人って偉いわよね。課題や宿題を片付けるだけでも大変なのに」
「質問きてるよ。『ゆきちゃんは何を勉強してるの』って」
「わたしは高校二年生で、今は一般教養課程です。理科系の授業が好きですねー」
「文系じゃなかったっけ?」
「文科系理科好きよ」
「成績は?」
「中の上くらい。おねえちゃんの好きな教科は?」
「わたし? わたしは書道と音楽と保健」
「技術系?」
「芸術系と言って」
「保健は?」
「それは興味本位」
「なにそれ。
ねえ、カンペ見て。そろそろ三千になりそうって」
「ほんと! 二八七九人。まだ始まって五分くらいしか経ってないのに。
みなさん、こんな素人部屋に集まってくれてありがとうございます」
「ありがとうございます! みなさん、楽しんでいってくださいね」
「さて、そろそろゲストの登場です。わたしたちに負けないくらいの麗人だよ。違うファン層が増えるかも」
「さっきから横で待機してもらってるんだけど、うっとりしてみとれちゃいます」
「これからご紹介するのは、わたしの親友のひとりです。名前はきらちゃん。
じゃあ出てもらっていいかな? 三千超えた? はい、じゃあきらちゃん、こちらへどうぞ。
イントロデューシング・きらちゃん!」