第二十五章 第七部 同じ布団で⁉
〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター
〇愛凜 ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖
〇きらり ライフ・アテンダント/愛凜の先輩アテンダント・友人
第二十五章 第七部 同じ布団で⁉
「あ、愛凜から電話だ。
もしもし?」
「カメよカメさんよ♪」
「あなたたち、酔ってるでしょ」
「酔ってるわよ。いい気分♪♪❤」
「意識体は酒で酔わないんじゃないの?」
「ハイグレ・モードの最高密度レベルだと、内臓も含めて人体が復元されるから、当然お酒吞むと酔う」
「そうなんだ。その勢いに乗って配信したな」
「ねえねえ、どうだった、わたしたちの配信」
「終わりの方をちょっとだけしか見られなかったけど、来訪者が凄かったね」
「十万いくらかだったかな。それってすごいの?」
「凄いよ! 初配信でしかも芸能関係じゃない素人の酔っぱらいがこんなに人集めて、本気で配信してる人からすると驚異で脅威」
「そうなのね。わたしたち姉妹の魅力かなあ」
「何が姉妹よ、偽装姉妹じゃない。姉役は年齢詐称だし」
「ねえ、今度はきらちゃんも出てよ。二十万超えるよきっと」
「百万だよ。いつやる?」
「(きらちゃん、その気になった)」
「鉄は暑い家で打てって言うから明日の夜にでもやる? わたしん家で」
「やるやる。ちなみに【鉄は熱いうちに打て】が正解」
「アルトはADとフロア・ディレクターとタイムキーパーやって」
「オレはスタッフか!」
「カンペのタイミングとかしっかりたのむわよ。じゃあサウナ行ってくるからまたあとでね」
「きらちゃん、どこで寝る?」
「ソファーの上で。暑いから毛布とかいらないよ」
「でも朝方はけっこう冷んやりするよ、最近」
「じゃあタオルケットだけ」
「きらちゃんは寝る時は消えないよね」
「そりゃあよそ様の家にお泊りする時は、どこに居るかわかるようにしとかないと」
「じゃあ自宅では姿消して寝るんだ」
「意識体は普通そうよ」
「愛凜もゆきちゃんも就寝時は消えて、どこで寝てるかは今もわからない」
「そうなん? 言っていいのかな。意識体はだいたいクライアントの寝床で寝るもんよ。つまりアルくんの横で寝てるはず」
「そうなんっ⁉ じゃあ愛凜はオレと夜を共にしているってことか!」
「表現がちょっと。透明だし身体が重なってもスカスカだから特に支障はない」
「支障があるとかないとかじゃなくて、倫理的にそれでいいのかってこと」
「いいんじゃない? 別にえっちしてる訳じゃないし。多分ゆきちゃんも同床慰夢だよ。
もっともゆきちゃんはアルくんを慕ってるし、若干乙女心に火がついてるみたいでもあるからちょっとヤバいかも」
「じゃ じゃああのムサい布団に三人と言うかひとりと二意識体が寝てるってこと? だよね」
「そうね。わたしたちが泊る夜はわたしたちと寝るけど、通常の生活では今話した通りの就寝隊形。見たわけじゃないけど多分そうと思う」
「ちょっとそれは聞かなかったことにしよう。オレがこれから意識して眠れなくなる」
「じゃあわたしも言わなかったことにする。アルくんは今まで通り寝てください。
暑い夜は冷たい廊下の上で寝たりするから、いつも添い寝してるわけじゃないし。
さあさあ寝ましょう。明日は配信しなきゃならないんだよ。しっかり睡眠とって失敗しないでね、ADさん」
「『AD』のAはアーティステック、Dはダイレクター。つまり芸術監督だよね」
「 」
「もう寝てる。あの即行寝入りはうらやましいなあ」