表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフ・アテンダント 人生の付添人  作者: アルシオーネM45
105/156

第二十二章 第二部 日記論

〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター

愛凜(あいりん) ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖

第二十二章 第二部 日記論


 「体調はどう?」

 「今月は軽いみたい。もうそんなにきつくない」

 「良かったね。こんなこと聞いていいかどうかわからんけど、まりんさんもゆきちゃんも女性だから、当然愛凜と同じ症状は月一回でるわけだろう?」

 「そうね。でもわたしほど大変じゃないみたい。わたしは元々生理痛が酷かったから、それを今もひきずってるの」

 「そうなんだ。オレはまりんさんもゆきちゃんの周期もわからないから、もし体調が悪いなら、オレが知らずに頼み事しても遠慮なく断ってくれと言っといて」

 「わかった。伝えときます。

 永く意識体として生きてるけど、この月一回の憂鬱は何百年経っても辛い」

 「その数百年の間、欠かさず続けていることってあるの」

 「あるよ。日記はつけている。日によって天候だけ書いていることもあれば、長々と思うことを記している日もある」

 「じゃあもう日記帳の冊数が膨大になってるだろう」

 「そんなに多くないよ。最初の頃は当然、筆とわら半紙に書いていたけど、今はパソコンだからUSBメモリーに保存している。バックアップにメモリーカードにもセーブ」

 「じゃあ初めの頃から今まで書いたものを本にすると、ノンフィクションのリアル歴史書が作れるじゃん」

 「時代の出来事とか事件は書いてない。あくまで私的ヒストリーだから、他の人が読んでも面白くないよ」

 「そうかなあ。面白いと思うけどな」

 「アルトも日記書けばいいじゃん。文書力はあるんだから、フィクション・ノンフィクションとり混ぜて、面白おかしく記録すればいい」

 「このストーリー自体がそれに近いけど、でも毎日休まず続けるとなるとしんどいな。趣味の一環で書くならいいけど、それが義務となるとプレッシャーになるから、書いていても面白くないだろう、きっと」

 「でも今日聴いた音源や視た映像は記録してるじゃない。それと録音・録画したデータ」

 「それはただのデータ記録だから簡単だし、日記みたいに思考力は必要ない」

 「でも毎日記録してるのは大したもんだと思うよ。それこそほかの人にはなんの役にもたたないけど」

 「だいたい日記って、誰かに読まれる前提でみんな書いてないか? だからどこかカッコつけてる文体になってる」

 「そうなのかなあ。作文の延長ってことになるの」

 「作文って言うとフィクションっぽく聞こえるけど、直感で行動したことにむりくり理由付けをして書くから、リアルに行動した時と、後付けで書く時の間にズレが生じるかもしれない。

 それは後で誰かが読んだ時のことを考えて、無意識のうちに自分の主観が入り込むから、客観的事実とは異なるかもしれない。

 でも自分以外の人が仮に読むことがあれば、書いてあることが全てだから、真実か脚色した事実なのか、あるいは全くのフィクションなのかは判断のしようがない。

 偉い人の自伝がいい例。自分に都合よく物事を解釈していることが多い」

 「じゃあわたしの日記も、無意識に自分目線で書かれているのかなあ」

 「日記はそれでいいと思うよ。むしろその人の主観で書かれていないと意味がないと思う」

 「じゃあ今度アルトに見せてあげるから判断して。日記として面白いかどうか」

 「二五〇年分あるんだろ? かなりの分量だから読み通すのは相当の時間がかかるだろう」

 「でも文字だけじゃないよ。その時その時で興味のある絵もある。もちろん春画も」

 「見る見る。なんなら春画だけピックアップしてもらったらありがたい」

 「全部セットじゃないと見せません。最初から全部読め」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ