表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフ・アテンダント 人生の付添人  作者: アルシオーネM45
104/156

第二十二章 第一部 ゆきちゃんと散歩です

〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター

〇まりりん・ゆき 寿満寺学校二年生/愛凜の末娘

第二十二章 第一部 ゆきちゃんと散歩です


 散歩の時間だが、今日は愛凜は来ない。月に一度の不愉快な日らしい。

 ひとりで出かけようとしたらゆきちゃんが降りてきて

 「わたしがおつき合いします。ワンちゃんたちのお守役で」

 「いいの? 勉強の途中じゃない?」

 「気分転換です。一日一回は外歩きしないと」

 「そう。じゃあ一緒に行こう。ワンちゃんたちは付いてくるから、私の横を歩けばいい。姿は消したままでお願いね」

 「はい、母から聞いてます」


 「ゆきちゃんはどうしてライフ・アテンダントになろうと思ったの?」

 「いいんですか、おしゃべりして」

 「いいよ。半径百メートル以内には誰もいそうにないから」

 「そうですか。

 母もおばあちゃんもライフ・アテンダントだから、わたしも誰かの役に立とうと思って学校に入りました」

 「じゃあ将来はオレの親戚の誰かに付いて、傍らでその人を見守るんだね」

 「そうですね。でもまだまだ先のことです。資格試験はかなり難しいらしいし、合格率が低いんです。だから相当勉強と実務を経験しないと」

 「そうなんだ。でもお母さんもおばあちゃんもその道を歩んできて、今は立派に独立してライフ・アテンダントになっているんだから、ゆきちゃんも夢が叶うよ」

 「だといいんですけどね。

 でももしだめだったら、大学に入って物理学の勉強をして博士課程に進みます」

 「大学もあるんだ。

 ね、今通っている寿満寺学園? だっけ? それって実在の学校なの?」

 「国の認可を受けた実在の学校です。昼間は現生の高校生が通い、夜間はわたしたちが使っています」

 「それは… 何と言うか、学校や教育委員会には無断で利用しているの?」

 「まあ、そうなりますね。夜になると通学して、学校の設備や備品、たとえばコンピュータとかその他もろもろを使わせてもらっています」

 「もちろん姿を消しての登校だよね。それはわかるけど、教室の電気やパソコン画面の出す光は大丈夫なの?」

 「わたしたちは最小限の明度で充分見えるから、教室の電気を点灯させる必要はありません。パソコンの照度を最小にして、それで学習しています」

 「でも使用履歴や電気代が予想外に上がって、学校事務の人に怪しまれたりしない?」

 「そこら辺は問題になったことはないみたいですね。学校の管理なんてけっこうずぼらなんです。学校だけじゃなくて役所も同じ。

 結局は自分で払うお金じゃないから、担当者は電気の使用量が多少合わなくても気にしてません。

 仮におかしいと思われても原因を突き止めるのは無理でしょうね。だって実体のない存在が使用しているわけだから、不正使用の証明ができない」

 「そうなんだ。でも授業中に警備員が見回りに来たりしないの?」

 「来ないですよ。最近はどこの学校や役所でも赤外線監視だから、わたしたちには反応しません」

 「じゃあ自由に利用できるね。

 大学は行くとすればどこで勉強するの?」

 「九洲大学です」

 「じゃあもし物理学の道に進んだら、私にも学んだことを教えてください」

 「わかりました。任せてください! あ、誰か来ましたよ」

 「ああ、あの人は知ってる人。あの人、話しが長くなる時があるから、そうなりそうだったら先に帰ってね」

 「はい、ワンちゃんたちと散歩して、先に帰っています」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ