第二十一章 第一部 まりんさん
〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター
〇愛凜 ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖
〇まりん ライフ・アテンダント/愛凜の母
第二十一章 第一部 まりんさん
「お母さん、最近よくキッチンに居るけど、ちゃんと自分の部屋で寝てる?」
「寝てるわよ。いつも寝室のドアを開けてくれているので出入り自由なの」
「『開けてくれている』って、気付かれてているの、お母さんの存在に」
「みたいよ。ただライフ・アテンダントじゃなく、座敷童的存在と認識されてるみたい」
「ゆらちゃんちの騒ぎの影響ね。疫病神と思われてないだけいいけど。
でも細心の注意を払って行動してよ」
「判ってるわよ。だから実体化はしてない」
「でも冷蔵庫の開け閉めとか目撃されると、ウワサが拡がって心霊現象の名所になっちゃうから注意しないと。わたしたちまで影響受けちゃう」
「大丈夫よ、ちゃんと誰もいないか確認してつまみ食いしてるから」
「……本っ当に気を付けてよ。お母さん、大胆って言うかずぼらなんだから」
「まりんさん居るの? おはようございます」
「或人くん、おはよう。早いのね」
「寝落ちしてたんで、今から二度寝です。寝る前に何か飲もうと思って」
「ヨーグルトがいいわよ。起きる頃にはおなかがゴロゴロ鳴ってる」
「そ そうですね。でもコーラにしときます。炭酸系が欲しいから」
「そう。カピルスソーダって気が抜けるとカピルスウォーターになるよね」
「はは、そうですね。じゃあ寝ます。おやすみなさい」
「おやすみ。HAVE A NICE SLEEP」
「まりんさんって、むかしからあんな感じなの?」
「生きてる時からってこと? 多分そうだったと思う。わたしの五歳の時に相転移したから、わたし自身はあまり記憶がない。
為三さんはよく『ようはおもしろい女だった』って言ってたから」
「まりんさんの本名は『よう』さんだったね。まりんさんとはそんなに会話してないけど、強烈な印象は残していく」
「若干KYだから、周りをうんざりさせる。人はいいんだけど」
「一緒に買い物とか行かないの?」
「めったにないね。唯我独尊タイプだから、ひとりでいる方がいいみたい。さっきみたいにつまみ食いしたり、誰もいなければ昼ドラ視てたり」
「そうなんだ。今度一緒に天陣でも行く? ゆきちゃんも一緒に」
「うーん。アルトがどうしてもって言うならついて行くけど、後悔するかもよ」
「後悔? めんどくさいの?」
「さっきも言ったけど唯我独尊だから、あっちこっち振り回されるよ、きっと」
「まあでも、親孝行と思えばいいんじゃない。オレにとっては先祖孝行だけど」
「わたしは立場上、面倒見なきゃいけないからついて行くけど、ゆきはどうだか」
「ゆきちゃんは行き帰りだけ一緒で、あとは自由行動にすればいい」
「ならその線で打診しとく。あまりお勧めはしないけど」
「肝心のまりんさんは来るかな?」
「お母さんは即諾よ。ショッピング・キングだから」
「クイーンだろ」
「車に乗った瞬間からしゃべり倒すわよ」
「なんにもしゃべらないよりいいよ」
「気が重いけど、親だから仕方ないか、たまには」
と言うことで、まりんさんとの天陣ショッピングが決まった。日程は追って発表します。