第二十章 第七部 迷惑メール考
〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター
〇愛凜 ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖
第二十章 第七部 迷惑メール考
「ねえ、最近このアマゾネスのなりすましメール、よく来るね」
「ああ、それね。『あなたのアマゾネスアカウントは永久ロック』ってやつだろ。ロックしたら商売できなくなるのにね。
迷惑メールの作文をする奴も、もう少し頭を使って文書作成しないと」
「消しとく?」
「いや、まだ消さなくていい。アマゾネス名義でくるフィッシングメールは、全部本物アマゾネスに転送してるから」
「転送したら犯人を捕まえてくれるの?」
「いや、そこまでは無理だろうけど、調査はしてくれるだろう。
アマゾネス自体が『そのようなメールはアマゾネス宛てに転送してください』とセキュリティー対応のユーザー向け案内に書いてある」
「そうなんだ。じゃあこれはこのまま迷惑メールフォルダに留置」
「アメリカン・リミテッド・エキスプレス・カードのフィッシングメールも最近よく来る。そこのカードは持ったことないのに」
「なんでもありだね。『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』精神で大量送信してるんだ」
「だろうね。でもたまに本物が来ることもある。昨日届いてた画像処理ソフトのアビドのメール。
内容は最近使っていない登録アカウントをそのままにしておくと、何日か後に削除するって内容だった。
またかと思ってフィッシング詐欺メールの報告して、受信拒否にして削除したけど、気になってネットで調べたら、どうも本当のアビドからのお知らせだったみたい。
で、ネットに真偽のほどを調べた結果を上げてくれていた人も書いていたけど、この時期にこんな内容のメールを出したら、みんな詐欺メールと受け取るだろうって。その通りだ」
「タイミングを考えなかったんだね。天下のアビドともあろう会社が」
「KYなんだ、IT関連の若い奴は、コンピュータの事はよく知ってるけど、人間の行動様式はわかってない。みんながみんなとは言わないけど、なんでも自分が一番知っていると思い込んでいる自惚れオタクが多い。
ソフトやハードのマニュアルとか読んでると、さっぱり意味がわからない文書で書かれているのがあるだろ。あれなんか、プログラム言語は判るくせに、肝心の母国言語がうまく話せないから文書の内容も伝わってこない。
マニュアルを作成しているオタクが、半笑いでキーボードを打っている姿が目に浮かぶ(※個人の妄想です)」
「どうしたアルト。なんかアツくなってるね。ほら、カピルスソーダでも飲んで頭と喉を冷やして」
「ありがとう。そう言えば、今日はみうらじょんの【ブロンサンズ】のCDと本をLOOK OFFのオンラインに注文したよ」
「ああ、『♪おれ、穴を掘ります』うんぬんって歌が入ってるやつでしょ。あれ面白そうだね。届いたら聴かせて」
「天陣のLOOK OFFがしばらくないから、オンライン買い物が増えるよ」
「でも地元LOOK OFFだって、新しい割には在庫が多いから、わたしは地元店があれば生きていける」
「死んでるだろ」
「失礼な。実体はないけど精神は永久ロングライフ」