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ライフ・アテンダント 人生の付添人  作者: アルシオーネM45
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第二十章 第六部 日常会話 三人編 または三人変

〇藤咲 或人 パートタイムのフリー・ライター

愛凜(あいりん) ライフ・アテンダント/或人の遠い先祖

〇まりりん・ゆき 寿満寺学校二年生/愛凜の末娘

第二十章 第六部 日常会話 三人編 または三人変


 「ゆきちゃん、今日はこの部屋で寝るの?」

 「はい、昨夜はなにか音がして、ドロボーじゃないかと思って怖かったから」

 「天井の方から?」

 「そうですそうです」

 「ああ、それ、多分イタチだと思う。屋根から下りられずウロウロおろおろしてた」

 「そうなんですか。イタチって襲ってこないんですか?」

 「イタチは大丈夫じゃない? イノシシはヤバいけど、ここまでは来たことない。あと、スッポンが大雨の降った後、裏の用水路に流れ着いたことがある」

 「へぇえー わくわく危険動物ランドですね」

 「それから二回、この部屋にヘビが入ってきたこともある」

 「うわっ! それまずいですよ」

 「まずいよね。一回目は朝までにらみ合いしてた」

 「で、どうなったんですか、勝敗は」

 「お互い戦意を失って、オレは居眠り、その間にヘビはぱっくれた」

 「二回目は?」

 「殺虫剤とか芳香剤やオーデコロンなど、とにかく刺激と匂いが強そうなものを撒いて、退散させた」

 「その作戦はうまくいったんですね」

 「だろうねえ。入ってきたすき間と同じ場所から出て行ったと思う。どちらも二十年以上前のことだけどね。

 ゆきちゃんは動物、大丈夫なの?」

 「犬や猫みたいな愛玩動物は好きですが、爬虫類・虫・熊はだめです」

 「熊? ゆきちゃんが相転移する前は熊がいたの? この辺り」

 「わたしは直接遭遇したことはないけど、お父さんが山で出くわして、格闘寸前まで威嚇合戦になったそうです」

 「熊相手によくそこまで頑張ったね」

 「ツキノワグマだったからそんなに大きくなかったそうです。とにかく自分を大きく見せようと目いっぱい背伸びして、大音声だして目と鼻の孔と口を大きく開いてじわじわ近づいていったら熊は逃げ出したそうです」

 「強いね、お父さん。そう言えばゆきちゃんのお父さんのこと、あまり知らないな。お母さんからも聞いたことない。大工さんだったこと以外」

 「わたしもそんなに思い出がないんです。いつも仕事に出ていたし、帰ってきても夜は蝋燭の火だけだから暗くて顔もよく見えない」

 「お母さんからお父さんのこと、聞かないの」

 「そう言えばそんなに聞いてないですね。とっても優しかったってことくらい」

 「そうなんだ。まあ、オレが口を差しはさむことではないけど、知りたいよね、お父さんの事」

 「そうですね。いつか話してくれるでしょう」

 「あ、ちょっと待って。お父さんも相転移してるから、意識体として会ったことはないの?」

 「ないです。どこにいるかも知らない」

 「ふーん。なにか事情があるんだろうね。じゃあなおさらオレはノータッチの方がいいな。

 でもゆきちゃんの父親だから、オレのご先祖のひとりでもある」

 「そうなりますよね。それとなく訊いてみたらどうですか、お母さんに」

 「いや、やめとく。言わないことは聞かない方がいい」

 「ふたりで何をこそこそ話ししてるの? わたしも混ぜてよ」

 「じゃあしりとりしよう。チキン」

 「あん? いきなり『ン』が付いてるじゃん」

 「だからね、最後に『ん』が付く言葉しりとり」

 「なにそれ。じゃあ台湾」

 「わたしもやるんですか? ポンカン」

 「はなくそまんきんたん」

 「現金」

 「博多湾」

 「F1」

 「映画館」

 「あの、これって終わりがないんじゃないですか? 鹿児島本線」

 「終わらないよね。湯布院」

 「一晩中やる気? レナード・バーンスタイン」

 「負けワード決めとかないと切りがないですよ。ヘルベルト・フォン・カラヤン」

 「じゃあ動物系言ったら負け。ライオン」

 「わざと言ったでしょ、ライオン。むりくり始めたからすぐ飽きる。

 負けたんだから何かおごって」

 「お母さん、最近たかり癖が頻繁よ」

 「だって負けたんならそうなるよねえ、アルト」

 「わかったからコンビニ行く用意しなさい。思いつきでしりとりとか言うんじゃなかった」


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