8.山道
アンリが住んでいた村を助けることになったアグニ一行。
そこに待ち受けるは山という自然の猛威がアグニ達を待ち受けます。
太陽はすっかり顔を出し、頭の真上にまで登っている。
俺たちはアンネの誘導の元、アンネが住んでいたという村、リンド村に向かっている。
アンネによると今いるところから半日くらいの距離でさほど離れていないらしいが、途中山岳を抜けるようだ。
山賊たちの悲鳴を聞いたのはその山岳地帯らしい。
そしてその山が目の前に佇んでいる。
一言で言うと、でかい。
山の大きさもさる事ながら、鬱蒼とした樹木が生い茂り、山の大きさを倍くらいの大きさに見せている。
「なぁアンネ、お前ここを一人で突っ切ったのか?」
「? そう、だよ? リンド村は、山に近いから、山道は慣れてるの。だから、これくらいの山は、子供でも越えられるよ」
「お前らの村の奴らって、すごいのな」
げんなり、この山をこれくらいって…細い道はあるにしても、なかなかの急勾配だなこりゃ。
それに樹に生い茂っている葉のせいで山の斜面は薄暗くなんとも先がよく見えない。
不気味。
なんとも不気味。
子供の足で1日かからないって言ってたからせいぜい小高い丘くらいなもんだと思ってたけど、これは相当に骨が折れる、山頂付近雲かかっちゃってるもの。
「ほら、アグニ行くぞ。あんま時間もないんだ。日没までには山頂でキャンプを張りたい」
ラルフに説教されるとか、自分は山道が得意だからって良い気になりやがって。
とりあえずぐちぐち考えながらでもゆっくりと山道を登っていく。
「アンネちゃん? 悲鳴が聞こえたのは山のどのあたりからかな?」
「んと、夜だったから暗くてよくは覚えてないけど、山を下ってる時に、聞こえたから、ここからそう遠くないところだと思う」
「そうか、なら今から気をつけなきゃだな。アグニ、槍はちゃんと待っとけよ」
「わーってるよ。杖代わりになるしな」
肩に背負っていた槍の一本を手に持ち後ろの石突の部分を地面に気だるく落とす。
「あなたはおじいちゃんですか? そんな風に持っていたらいざという時に出遅れますよ?」
ニプロパに挑発されたが、今は山との勝負に負けそうだからあいつはスルーしておこう。
「いったいその男どもに何があったんだろうな? 妥当な線を考えると魔物が犯人なのが有力か?」
ラルフが山道を軽く登りながら考える。
ワーウルフも確か種族柄、山には強いんだっけ。
おぶってほしいなー。
ちなみに魔物というのは、スライムやドラゴンなどの、魔族や人間の様に知性を持っておらず、本能で行動する奴らのことを言う。
種類は無数に存在し、その土地その土地で順応した魔物が世界各地に確認されている。
「この辺りは昔から魔物の被害は少ない地域なので、
あまり魔物は出ないと思いますが…それでも用心したほうがいいでしょうね」
「うん、最近、ここにはニードルボアが出るから近づいたらいけないよってお父さん言ってた。」
「ニードルボアか、あいつ鍋にすると良い出汁出るんだよな」
ラルフが腕を組んでその鍋の味を思い出すかの様に空を眺める。
「!!…ま、まぁ魔物の被害が出でいるならば? 勇者である私が倒さなければなりませんね!」
「!?…まぁ俺も? 魔王として? 困ってるやつを見逃すことはできないからな!」
「アグニお兄ちゃんやっぱりアウターなの?」
「いや違う! 魔王ごっこだ!魔王ごっこは魔物も倒すの! 何度も言わせるな!」
…なんとしても、達成させなければいけないミッションが、俺とニプロパに受注された。
この山は疲れるが、ご馳走があるなら頑張れる。