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原生魔王と天才勇者×100  作者: 池田池
旅立ち編
4/14

4.異能力

戦闘の描写って思ってたより難しいですね。

物語のキャラは頭の中で派手に動いてるのにそれを表現するのが追いつかない感じ。

読みづらかったらごめんなさい。



自分の過去と重なって、主人の家族を守るため、勇者シノブに喧嘩を売ったアグニ達。

しかし勇者はとんでもない力で2人をねじ伏せる。

原生魔王と転生勇者×100、初の勇者戦開幕!

喧嘩を売ったはいいものの、さてどうしたもんか。

 こっちは武器もなければ防具もない。

 ここで雇われる時に武器は全部没収された、まぁ反乱とかが起きるのを防ぐためだろうが。

 こういう時に不便だな。

 正直素手で勇者に勝てるかどうか怪しいところだ。

 とりあえず先手必勝とばかりに態勢を低くし足に回し蹴りを繰り出す。

 …が、ジャンプして避けられる。

 巨体の割にかなり素早い、筋肉は見せかけじゃないってことか。


「でも、飛んで良かったのか?」


「あ? 何言ってやが…!」


 ジャンプするって事はその後の動きが制限されるって事だ。

 俺の死角に隠れていたラルフに合図を出し、背中をジャンプ台にして一気に詰め寄る。


「シッ!」


 鋭い爪が生えた手を手刀のように伸ばし、短い気合いと共にシノブの心臓目掛けて突く。

 俺とは違いラルフは人狼化すれば全身が武器になる、こっちの決定打はラルフだ。

 それに、国が滅ぼされてからただ農作業をしていたわけじゃない、いつかこんな時が来るかもしれないと、毎日組手は欠かさなかった。


「狙いはいい。だが、相手が悪い」


「何!?」


 突き出したラルフの腕はシノブには当たらない。

 空中で腰を回転させ無理やりラルフの攻撃を避けると、そのままラルフの手を掴み真後ろの地面へと叩きつけた。


「かはっ」


「ラルフ! くそっ」


 叩きつけられた衝撃で数メートル吹っ飛ばされる。

 完全にシノブの虚を突いたはずが完璧に対応された?

 死角からの攻撃が読まれてたってのか!

 シノブとの距離詰め、フットワークを使い一撃回避で打ち込んで行くが、しかしそのどれもが軽くいなされてしまう。


「くそっ、あたらねぇ」


「これがお前の全力か? 攻撃が止まって見えるぜ! 魔族ってのは人間より身体能力が高いはずじゃねーのかよ」


 やれやれと言わんばかりに首を振り、頭を狙った俺の蹴りと合わせて、シノブが腰を落とす。

 見覚えのない構えを取りニヤッと、あの気色悪い笑みを浮かべた。

 嫌な予感がし、すかさず足を引っ込め防御の態勢をとる。

 瞬間、構えた腕に衝撃が走り、体ごと吹っ飛ばされていた。


 ゴロゴロと勢いよく地面を転がり、ラルフが倒れているところと同じところで止まる。

 いつのまにか突き出されていたシノブの拳から、湯気が上がっている。

 この状況を見るに、ものすごい速さでパンチを食らったらしい。

 嫌な予感がして防御の態勢を取っていて助かった。

 あのまま防御しないでもろに受けていたらと思うと背筋が凍る。


「おいラルフ! 生きてっか? まだ始まったばっかなんだから伸びてんじゃねーぞ!」


「お前も飛ばされてんじゃねーか。しかし、あいつなかなかやりやがる。勇者は伊達じゃねーな」


 ラルフは地面に叩きつけられた衝撃で少し気絶していたらしい、頭に血を流しながら手をついてヨロヨロと立ち上がる。


「ほんとになんて反応速度してやがるんだあいつ。人間の動きとは思えないぞ。これが勇者の実力だってのか」


 今の数秒で大体わかる。あいつ、かなり強い。

 異様な程の反応速度、目に見えないほどのパンチスピード、はっきり言って付け入る隙がない。


「おいおい、大丈夫かよ? まだ肩慣らしにもなりゃしねーな。これで終わりじゃないんだろ? こいよ」


 挑発するように構えた手をくいくいっとこまねいている。むかつくなー。


 とりあえず現状把握。

 俺の体は…大丈夫、攻撃を受けた腕が少し骨が軋むが動かない程度じゃない。

 ラルフは、少し頭を打ちすぎたか、頭を振ってよろめく体を覚醒させている。でも動かないことはないな。


 対する敵は全くダメージも体力も問題ないらしい。

 体が暖まってきたのか、近くにある井戸のオケの水を全身にかけると、一瞬で湯気があがり水が飛ばされる。


「ふぅーあちーあちー。やっぱり熱にはなれねーな」


 井戸の淵に腰掛け、軽口を叩く始末、まだまだ余裕だなこの野郎。


「おいラルフ、もう動けるか? そろそろ仕掛けるぞ」


「あぁ、いける。あんな攻撃、親父のゲンコツに比べたら屁でもねぇ」


 ラルフは短く答え、構えを取る。冗談が言えるまでには回復したようだ。


「あぁ、だな。気合い入れろよ!」


 言うが早いか動くが早いか、今度はラルフと同時にシノブに肉薄する。

 2人同時で攻めれば多少なりとも攻撃も当たるだろう。


 シノブの右の首筋と左の脇腹を狙う。

 しかし左右から同時に放った攻撃はまたしても本人たちの闘気とは裏腹に虚しくいなされる。

 が、攻撃は続ける。


「おらっ」


 今度はみぞおちに突き、かわされる。


「くそっ」


 次は死角に回っての足払い、止められる。

 フェイントを交えてのラルフとの連携攻撃。

 決して生半可な攻撃ではない、人間では到底反応しきれない速度のはずが、いとも簡単に無力化されてしまう。

 全ての攻撃が通用しない。


「はっ、この程度で俺様に挑んだとは、甘いぜ」


 失望したように見下し、目にも留まらぬ速さで2人同時に蹴りを食らう。

 そう、俺たちは甘かった。

 薄れ掛けの意識の中で時間がゆっくりに感じられる。

 くそ…モロに食らっちまった。

 勇者に対して素手で立ち向かうなんて無謀だった。

 いや、たとえ武器があったとしても勝てたかどうか怪しいところだ。

 人間だからだと思って甘く見ていた。

 奴らは紛れもなくイフルランドをたった100人で滅ぼした化け物だ。

 こんなやつに、勝てるわけない。

 ラルフすまない、俺について来たばかりに死ぬ羽目になってしまった。


―負けるのですか?―


 あーあ、とうとう幻聴が聞こえてくる。

 もう俺は死ぬのかな、何もできないまま。

 ただのアウターとして。


―幻聴じゃないー


 ん?

 なんか心と会話しちゃってる俺。

 死ぬ直後ってこんな感じなの?


ーだから! 違うって言ってるでしょ! いいから早く起きなさい! ー


「がはっ!」


 よくわからない声が終わると同時に、地面に背中を叩きつけられ、遠のいていた意識が無理やり戻される。


ーまったく、意識は戻りましたね。では、これから私の言うとおりに動いてください、時間が惜しいです。ー


「あ? 誰だよ? どうなってんだ?」


 頭を振ってみる。


ー聞こえてますかー? ー


 やっぱり聞こえる。

 誰かが近くで話しているような感覚ではあるが、側には誰もいない。ラルフは俺と同じように一発をくらい吹っ飛ばされている。

 第一、声は若い女性のようだ。


「お前は誰だ、なんなんだよこれ?」


ー話は後です、ほら、来ますよ。後方に全力で飛んでください! ー


 シノブを見るとものすごい速さで迫ってくる、声の主に合わせるわけじゃないが、後ろにジャンプして回避する。

 その数瞬後、シノブの拳が俺の立っていたところに突き刺さる。

 地面はクレーターのように凹み、熱で空間が歪んでいる。

 あんなの食らったらひとたまりもない、どんだけ早いんだあいつ。


「ちょこまかちょこまかと、もう力の差はわかっただろ! いい加減死んでろ!」


 シノブがイラついて、隣にあった岩を拳で破壊する。

 あんなの、反則だろ。


「アグニ! このままじゃ勝てないぞ! どうすんだ?」


 いつの間にか隣に来たラルフが肩で息をしながら耳打ちする。

 だいぶ満身創痍だ、俺もだがもう長くは戦えない。

 たしかに今のままじゃ勝てない。

 さっき一瞬諦めもした。

 でもここで引くわけにはいかない。

 このまま逃げたら主人の一家は確実に殺される。

 ふと、主人の家の方を見ると主人一家が固唾を飲んで見ている、主人はなにかをしているようだがここからでは見えない。

 逃げる準備でもしているのか、それなら好都合。

 時間稼ぎにでもなんでもなってやる。

 どちらにしても一家を俺たちのようにさせてはならない。

 そんな胸糞悪い結末になってたまるか。

 利用できるものならこの際なんでも使ってやる。


「おい声のやつ!」


ー声のやつって…私のことですか ?失礼な人ですね、まぁいいです、なんですか? ー


声の感じからしてイライラしているだろうが、今はそんなこと気にしてられない。


「あいつをどうにかできるから話しかけて来たんだろ? さっさと教えろよ!」


ーだから、さっきからそれを教えようとしてたのにあなたが聞く耳を持たなかったんでしょう! ー


「おいアグニ? お前誰と喋ってるんだ? 頭打ったのか?」


 ラルフには聞こえないのか、心配そうにこっちを見ているが、説明するのも面倒くさいからとりあえず無視しとく。


「あぁさっきは悪かった。頼む教えてくれ!」


ーまったく、仕方ないですね。これからシノブのスキルを教えます。それとそのスキルの弱点を。ー


 なんでそんな事をこいつは知っているんだ?

 不思議なことにばかりだが教えてくれるならなんでもいい。


「おいアウター!」


 突然の後ろからの声は、家でなにかをしていた主人だった。


「バカか! ここは危険だ! とっとと逃げろ!」


「うるさい俺に指図するな! これが必要なんじゃないか?」


 ぶっきらぼうに袋と棒を渡してくる。

 見ると俺とラルフの使っていた双槍と籠手だ。


「これは…いいのかよ?」


「なんでこれを俺らに? 反逆罪になるんじゃないのか?」


「こうなった以上こうするしかないんだ。…頼む。家族を守ってくれ!」


 主人がアウターに頭を下げる。

 きっと一大決心だったんだろう。

 人間側の英雄を、悪者のの魔族が倒すのを助けているんだ

 アウターを助けるということは罪人を助けるということ、それはこの国では大変な罪になる。

それでも主人は助けてくれるのだ、家族のために、シノブを倒すために。

 俺とラルフは黙って武器を受け取る。


ーさて、それじゃあ行きましょうか? ー


 俺は双槍、ラルフは籠手を持ちシノブに向き直る。

 何故だか今は、さっきまでとは違ってシノブに負ける気がしない。


「あぁ頼む。ここから反撃開始だ!」

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