13.歪んだ殺意
アンネが居なくなって探そうとしているところに謎の男が現れます。
果たして男は何者なのか。
物語は大きく動き出す…‼︎←書いてみたかった。
広間の反対側からぬっと現れたのは、右手に赤い宝石が不気味に光る抜き身の大太刀を持った大男。
黒い布で顔が見えないがニヤッと笑っているのがわかる。
アンネが言っていた見た目に完全に一致している、こいつが山賊を殺した男なのはまず間違い無いな。
「こいつらを殺した奴だな。こんな時に間が悪いやつだ! 今はそんなことしている暇ないんだよ。お前は殺し方はともかく山賊を倒したって事は悪いやつではないんだよな? 無用な戦いはしたくない。俺たちは人を探さなきゃいけないんだ。悪いが失礼するぞ」
今は一刻を争う時だ、無駄な話はしてられない。こいつを放っておくのは少々不安が残るがアンネを探す方が先だ。
あの子がなぜ俺から離れたのかはわからないが、何か理由があったに違いない。
しかし男がアグニの進行方向に割って入るように大太刀で遮る。
「おいおい連つれねーじゃねーか。人探しよりも俺ト殺り合おウぜ?それに買い被ってもらっちゃ困るが、俺は殺したかったから殺しただけだ。山賊でも女でも関係ないんだよ」
大太刀を肩に乗せゆっくりとこちらに近づいて来る。
遠くで見た時には分からなかったがこの男、かなり傷だらけだ。所々に山賊と同じく切り傷があり血が滴っている。
山賊と戦った時にやられた傷だろうな。あの傷だったから山越えは断念し、ここに留まっていたんだろう。それならなおさら戦闘もしたくないはずだ、なのになぜ戦おうとするんだ?
「それに安心しろ、お前ラヲ殺った後にすぐそノ娘を探して後を追ワセテやるから」
「!! そんな事させるわけねーだろ!」
「なーら、俺と殺りあうしかねーよな?かかってこいよ」
大太刀を肩に構え直し、臨戦態勢をとる。
どうも戦うしかないようだ?
「…おい、一つだけ聞かせろ。なんで山賊たちををこんな酷い殺し方をした? お前こいつらに恨みでもあったのかよ?」
「はっ、そんなモンない。こいつらガ襲ってきたから殺したマデだ。まぁこいつらがあマリ二もいきってたんでな、少し遊んでヤッタだけだ」
布の中から邪悪な目が歪んで光っている。あいつ、笑ってやがる。
「昨日は楽しかったナー。叫び声ガみっともねーのなんノって。へへ、お前らはどんナ声で鳴くのかネ。そンで、その後二あの娘にお前らを殺シタと言って絶望したところを殺してやルよ。さぞかしイイ声で泣き叫ぶんダろうなー。考えただケデ笑いが止マラないぜ」
ップチン
なにかが弾けた音が頭の中で鳴った。
「もういい、今のでお前がどんな奴かわかった。お前、もう喋るな」
アンネを殺すだと?
あの子を殺すなんてやらせるわけない。あの子は俺たち魔族と人間の希望だ。絶対に殺させない。
「お前は、俺が燃やす」
血が沸き立って体が熱い。
このいかれた野郎を殺せと、心の中の自分が叫んでいる。
ドクン、ドクン、と心臓の音がはっきり聞こえる。
でもうるさくはない、心の中は嫌に静かだ。
「い…」
殺す、燃やす。
殺してやる、炭も残らないほどに。
「おいアグニ! かるい挑発に乗ってんじゃねー! 一人で戦うんじゃない! 俺たちは三人いるんだ、怒ってるのはお前だけじゃないんだぞ!」
「!? すまん。ついカッとなって」
気づいた時には自然と握りしめていた拳から血が滴っていた。
「そんなよくある殺人理由みたいに言わないでください。さぁ行きますよ!」
ニプロパのよくわからない表現はさておき、危なかった。アンネのことを言われてついカッとなってしまった。自分の中のアンネの存在が大きくなっているんだ、好きとかではなく、守りたいって言う気持ちがすごく強い。そんな感じだ。
俺たちはアンネのために、みんなでこのクズ野郎を倒すんだ。
俺は双槍、ラルフは籠手、ニプロパは無数の短剣と、それぞれ武器を構えて応戦の構えを示す。
「やる気になっタようデな二よりだ。じゃあ行くぜっ!」
「望むところだ! こい!」