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不幸を追って

作者: 川里隼生

 俳優の空良井くらいたけしに不倫が発覚した。私の努力が実を結び、週刊誌でのスクープを成功させたのだ。これを受け、昼の情報バラエティ番組ではこぞって特集を組み、空良井が出演していたドラマは出演部分がカット、コマーシャルも差し替えられた。空良井本人や不倫相手の若手アイドルは事務所を通した謝罪文の発表のみに留まり、会見などは今のところ行っていない。メディアを問わず、ご意見番たちが普通なら、常識なら、と煽っていく。


 こういう記事は、売れる。

「最近は嫌な事件ばっかりで、本当うんざりしちゃう」

 そういう人ほど、この手の記事を心の中では期待している。明るい話題も探せばあるのだ。例えば映画は毎週のように新作が公開されている。私は映画専門のライターになりたくて、この会社に入った。だが、求められるのは暗い話題、それもゴシップやスキャンダルばかりだ。


『あなたは、幸せの意味を知る——』

 来週公開される映画のキャッチコピーだ。一目惚れの相手が統合失調症患者だった男の、実話を基にしたラブストーリーである。公開前の映画を批評するのは悪手かもしれないが、私はこのキャッチコピーを聞いて駄作だと思った。本当の幸せは失ってから気づくとか、そういうことを訴えるに違いない。私が思うに、幸せは映画にするほど美しいものではない。


 他人の不幸を知って、自分はそうじゃないと安心すること。それが幸せと呼ばれているものなんじゃないか。最近はそう思う。それには芸能人の不倫とか、政治家の失言とか、身勝手な者の犯罪とか、みんなで批判できるものが必要になる。私がやっていることはそのエサ集めだ。そうすることで、私はこの社会に貢献している。溜息をついた。無職に比べればマシなのだろうな、と思って、安心したのかもしれない。

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