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第2話 恋人を捜して 前編

胸糞注意です。

「依頼のゴブリンキング討伐完了しました」


「お疲れ様です、さすがはターニャ様」


 ゴブリンの首をギルド裏庭で確認して貰う1人の女。

 返り血を全く浴びる事無く、討伐を果たした彼女こそ勇者ターニャ。

 淡々としている彼女の目に精気は全く無かった。


「次の依頼は?」


「少し休まれてはどうですか?

 いくら勇者といえど、こう連続では...」


「依頼は?」


「...勇者様」


 ギルド職員の声は彼女に届かない。

 死んだ目で同じ言葉を繰り返した。


「今は勇者様の手を煩わせる様な依頼はございません」


「...そう分かったわ、報酬を」


「どうぞ」


 ターニャは差し出された報酬を無造作に受けとると、そのままギルドを後にした。


「どちらに行かれるのですか?」


「...マースの所」


 職員の言葉に掠れた声でターニャが呟いた。

 誰もが言葉を失っている間に彼女の姿は消えていた。


「薬を」


 ターニャは一軒の薬屋に入り、いくつかの薬瓶をカウンターに置いた。

 それは精神安定剤と興奮剤だった。


「余り大量に飲む物ではありませんよ」


「....」


 心配する店主をターニャは苛立った顔で見た。


「こちらになります」


 置かれた薬を引ったくる様に鞄に詰め、代金を払うと無言で店を出る。

 そのままターニャは一軒の酒場に入った。


「予約していたターニャです」


「はい、こちらに」


 店主はターニャを店奥に案内する。

 今日はここで、ある人間と約束をしていた。


「お酒と、あと料理をお願い」


 店員に注文を済ませ、個室に入る。

 しばらくすると酒と料理が運ばれて来た。


「マース...」


 一気に安定剤を酒で飲み込むターニャ。

 彼女の目に僅かな光が戻った。

 一目みれば誰もが振り返る美貌。

 着ている装備は豪華な品で、特に腰に差した大剣は宝石が散りばめられていた。


「マース...私のマース...」


 次々と酒のお代わりを頼むターニャは僅かな時間で6杯目を呷る。

 しかし並んだ料理には殆ど手を着けていない。

 ターニャは一口だけ料理を口に運んだ。


「...違うマースの味じゃない」


 ターニャが呟く。

 注文した料理は豪勢な物では無い、どこにでもある田舎料理。

 しかし女にとって思い出の料理だった。


「こんな味じゃなかった。

 マースが作ってくれたのはこんな味じゃ...」


 頭に浮かぶのは恋人が作ってくれた思い出の料理。

 いつしかターニャは昔を思い出していた。

 マースとの懐かしい記憶、そして悪夢の記憶を。



 小さな町で育った二人、どこに行くのも一緒だった。

 10年前、冒険者になったばかりの頃、二人は魔族の攻撃的を受け、マースは呪われてしまった。


『マース!!』


 ターニャは魔族を斬り捨てた。

 幸いにもマースの命は助かったが彼の成長は止まってしまった。


『すまない、俺はもうターニャの足手まといだ。

 パーティーから外してくれ』


 マースが言った。


『大丈夫よ、私がマースの盾になるから。

 絶対に離れないわ』


『ターニャ...』


 ターニャは彼の為に努力を重ねた。

 素質があった彼女は勇者となり、次々と活躍する。

 そんな彼女をマースは支えた。

 戦闘で足手まといにならない様に必死で鍛え、

 一生懸命にパーティーをターニャを支えたのだ。


『是非勇者様のパーティーに』


 ある日ターニャのパーティーに加えて欲しいと現れた数人の男達、皆名の知れた冒険者だった。


『止めた方が良い』


 胡散臭さを感じたマースは止めた。


『大丈夫よ』


 気にする事無くターニャは男達の加入を認めた。

 それが過ちの始まりとも知らず。


 男達の加入でパーティーは益々充実する。

 難しい依頼を次々成功させ、ターニャのパーティーは名を上げて行った。


『マースはここに居て』


 ある日ターニャが言った。


『...どうして?』


 驚くマース、いつも一緒の二人だったから当然だった。


『ヘカンが言ったの、マースに万が一があると大変だって』


『ヘカンが?』


 新しく加入した男、いつもターニャをイヤらしい目で見ていた。

 マースは何度もターニャに言った。

 『アイツは危ない、気を付けて』と。


 しかしターニャは聞き入れ無かった。

 彼女は自分の名声に酔っていたのだ。

 気がつけばマースの仕事はパーティーの雑用になっていた。


 それでもマースは信じていたのだ。

 ターニャは裏切らないと。


 破滅は突然訪れた。

 ある依頼の途中、ターニャが怪我をしたのだ。

 報告を聞き、遠征中のキャンプに駆けつけたマースが見た物は....


 ヘカン達、数人に激しく抱かれるターニャの姿だった。


 あの時のマースの目を見たターニャは更に乱れた。

 それが姦淫の紋のせいだと知らず。


 絶望したマースがパーティーを抜けたのは当然だった。

 しばらくターニャはマースの事を忘れ淫蕩に耽っていた。


 ある日いつもの様に抱かれている時、ヘカンが言った。


『マースの奴、ギルドの調査隊に加わって死んだらしいぜ、役立たずらしい最期だな』


 嘲け笑いのヘカンを見たターニャ....


『マース!!』


 ターニャに刻まれていた姦淫の紋が外れた瞬間だった。



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― 新着の感想 ―
[一言] これはもう、死んでいる人間だ。 妄執で動いているだけの…。 正直、一つ一つの過ちは軽い。 他人の悪意で罠に嵌められなかったら、それが決定的な大きさになる事はなかったはずだ。 悪魔に負けて、…
[一言] 恋人の忠告も聞き入れずに怪しい男を加入させた時点でもはや自業自得としか言えないねこれは 冒険者なんて仕事やってて男に警戒心もたないのはたぶんこの世界的にもアホな女なんじゃないかな まあそれを…
[気になる点] 精神安定剤飲まないと、精神が壊れてるままという事ですかね。でも酒でとかは・・・。 興奮剤は夜の為か、セルフの? [一言] 彼女、マースを罵倒とかは無かったと言う事かな。 まあ周囲にいた…
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