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君のあの輝きを  作者: ゆう
歯車
1/5

出会い

あの日の君の輝きを、俺は忘れない。

どんなことがあったとしても、何があっても、

俺の記憶の中に深く深く刻み込まれている。


蝉の鳴き声が鬱陶しさを増した夏の日。

扇風機の前に座り涼んでいると、テーブルの上の携帯が振動する。

「もうすぐ着くから準備しとけ」

そんな命令口調のメッセージが友達から送られてきた。


「もうそんな時間か」

扇風機の涼しい風を惜しみながらも、星野は嫌々と立ち上がり段ボールに荷物を積める。

引っ越しの準備とはなんと面倒なものなのだろう。

頭の中で愚痴の言葉を羅列しながら、押し入れの奥にある荷物を取り出した。

埃をかぶったその荷物たちは、雰囲気だけ掘り出し物らしさを醸し出している。

新居に持っていくものを選別していると、古びた絵本を見つけた。


「何だこれ」

見覚えのない絵本。タイトルの部分も持ち主らしき名前の部分も、かすれてしまって何も見えない。

星野がパラパラとページをめくりながら内容を眺めていると、インターホンが五月蠅く鳴った。

持っていた絵本を傍らに置いて、玄関の方へ向かう。


「荷物の準備進んでるか?」

星野が玄関を開けるのと同時に、高橋がずかずかと室内に入ってきた。

準備のほとんど進んでいない部屋の様子を見て、間に合わないと文句を言いながら床に広がっている荷物を乱雑に段ボールに詰めていく。

「それは持っていかないやつだよ」

片っ端から投げ入れる高橋を窘めようと玄関の扉を閉めようとした時、玄関にもう1人の気配を感じた。

「あれ、いたのか」

居心地が悪そうにそこに立ちすくんでいたのは、星野と高橋と同じ大学の同級生の北川だった。


「道端で高橋くんとたまたま会ってさ。星野くんの引っ越しを手伝うから折角ならと思って…邪魔だった?」

星野は横に首を振り、北川も部屋に招き入れた。

「なあ、北川も手伝ってくれよ」

高橋に急かされ、北川もそそくさと高橋の方へ向かう。


準備を進めていると、高橋が星野に1冊の冊子を見せた。

「これ懐かしくない?」

その手に持っていたのは、星野たちが大学に入学する時に渡されたパンフレットだった。

「ああ…」

星野は大学の入学式の日のことを思い返していた。



大学の入学式、星野が入学式の式典が行われる体育館の場所が分からずキャンパス内を徘徊していると、後ろからいきなり声をかけられた。

「迷子?」

そう話しかけてきた人の手には新入生用のパンフレットがあった。

星野が返答に困っているなか、その人は構わず会話を続ける。

「実は俺もなんだよね。体育館ってどっちだっけ?」

てっきり体育館への道順を教えてくれると思っていた星野は、予想外の言葉に思わず笑ってしまった。

「あ、笑ったな?」

そう言いながら、その人も同じように笑う。

「俺、高橋っていうんだ。お前は?」

「星野って言います…」

これが、少しぎこちない星野と高橋との出会いである。


そんな入学式の日を終えて数日経った日のこと。

星野は高橋と一緒にサークルの勧誘の嵐の中を歩いていた。

「何に入るか決めたの?」

高橋が星野に問いかける。

「俺は…」

星野が視線の先にあるブースに目を向けると、その視線を感じて高橋がそのブースに駆けていく。

その姿を見て星野も小走りに高橋を追いかける。


2人がブースに到着すると、そこに1人の女性がいた。

その女性は2人に気が付くと机の上にかけてある札を一瞥して言った。

「担当者の人は今席を外しているみたいですよ」

2人が札に目をやると、札にはその旨が記されている。

「君は新入生?」

高橋が先手を打ってその女性に聞いた。

「はい。私もこのサークルに入りたいなって」

その女性は緊張しているのか、少し声を震わせながら答える。

それとは対照的に、高橋は一気にその顔に嬉しさを表した。

「俺たちもなんだ! 俺は高橋でこっちは星野。よろしく!」


そのブースの看板には、”天文サークル”と書かれていた。


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