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ライノ先輩の様子がおかしい。

 それからエリック様が変わってしまった。

 ……うん。別に変わっていない。

 ただスヴィーのことが好きになってしまったのだ。

 朝の練習に行くと、スヴィーのことを聞かれて、命を救ってくれたお礼をしたいと言われた。


 エリック様は私の気持ちに気がついていると思っていた。

 でも全く気がついてなかったみたい。

 知っていて、こんな酷いことを頼むような人じゃないもの。

 本当は橋渡しなんて絶対したくない。だけど、私は嘘をつけないし、エリック様にはそんな子だと思われなくない。

 だから、スヴィーに聞いた。


「お礼なんていらないって答えてくれる?」

「なんで?」

「だって……、それじゃあ、私の代わりにメルヤが、」

「いやよ。そんなの。絶対行ってよね。エリック様が是非って言っていたから」

「メルヤ!」


 それ以上傍にいると酷いことを言いそうだったので、私はスヴィーから離れた。

 私は知っている。

 目を覚ましたスヴィーが傍にいたエリック様に対してどんな表情していたのか?

 彼女はエリック様を好きになり始めている。


 一目ぼれってあるんだから。

 私はエリック様に一目ぼれした。

 だから、二人もきっとそう……。


「メルヤ。険しい顔をしていますね。炎の魔術なんて誰にも使わないでくださいね」

「あたり前です。私もそれくらいの分別はありますから!」

 

 こんな状態でライノ先輩には絶対に会いたくなかったので、避けていたのにばったり出会ってしまう。予想通り嫌な事を言われた。

 泣きそうになりながら答えるとなぜがぎゅっと抱きしめられた。


「ライノ先輩?」

「辛い時は泣きなさい。そうじゃないと気持ちは晴れませんよ」


 彼らしくない言葉。

 優しい抱擁。温もり。私は声を押し殺して彼の胸で泣いてしまった。

 

「す、すみませんでした!あの、その服は私が洗いますから!」

 

 どれくらい泣いていたかわからないけど、やっと涙が止まって、気がつくと、ライノ先輩の服が……鼻水と涙でぐちゃぐちゃになっていた。


「ふうん。洗ってくれますか?それじゃあ、私の部屋に来てください」

「え!?」

「何を驚いているのですか?ここで服は脱げないし、換えも無いので裸になるわけにはいかないでしょう?」

「は、そうですね」


 そういえば、そうだ。けれどもライノ先輩の部屋って……。

 っていうか私意識してる?ライノ先輩はそんな対象じゃないし、私はエリック様のことが好きなんだから!

 心の中で自問しつつライノ先輩の案内で歩いていると、魔術師団宿舎の男性寮へ辿り着いた。


「ここで待っていてください」

「え?」

「部屋まで着いて来たいですか?まあ、あなたがどうしてもというなら、許可を取って案内しますけど?」

 

 いつも無表情なのに、何やら意地悪そうに笑われて、いつもよりイラっとする。


「そんなことありません。ここで待ってますから」

「そうですか。残念ですね。それでは着替えてきます。喧嘩などせず大人しく待っていてくださいね」

「しませんよ!」

 

 私を何だと思っているの!?

 怒鳴り返すと、またまたライノ先輩が笑う。

 今度は意地悪そうじゃなくて、見惚れそうになった。

 これは、ライノ先輩。顔だけがいい、ライノ先輩。油断したら駄目!

 慌てて顔を引き締めて、先輩を見送った。



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