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エリック様、もしかして?

 魔術学校で馬の乗り方も習うので、私とスヴィー……そしてライノ先輩はそれぞれ馬に……の予定なのだけど、なぜか私はライノ先輩の後ろに乗せられている。しかも、スヴィーはエリック様と相乗り。

 悔しくてスヴィーを睨んでしまったら、もの凄い悲しい顔をされてしまって、罪悪感で凹んでしまった。

 スヴィーだって、好きで相乗りしているわけじゃないのに。

 なんで、ライノ先輩はこんな提案をしたんだろう、信じられない。

 逆だったら物凄く感謝できたけど、なんで私がライノ先輩と!


「現場で十分に力を発揮してもらう必要がありますから。あなたをエリックの後ろか前に乗せたら、惚けてしまって使い者にならなくなるでしょう?」

  

 ライノ先輩はまるで私の心の声が分かっているように私に説明する。

 口調がいつもよりとげが無くて、距離が近いものだから、なんだかドキドキしてしまった。

 さすが見た目だけはいい、ライノ先輩だ。

 ちなみにライノ先輩も貴族の一員で伯爵子息だそうだ。だけどスヴィーと同じで貴族らしくない。平民の私には小言はいうけど、意地悪からではないことはわかってる。

 ライノ先輩が掴まってというから、仕方なくその腰に手を回しながら、先輩の背中越しにエリック様とスヴィーへ目を向ける。私より小柄なスヴィーを後ろに乗せると落ちると思ってから、彼女はエリック様の前に座っていた。 

 すっぽりを包まれて、後ろからみるとスヴィーの姿がまったく見えないくらいだ。

 羨ましい。

 私もあんな風に……。


「飛ばしますよ。舌をかまない様に口を閉じて」


 妄想にふけりそうになっていたら、ライノ先輩の声が落ちてきて、急に速度があがった。それは隊全体の動きで、私とスヴィーの馬捌きでは付いていけない速さだった。

 巨大オオカミが潜んでいる場所近くにあっという間についたけど、もう気持ち悪くてそれどころじゃなかった。

 なんていうか、すみません。

 それはスヴィーも一緒で、二人で馬から降りてへなへなと木陰で休んでしまう。

 おかげで、スヴィーに対しても妬みとかそんな感情が起きる間もなかったけど、これは辛い。


「昼飯食ったら、森に入る予定だ。お前のところの二人、大丈夫か?」

「そうですね……」


 エリック様とライノ先輩がそんな会話をするのが聞こえてきて、私はすくっと立ち上がった。


「大丈夫です!いけます!」

「……スヴィー……。あなたは?」

「いけます。大丈夫です」


 スヴィーも立ち上がって答えて、森に入るのは昼食後になった。

 私はその時スヴィーのことなんて考えてなかった。

 そして、これがきっかけが私の初恋が終わることになるなんて、予想もしていなかった。



「人の気配がすれば向こうから近づいてくるはずだ」


 私たちは分隊に別れることなく、森の中を歩いた。 

 誰もが前方から来るものだと予想していた。そんなこと誰も知らないのに。

 魔物にとってそんなことどうでもいいことなのに。


「隊長!」


 後方から声が上がり、唸り声が聞こえる。


「エリック様!」


 前方付近を歩いていた私は反射的に走り出した。

 

「メルヤ!」


 ライノ先輩の声が聞こえたけど、私はただエリック様を目指した。


「雷よ!その力を見せたまえ!」


 普段では考えれないような大声でスヴィーの暗唱が聞こえ、雷の音がしたかと思うと周りが真っ白になった。

 視界がよくわからないのに、私は走り続け、とうとう転んでしまう。


「メルヤ!」

 

 手を差し伸べてくれたのはライノ先輩で、素直に手を取ると立ち上がる。

 半分ほど黒焦げにされた巨大オオカミは完全に怒り狂っていて、暴れまくっていた。

 傷を負ったエリック様。だけど果敢に戦っていた。その傍で倒れているのはスヴィーだ。多分なれない攻撃魔法で魔力を全て失って気を失っているのだろう。

 エリック様はオオカミから彼女を守るように戦っていた。


 そんな場面じゃないのに、私は思わず歯軋りをしてしまった。


「メルヤ!」

「わかっています。オオカミに止めを刺します!」


 得意の炎の魔術を見せるか迷ったけれど、周りを巻き込んでしまうかもしれない。

 なのでスヴィーが使った雷の魔術を使う。


「雷よ!裁きを下したまえ!」


 スヴィーよりも数段威力がました雷がオオカミへ直撃する。一瞬だけ震えた魔物は動かなくなり、ゆっくりと地面に倒れた。


「さすがだな。メルヤ」


 ライノ先輩から珍しい褒め言葉を貰う。

 第三部隊の騎士達から歓声もあがったけど、エリック様は周りの何も見えていないように、ただ心配そうに小さなスヴィーを見つめていた。

 


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