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なんでこんなことに……。

 ――エリックとデートですか?それではその後は私とデートですね。


 スヴィーが戻ってきたと思ったら、ライノ先輩からだとそんな伝言を持っていた。


「……もてるって辛いわね」


 苦笑しながらそういわれたけど、それは違うと思う。

 三日後、私とエリック様はデートすることになった。午後はライノ先輩とのデート。翌日なんて陰口を叩かれるか、恐ろしいことだ。


「ライノ先輩がこんな手を打つなんて思わなかったわ」

「うん」

「それだけ好かれているってことね」


 スヴィーはうきうきとしていっているけど、複雑な心境すぎてもうどう返していいかわからない。

 なぜスヴィーも一緒にいるかというと、ライノ先輩が待っている間暇だからその付き添いをするそうだ。午後からはエリック様とスヴィーがデートするそうだ。

 ……もう、私は口を挟めない。

 でも、エリック様と二人でデートなんて初めてだから少し楽しみもある。

 あの時助けてもらって心が動いたのは本当だった。

 最近はライノ先輩のせいで、心が落ち着かないけど。

 私はあれは恋だと思っているから。


「その服、やはり似合ってますね」


 待ち合わせ場所にいたのはエリック様とライノ先輩。私を見ると目を細め、嬉しそうだ。

 ……魅了の魔術が発動している。

 そう思うくらい胸がどきどきして、目を逸らしてしまった。


「それではいってらっしゃい」

「一刻後はここに戻ってくるんですよ」


 スヴィーとライノ先輩に見送られ、デートが始まる。


「エリック様。なんだかすみません」

「そんなことないぞ。一度ちゃんと話したほうがいいと思っていたから」


 屋台が並んでいる通りをゆっくり歩きながら、私たちは話をする。


「君の気持ちは知っていた。それなのに、スヴィーのことばかり聞いて悪かったな」

「知っていたんですね!」


 恥ずかしい気持ちより怒りが先に走り、思わず立ち止まってしまった。


「……悪かった。だが、ライノの気持ちも知っていたからな。それに君は、俺の事を憧れとしか捉えてないだろう」

「憧れ?」

「憧れと恋は違う。俺は、スヴィーがライノと一緒にいて楽しそうに話していると想像するだけで気持ちが苛立ってくる。君はどうだ?俺はスヴィーとデートしてると知って、どう思った?」

「心配したり、気にはなりました。でも苛立った気持ちはなかったような……」

「それは君が俺のことをそれほど好きじゃないってことだよ。えっと、異性としてな。好きであれば他の奴に渡したくない、独占したいって思うから」

「そうなんですね……」

 

 スヴィーが羨ましいと思った。でもイライラしたりはしなかった。

 私はエリック様を異性として好きじゃなかったってこと?


「ライノのことはどうだ?スヴィーと一緒にパンケーキを食べてるところを想像したら、どんな気持ちがする?」

「ライノ先輩はパンケーキがあんまり」

「そうだな。確かに。だったら、ライノが自分のパンケーキをスヴィーに食べさせていたら、どう思う」

「むかつきます!」

「正直だな」


 エリック様が苦笑して、私は口を押さえる。

 

「あの、パンケーキは私も食べたいから」

「言い訳は必要ないぞ。それが好きってことなんだ。きっと。午後からライノとデートだろう。その意味を考えながらデートしたらいいぞ」

「え……はい」


 そんな風に言われても。ライノ先輩……か。

 っていうか、エリック様を追っかけていた勘違いの私も恥ずかしいし。

 憧れと恋の違いがわからなかったなんて。


「まあ、若い頃はよくあることだ。憧れと恋を混同することは」


 エリック様もライノ先輩と同じで、私の心の中が読めるみたいだ。

 それを聞いたら、顔に出てるといわれたけど、どういう意味なんだろう。言葉なんて顔に出ないのに。


「早すぎる」

「早く終わりましたね」

 

 一刻というか、その半分くらいで待ち合わせ場所に戻った私たちに、スヴィーは驚いていて、ライノ先輩は無表情でよくわからなかった。


「それでは、私たちのデートを始めましょうか」

「ライノ先輩?だって午後からって」

「もうすぐ午後でしょう」


 ライノ先輩は私が席に座るよりも先に立って私の隣に立ち、エリック様は肩を竦めるとスヴィーの真向かいに座る。私の抵抗は無駄で、そのまま先輩とのデートが始まった。



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