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夢であるように何度も願ったよ(懇願)

 悲しいかな、それでも明日はやってくる。

 陰鬱とした気分で登校し、教室の扉を睨みつける。


 扉の前でこうするの、今月で三回目になるな。

 俺、別に不登校児とかじゃ無いし、学校生活に不満とかなかったんだけどなぁ。


 「どうしてこうなった……」


 思わず口に出る。

 恋人?関係になったというのに佐々木さんとはまともに会話も交わしていないし、昨日の件もある。

 今や俺にとって学校は悩みの種の温床でしかない。


 俺が一体何をしたんだ。ただ普通に、目立たず、平和に過ごしていただけなのに。

 そもそも告白からしておかしいだろ。俺のどこが良かったんだよ。

 筑波先輩の足元にも及ばない貧弱スペックだよ?

 

 まぁ言い出したらきりが無いし、恋なんてそういうもんだと佐久間も言っていた。

 世間では顔が年収がなんて言っているが、何をもって好きになるかなんて本人にすらわからない。

 そして好きになったら一直線。他の事など目に入らない、らしい。


 まったくもってわからない。

 好きとか、嫌いとか。


 「まぁ、なるようにしかならないか」


 さすがにあの三人も教室では接触してこないだろうし。

 このまま避け続ければ自然消滅して円満解決となるだろう。

 

 あまりにも安直な考えだが、そうでもないとやってられない。


 本当に、どうして、こうなった!


 観念して扉を開く。


 いつもと変わらない、朝礼前の喧噪。

 その最中、俺は不覚にも三人の姿を確認してしまった。

 避け続けると言った直後にこれなのだから、俺と言う奴は本当にどうしようもない。


 そして目がバッチリと合う。

 佐々木さんと、ではなく大宮さんと。


 まずい、と思った。

 何がまずいのか、それはわからない。

 けれど俺は確かにそれが致命的な失敗だと感じたのだ。


 その理由はすぐにわかった。


 「アンタ、昨日はどういうつもり?」


 ズンズンと音が鳴りそうな勢いで近づいて来たかと思えば、あろうことか俺の制服に隠れるネクタイをご丁寧に引っ張り出してそう(のたま)ったのだ。

 当然、そんな事をすれば注目の的。


 何事かと教室中の視線は俺達へと注がれる。

 

 え、なになになに。何が起こってんの?なんで俺こんなことになってんの?

 ていうか苦しい、漫画とかでよくあるシチュだけどこれリアルにやられると結構苦しい!


 「ちょ、ちょっとミヤちゃん」


 「宮子、乙女としてもう少しお淑やかさを持った方がいいよ」


 遅れて佐々木さんと小南さんがやってくる。


 そこでやっとネクタイから大宮の手が離れた。


 「……チッ」


 あれ、今舌打ちした? すっげぇ不服そうな顔で舌打ちした?

 やだこの子、見た目に反して凄い怖い!


 ちなみにではあるが大宮の身長は恐らく160も無い。

 168と言う、決して高くない俺の鼻あたりに頭頂部があるので間違いないだろう。


 「舌打ちは良くないよ」


 そう窘める小南は大きい。色々と。

 多分180はある。あと多分D以上は確実。

 大宮はBあるか無いかだろう。

 佐々木さんはCくらいかな? 身長は俺とそう変わらない。


 って女子の目測身体測定をしている場合じゃない!


 「あの、ごめんねミヤちゃんが」


 「いや、俺も悪い事したし」


 もう逃げられるような状況でも無いし、俺に注目が集まりすぎている。

 避け続けて自然消滅というプランは早々に終わりを告げたのだ。


 切り替えろ、プランAがダメならプランBだ。


 「朝礼始めるぞー。そこ、突っ立ってないで座れー」


 ちょうどいいタイミング。

 とりあえずこの場はこれで有耶無耶に。


 「お昼、時間良いかな?」


 ならなかった。

 うん、知ってたよ。もうどうしようもなく詰んでたって事は。

 ただ認めたくなかっただけなんだ! ハハッ!


 「わかった」


 投了するしかない俺にはそう返事するしか無い。もう諦めるしかなかった。


 え? プランBは何だったのかって?


 端からねぇよ、そんなもん!

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