ご覧の作品は【俺の彼女(以下略)】でお間違いありません
「くそっ」
幾刃もの剣閃が嬲るようにして身体のあちこちを傷つける。
どれも致命傷にはならない程度。
けれどそれは俺が避けているからでは無く――
「友が殺され、窮地に立たされそれでも尚、本気が出せぬか?」
こいつが、山吹一切が遊んでいるだけ。
あの弥太郎と共闘して尚、苦戦を強いられた相手にオレ一人で敵うのか。
そもそも挑んだことが間違いだったのではないか。
疑念、後悔、焦り。
様々な感情が渦巻いてまともな判断ができない。
「……まさか本気を出してこの程度なのか」
「ッ!」
静かに、しかしはっきりと山吹は殺気を放つ。
先程までと違い、明らかな殺意が刃に籠もった。
「ぐあっ」
「期待外れだ、異邦の戦士よ。友の後を追うがいい」
振るわれた刃の切っ先が腹部を抉る。
一瞬下がるのが遅れていたらオレの胴体と下半身は断たれていたことだろう。
そして。
「一刃決殺!」
悟る。
この一太刀でオレは死ぬ。
受けること叶わず、避けることもままならず、オレは切り伏せられる。
せめて一太刀、弥太郎の敵をと勇んだが、やはりそれも叶わなかった。
死の瞬間、緩やかになった時間の中、オレは弥太郎へと視線を動かし――
「こ、こだぁあああああ!」
「なっ!?」
――死体が消えている事に気がついた。
「弥太郎!?」
「影、借りたぜ!」
影渡。その名の通り影から影へ移動できる能力。
「まさかこの時を狙ってずっと使わず隠してたのか?」
「奥の手ってのは最後までとっとくもんだからな」
得意げにそう言った弥太郎だが、傷はやはり深いようで足元がおぼつかない。
「これは、一本取られたな」
大業の折、その懐へ飛び込んできた弥太郎に反応しきれず腹部を貫かれた山吹は、それでも笑っていた。
初めての有効打。これを活かせなければ今度こそオレ達は終わり。
「では仕切り直して」
山吹は流れ出る血を気にすることもなく構え直し。
「死合おうか」
そう微笑んだ。
「やっぱり弥太郎生きてたか」
こういう悪友というか、ライバルキャラってのは死にそうで死なないのが王道だよな。
王道展開、正直大好物です。
でもここで引きってのは鬼畜すぎない? 続きめっちゃ気になるんだけど?
まさかレイニー止めなんてこと無いよね? 出るよね次巻。
「いい加減、現実逃避から帰ってこいよ」
「……やめろ、今余韻に浸ってるんだから。厳しい現実を思い出させるな」
今日も今日とて場所は佐久間家。
あの衝撃的な出来事について相談するべく来たのだが、話を聞いた佐久間は一言。
「あぁ、やっぱりか」
と言って笑った。
いや笑うところじゃないよ? もう本当に頭真っ白になったからな?
そんな『まさか』なんて想定しても居なかったわ!
そしてあまりにも厳しい現実に、オレは読みかけだった小説を開いたのだ。
……いっそ全部夢だったりしねぇかな。