【大宮宮子による観察、あるいはその心証】
これまでの観察、もとい交流の結果は良くも悪くも普通だった。
容姿はまぁ、悪くは無い。太すぎず細すぎず。顔もそこそこ整っている方だろう。
内面についてはまだわからない所も多いが、同年代の中では比較的、いやかなり落ち着いている。
口数も少なく、私としては好印象。
時偶よくわからない事を呟いたりするのにはイラっとするけど。
集まって昼食をとる様になってから、時折困ったような表情を見せるが真意は不明。
同じクラスの男子達が彼に向ける視線とは無関係だと思いたい。
総評、大変良い。
そもそも、彼の私達三人に向ける視線がその他男子達とは毛色が違うのが大きかった。
私達は知っている。
アレは【異物】を見る目だ。
ただ、少し違う。
嫌悪感が感じられない。
あれはそう、関係の無い、関りが無い物を見る目だ。
だからだろう。
あの目で見られることに対する忌避感が無いのは。
恐らくだが、彼は私たちに関心を持っていない。
いや、私達に限らず自分を含むすべてに興味がない。
口調、表情こそ変化しているが感情の揺らぎが感じられない。
一般的に言えば気味が悪いかもしれない。
それこそ何を考えているかわからない相手など不気味極まりない。
けれど、そのあり様は私達からすればとても心地よかった。
彼の周りは、いつも静かだから。
だからこそ、驚いた。
妹の話をしている時の彼は、普段からは考えられない程に感情豊かだった。
普段どれだけ私が小馬鹿にした態度をとっても。
佐紀との関係が勘違いだと知らされて落胆も驚愕も怒りもしない。
そんな彼にも。
心を動かすに足る、大切な存在が居るのだと。
安堵した、私自身に。
理由はわからない。
だけど確かに、普段からは考えられない程騒がしい彼に私はほっとした。
彼にはまだある。
心を動かす理由が。
その事が、何故かとても嬉しかった。