告白と独白って似てると言えないことも無く無くない?
夕暮れの教室、二人の男女。
男はこの俺、鈴木次郎。
ちなみに偽名じゃない、本名だ。
しかもまさかの一人っ子。
自己紹介では「へぇー次男なんだー」で始まり「え、一人っ子? なのに次郎?」で終わる。
なんだよ、いいだろ別に。次男じゃないと名乗っちゃいけないのかよ次郎。
っと話が逸れた。
改めて、向かい合った女子。
名前は佐々木佐紀。俺のクラスメート。
明るく可愛く元気のいい女の子。
男女共に人気がある、所謂カースト上位の女子。
クラスの男子約八割が狙っていると断言できる。
その佐々木さんに俺は呼び出された。
理由はわかってる。
え?そんなの誰でもわかるって?
うんうん、そうだよな。
このシチュエーションにこの空気。
どこぞの鈍感系主人公でも無ければ嫌でも察する。
かく言う俺も、呼び出されてからは緊張と焦りで何度かトイレへ走ったほどだ。
なんで、どうして? が頭の中でぐるぐると渦巻いていた。
正直、心当たりは全くない。なのに何で俺が――
「鈴木君、来てくれてありがとう」
あ、ちょっと待って、今モノローグの最中だから!
現実逃避のセルフモノローグの真っ最中だから!
そんな心の叫びは届かず、彼女は続ける。
仕方ないね、心の中だからね!
「なんで呼んだか、わかっちゃう、よね」
「あ、え、まぁ、うん」
いやドモリすぎクソワロタ。
句読点のオンパレードじゃないっすか。
引くわーマジ引くわー。
混乱と緊張で脳内はもはやパレード状態。
思考回路はショート寸前ですよ。
「だよね、でも、ちゃんと言うね」
「す、すとっぷ」
「え、ど、どうしたの」
それでも今はこの場を凌がなければならない。
俺は何とかそれっぽい言葉で打破を試みる。
「なんで、俺なの?」
「……えっと」
彼女は言葉に詰まり、俯いてしまう。
けれど彼女は俯きながらも話し始める。
特に何か特別な出来事があった訳では無い事。
むしろ最初の頃は存在にさえ気づいていなかったこと。
なのに何故か気づけば目で追うようになっていた事。
そして今では――
「そんな感じ、です」
「そ、そうなんだ……」
あ、甘ずっぺー!
なんだそれラブコメかよ!青春かよ!アオハルなのかよ!
俺も一度でいいからそんな経験してみたい!
「なんか、普通に言うより恥ずかしかったかも」
「あえ?」
あ、いやこれ俺だ。俺の話だ。
絶賛俺が今アオハル中だったわ。
というか途中酷いの混じってなかった?
いやだがまだだ!まだ決定的なセリフは言われていない!
ここで巻き返しを図るしか――
「鈴木君、好きです。私と付き合ってください!」
「あ、うん」
あ、うん、じゃねぇえええええ!
完璧に不意打ちだったわ!
何今の隙狙い打ち。
隙を好きで狙い撃ちってか!
我ながらギャグセンス皆無だな!
「……嬉しい」
そう言って、佐々木さんの頬を涙が伝う。
やばいふざけてる場合じゃない、ちゃんと言わないと。
間違えました付き合えないですって言わないと。
「いや、あの」
「私、鈴木君の彼女なんだね」
そして満面の笑み。
……いや無理だろ。言えねーよ。
この笑顔に言うの?思わず返事しちゃいましたーって?
その鋼メンタルくれよ、言い値で買うよ。
「これからよろしくね、鈴木君!」
「……うん、よろしく」
さよなら、平穏。
さらば静謐。
明日から俺は多くの男子から殺意のこもった眼で睨まれることになるだろう。
いっそ開き直るしかないな。
皆、聞いてくれよ。
この子、俺の彼女なんすよ。