虚空の世界
金髪の美少女はこちらを向き、ニコッとしながら言った。
「じゃあ、何から話そっか?」
俺は少し混乱した頭の中で出てきた疑問を口にした
「お前は何者なんだ?」
「私は今の日本から約10万年前の日本で生まれた普通の人間。空白の10万年って聞いたことある?」
「そういえば先週、哲が話していたな。確か魔法とか魔物が存在するっていう…も、もしかして」
「そう、それが私の生まれた時代。私はその時代でね、勇者様と一緒に魔王を倒そうとしていたの。
それであと一歩ってところまで魔王を追い詰めたんだけど…その時、魔王が『転生』っていう魔法を発動させて、その転生で近くにいた勇者様まで影響を受けて一緒に転生しちゃったの。だから私とその仲間達は魔王と勇者様を追いかけてこの時代に来たんだけど…」
「その二人がどこにいるのかわからないってことだな」
「そう。」
「なるほど。そこは理解した。」
この言葉を聞いて、彼女が少し嬉しそうにした
「だが、どうして俺にそのことを話したんだ?話す理由がないだろう?」
「それは、あなたの魔力が高かったから。魔力というものは基本、だれにでもあるものなんだけど この時代に来て、一番魔力が高い人に協力をお願いしようと思っていたの」
「ってことはもしかして、お前がこの学校に来たのも…」
「そう、あなたに協力してもらうため。」
「でも俺なんか使い物になんねぇと思うぞ。武道をやったことも、もちろん実戦を経験したこともない。てか、お前以外にも勇者の後を追ってこの時代に来てる奴らがいるんだろ?」
考えてみれば俺なんか必要ないのではないか?と、思い聞いた。そしたら意外な答えが返ってきた
「別に戦ってもらおうとかは思ってないよ。ちょっと手伝ってもらえればそれで。それと、さっきも言ったけど勇者だけじゃなくて魔王もこの時代に転生してるはずなのよ。その魔王が万一記憶を取り戻して復活でもされたら……それに勇者様の後を追って来れたのも極わずかで百人くらいしかいないんだよね。時間を移動するのは魔力が高くないとできないから」
「そうなのか!?…ってことは、お前ってめちゃくちゃ魔力高いのか?」
「まぁ、私がいた時代の人間の中では勇者様の次に魔力が高かったよ。」
「勇者の強さはどのくらいだったんだ?」
「えーっとね…私が10000だとしたら50000くらいかな、ちなみに魔王は50500くらいでこの時代の人の平均は0.5くらいで光流技君は3.2くらいだよ」
・・・微妙、超微妙!
「そういえば聞いてなかったけど、ここどこだ?」
「ここは、異空間だよ。世界のどことも繋がっていない、転移の魔法でしか行けない場所。ここの中では時間の流れが外の世界と違うからゆっくりしたい時によく来てたよ。この異空間は数え切れないほどあるし、空間に鍵をかけることもできるから他の人が入ってくる心配もいらないから、とても便利なんだよね」
「なっ!?」
この事実にはとても驚いた。まさかこの空間が俺がずっと前からアニメや漫画とかを見て憧れていた『中の時間と外の時間が違う』というやつだとは思っていなかったのだ
「ちょっ!どうして泣いてるの!どこか痛いの?大丈夫?」
あまりにも感動して俺は泣いてしまっていたらしい
「いや、大丈夫だ。ちょっと感動してな。続けてくれ。」
「う、うん…それでね、勇者様の生まれ変わりを探すから、これから色々大変なことがたくさんあるかもしれないけど、協力してくれない?」
「……もし、断ったら?」
「その場合はここで話したこと全て忘れてもらってこれまで通りの生活に戻ってもらうだけだよ。」
俺なんかでいいのか。俺は、ちゃんとやれるだろうか、しかし、俺がもし断ってしまえば彼女はまた次の協力者を探しまわるだろう。きっと協力してくれる人はそんなに簡単には見つからない。最悪の場合見つからないまま魔王が記憶を取り戻してしまうこともあるかもしれない。そうなると地球は…いや、俺の周りの大切な人達は、どうなるんだろう。哲や美里や春菜たちみたいな大切な人を失ってしまうかもしれない。そんなのは…嫌だ!
「やるよ。……俺、勇者の生まれ変わりを必ず…必ず見つけてやるよ」
俺は勇者を探すのを強く決心した。
「ほんと!!やったー!!ありがとう!」
そういい、彼女は『テレポート』を使い、彼女と俺は元の世界に戻った
……もし、この時俺が断っていたら未来は変わっていたのだろうか。少し後の話になるが、俺はこの決断に深く後悔することとなった。