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Dear my brother

作者: 戦艦「大和」

【概要】

推奨人数:2~3

時間:2~4時間

舞台:現代クローズド

推奨技能:目星


【導入】

 探索者たちは何らかが原因で病院に行き帰宅した。夜が更けると、襲い来る睡眠欲に抵抗できず深い眠りに就くことだろう。


【登場人物】

寿小唄(ことぶきこうた)

見た目高校生くらいの少女。弟を探している。

APP14 SIZ10 STR10


寿響(ことぶきひびき)

故人。真面目そうな顔つきをした少年。

APP13 SIZ12 STR11


・謎の少年

ニャル。中学生のような体格。リハビリ室にいる。

APP20 SIZ13 STR10


【病室】

目を覚ますと、探索者たちは病院のベットらしき家具の上で横になっていた。白を基調とした部屋は、正方形で窓のない造りになっており、ベットは(探索者数+1)個ある。扉は木製の簡素なものが一つだけついており、少なくとも、こちら側から鍵をかけることはできないみたいだ。よく分からないところに飛ばされた探索者たちは0/1d3のSANチェック。


【待合室】

 扉を開けると、診療所の待合室のような空間に一人の少女が俯き気味に座っていた。扉が開いた音が聞こえたのか、彼女はこちらへと目線を向ける。

「失礼ですが、貴方方弟を知りませんか」

 と彼女は突然に聞いてくる。が、はっと我に帰り非礼を詫びた。

「あ、突然すみません。私、寿小唄と申します。弟の行方を捜しているのですが、ご存じありませんか」

 と、ペンダントの中にしまってあった写真を見せる。勿論、心当たりなどない。

「そうですか……何か情報が入ったら教えていただけると助かります」

 彼女はまたうつむき気味に座り込んだ。その表情には生気がない。生命活動が静止しているかのようだ。(最初以外はこちらから話しかけない限り話しかけてこない)


 彼女との会話が終わった探索者たちは周りに目を向けることだろう。待合室には、今自分たちが入ってきた扉を含めて5つ扉があり、二つを除いて錠前がかかっている。いずれも木製の扉で、それぞれ「病室」、「診察室」、「手術室」、「霊安室」、「リハビリ室」の文字がある。探索者たちは「病室」から出てきたところだ。


彼女との会話

・弟の趣味「脱出ゲーム」

・いつからここにいるのか「分からない。気づいたらここにいた」

・探さないのか「こことその扉以外にどこを探せというの?」

 (心理学成功「嘘を言っている様子はない」(彼女には「病室以外の扉」は見えません」))


 彼女はニャルのいたずらにより生死を彷徨っている存在なので、ロビーと病室にしか行けません。


 彼女は何も知らないため、何も答えられない。


【診察室】


診察室に入ると、パソコンが机の上に置かれており、本棚には医学書と思しきものが所狭しと並んでいる。


・パソコン

 画面にはパスワードを入力してくださいと映っている。


・机

 「藪医者だーれだ」と書かれた紙が落ちている。


・本棚(図書館ロール)

 本をあさっているとカルテらしき数枚の紙が落ちる。カルテを拾い上げると、4人の情報がいくつか記入されている。

 0106 北 冬樹 死因 脳卒中 初診 遺伝の影響なし 

 0412 東 春美 死因 心臓癌  初診 遺伝の影響なし 転移ではない

 0721 南 夏奈 死因 心筋梗塞 初診 遺伝の影響なし

 1030 西 秋人 死因 一酸化中毒 初診 自殺


 図書館をもう一度振りそうにない場合は目星で裏面に本棚を調べよう誘導しよう。(アイデアとか)


さらに本棚図書館

・脳卒中

 脳の急激な血液循環障害で急に意識を失って倒れ、運動障害を引き起こす。


・心臓癌

 一般的に心臓では癌が発生しない。これは心臓の筋肉がほとんど細胞分裂しないためである。


・心筋梗塞

 心臓の筋肉細胞に酸素や栄養を届けている冠動脈が詰まって血液の流量が下がることで心筋が壊死する。


・一酸化中毒

 石油ストーブや練炭などが不完全燃焼したときに発生する一酸化炭素がヘモグロビンと結びつくことで、血中の一酸化炭素濃度が上昇し中毒症状を起こす。


 パソコンに0412を入力すると、複数の機械音と共にホームシアターで使うようなスクリーンが部屋の隅に降りてくる。

 スクリーンが一瞬明滅した後、やや色あせた映像が流れ始めた。

その映像は仲のいい姉弟が、一緒に出掛けて買い物をし帰ってくるというありふれたものだった。もうすぐ自宅というところで映像は終わった。

アイデアで少女が小唄に似ていることが分かる。


 映像が終わると、スクリーンがガチャリと音を立てて、元に戻る。完全にスクリーンが収納された後、錆びた鍵が落ちてくる。


【手術室】

 扉を開けると、うっすらと薬品の香りがする。そして手術衣を着たマネキンが、手術台と思しき台を囲んでいる。台の上にもマネキンが寝かされている。手術台の奥には、机の上に置かれたパソコンがある。


・患者マネキン

 首から下は人体模型のようになっている。心なしか動き出しそうに感じる。


・パソコン

 以下の症状を適切に手術せよ。

 「611226ん」

 パソコンには体の部位の画像が出ており、マウスでクリックすれば機械が勝手にやってくれるようだ。


・目星

 たわし、ガラケー、ポケットティッシュが見つかる。(たわし、ポケットティッシュは外れ)


・パソコンで肺以外をクリックしたとき

 機械がメスを入れると同時に赤い液体が吹き上がる。しばらくすると機械は止まるが異様な鉄臭さに探索者たちは鼻を抑えるだろう。考えなくてもわかる、これは血の匂いだ。いったいなぜマネキンから血が噴き出たのだろうか。静寂と血の匂いでむせ返りそうな探索者たちはSANチェック1/1d3。


 答え出てるのに悩んでいる場合は時間制限で対応するなど適当に促してあげると良いかもしれない。


・肺をクリックした場合


 全ての作業が終了すると、パソコンに映像が流れ始める。どうやら診察室の映像の続きのようだ。

 帰宅中の二人が横断歩道を渡るシーンからだ。信号が青になり、渡ろうとする二人にトラックが突っ込んでくる。どうやら居眠り運転のようだ。弟はとっさに姉をかばった。そのおかげか姉は一命を取り留めた。しかし、弟は帰らぬ人となった。医師たちはこの事実を彼女に伝えるべきか迷い、伝えることにした。医師たちがその事実を伝えようとするところで映像は終了した。今度ははっきりとわかる。この姉は小唄そっくりであることを。


 映像が終わると同時に、鍵が天井から落ちてくる。


【霊安室】


 中を開けると、生暖かい空気に満ちている。レンガの壁に囲まれたこの部屋には6つの棺桶が並べられており、それぞれの棺桶の上には西洋人形が置いてある。部屋の中央にはナイフと紙が2枚落ちているのが見える。棺桶は開けられそうにない。


・紙(1枚目)

 ここには私を含め、5人の人間がいる。私を除く4人は殺人の容疑がかかっている。この中で、一人だけ嘘を言っており、その者が犯人だ。

A「私は犯人ではない」

B「Aは本当のことを言っている」

C「B、Dは犯人ではない」

D「CもBも本当のことを言っている」


・紙(2枚目)

 このナイフで嘘つきを殺せ。


・西洋人形

 4体にはA~Dの文字があり、残り2つには何も書かれてない。片方はスーツを着ており、もう片方は医者だ。


・医者の西洋人形

 紙を持っている(3枚目)

 時に思い込みは、現実すらも歪めて見える。さて彼はどうするのだろうか。


 スーツの西洋人形を切り裂くと、中からペンダントが出てくる。寿のつけているものに似ている。


・間違えた場合


 君は西洋人形をナイフで切り裂いた。その感触は柔らかく、人形というには違和感を覚えた。ナイフを刺して幾ばくもなく、周囲の明かりが消える。そして、鳴き声と共に周囲の壁に蛍光色で書かれた文字が見え始めた。


「ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ。ユルサナイ」

 そして、ナイフで切り裂いた探索者は見てしまうだろう。狂気的な笑みを浮かべた人形の顔を。


 数秒の後、明かりがつく。西洋人形の表情は元に戻っている、が心なしかその表情は泣いているようにも見えた。SANチェック1/1d4。


 外に出ると、リハビリ室の錠前が消えている。


【リハビリ室】

 扉を開けると、真っ白な空間が続き、部屋の真ん中には一人の少年がロッキングチェアに座って壁に掛けられたモニターを見ている。奥には木製の扉がある。探索者たちが入ってきたことに気が付くと、少年はモニターの電源を消して立ち上がり、探索者に話しかけてくる。

「おや、意外と早かったね。ああ、僕はここの管理人みたいなものさ」

 その少年は浮世離れした端正な顔立ちをしていた。病的に白く華奢な肌、やや幼げながらも張り付けられた笑顔には神々しさを覚え、本能が直視することを避けている。瞳の奥は底知れぬ闇が覗いているように感じた。

 なおも少年は話を続ける。

「さて、君たちはペンダントを見つけたみたいだね。それを彼女に渡せば、彼女はきっと生きて弟に会えるさ。渡したくなければ、そこの扉から、空蝉に帰ればいいさ」

 それだけ言うと、少年はまたロッキングチェアに座り直した。

 彼が話しかけてくる様子はもうない。


 部屋の隅には新聞が落ちている。1か月前の日付だ。居眠り運転の事故が表紙になっている。被害者の名前は寿響と小唄、響は死亡、小唄は意識不明の重体。


・彼の正体についてしつこく聞いた場合

「おや、僕に興味があるのかい?しょうがないなあ」

 不敵な笑みを浮かべた少年の姿が歪む。端正だった顔立ちは闇に溶け、白磁の如き艶やかな肌は張り裂け、体が膨張する。幾ばくの時を経て、体の膨張が止まった。しかし、そこにいたのは幼げな少年ではなく貌の無い漆黒の怪物であった。

「これが僕の姿の一つだよ。お楽しみいただけたかな?」

 無貌の怪物から少年の声が聞こえる。そして少しの間くすくすと笑った後、元の少年の姿へと戻った。

 人が化け物に変わる瞬間を目撃してしまった探索者は1d6/1d20のSANチェック。



【エンディング】


【小唄に真相を伝える】

 小唄が記憶を全部取り戻し、忘れていた忌まわしき事実を思い出す。なけなしの正気をわずかに残っていた理性をたった一つの事実が容赦なくむさぼる。彼女の顔はたちまち深い絶望を湛え、奇声を発しながら意識を失う。探索者たちも意識を失い、同時に現実世界に戻る。

 次の日に、寝たきりの少女が目を覚まし、病室から飛び降りて亡くなったというニュースが流れる。

アイデアに成功した探索者は、亡くなった少女が小唄ではないかと疑う。間接的に人を殺めてしまったかもしれない恐怖にSANチェック1/1d6。


【小唄に真相を伝えない】

 彼女にペンダントを渡さず扉を開けると、探索者たちは意識を失い、帰還の扉から現実世界に戻る。

もし、彼女の病院に行ったならば、寝たきりの彼女に会うことはできるだろう。

名前も容姿も同じ寝たきりの人間を目前にして、夢の中で出会った奇妙な体験が、真実を伝えなかった罪悪感が、疲弊したあなたの心を揺さぶる。SANチェック1/1d4。


【真相】

交通事故で小唄は意識不明、響は小唄を庇い即死だった。小唄の脳裏にあった響に会いたいという思いを、ニャルラトホテプが下卑た改造を施し、記憶を消したままこの空間に彼女の意識を閉じ込めた。そして、この空間に人を呼び寄せ、人間がどういう行動をするのか面白がっている。


【クリア報酬】

SAN回復 2d4


【あとがき】

改変等は自由に行ってください。


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― 新着の感想 ―
[一言] やはり、戦艦大和先生は天才だ。 まじで凄いの一言につきる。 てぃーあーるぴーじーは分からないがこの作品は凄い。 ん〰️続編が楽しみだなぁ!
[一言] 久々の新作ですね! TRPGはよく知りませんが面白かったです! また先生の短編が読みたいです! これからも頑張ってください!
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