父との面会
父親が来ているという呉服屋に帰る途中に色々と話を聞くことができた。
それはそれはどれだけ父親が素晴らしい人物かということを聞かされた。
凄く熱心なキリシタンであり、日本人の模倣になる人間だとか、三好家が反乱を起こした時には助けてくれた、などなど偉大であるといった感じで話すのだった。
正直ここまで熱がこもった話し方をされると若干引いてしまうのだな……
でも自分という記憶の中では赤の他人だが、父親についての話を聞くと少しこそばゆい。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、目的地に帰ってきた。
「ただ今戻ってきました」
やはりいくら自分の住んでいる家だといっても違和感がある。
こちらにきて二日目だから当たり前なのだが……
「弥九郎、お疲れ様!疲れてるだろうが父親が来てるんだから話でもしてこい」
九郎右衛門は気を遣ってこういってくれた。
だが正直に言おう……面倒です!
早く休みたいんだけど!
どんだけ疲れたと思ってるんだよ……
そう思ってはいるが案内されるままついて行った。
「久しぶりだな、弥九郎!元気にしとったか?」
そこには海の男といった風の人間がいた。
確か薬種商って聞いてたんだけど聞き間違いだったかな?
「元気でしたよ。父上の方は変わられたことはありましたか?」
取り敢えず無難な質問をしておこう。
なんせ全くこの人について知らないからな!
「商売で最近は船に乗る機会が増えたな。ここだけの話大分儲かっとるわ」
話で聞いていた通りの商売上手らしい。
海を渡っての商売……自分もしてみたいものだ。
「そういえば父上がキリシタンになるきっかけって何だったんですか?」
特に気になるという訳ではないが、話を振った。
「きっかけといえば……頼まれたからザビエルを家で世話をしたときかな」
待って!ザビエルって言ったよね?
教科書にも載ってるほどの有名人なんだけど知り合いどころか家に泊めてたってあり得ないだろ!
これは普通に考えても凄いことだぞ!
「でも洗礼は受けたがそこまで信仰心がある訳ではないな」
いきなりもの凄いことを口走ったぞ。
フロイスから聞いてた話と違うぞ!
どこがキリシタンの模倣となる人物だよ!
「では何故キリシタンになったのですか?」
「それは儲かるからだ!西洋からの貿易ルートは独占状態だからぼろ儲けだぞ!」
あぁ……予想してはいたが人間としてクズだ!
商人なんてみんなそんなもんだろう。(偏見の塊だが)
商人とは銭にしか興味がないのだと実感した二日であった。