商人は危ない橋も渡るんですね
皆さんは戦国時代の悪人と言えば誰を思い浮かべますか?
松永久秀でしょうか?斎藤道三でしょうか?
私は断然、宇喜多直家が怖いですね。
怖い!凄く怖い!
家臣には優しいらしいけど暗殺が趣味と言わんばかりに人を殺してきた人だぞ!
そんな人に直接会うことになるなんて……
はぁ短い生涯だったな……
現実では死んでるはずなんだけどね。
本当に死を覚悟した方がいいかもしれないな。
茶会に呼ばれたら暗殺されるかもしれないと言われるくらいだし……
そんなことを考えている間に着いてしまったようだ。
「連れて参りました」
案内してくれた人が丁寧な口調で言った。
やっぱり引き返してもいいですか?
「入れ」
短いが威厳ある声がかえってきた。
周りを見ても逃げ道は……ないな!
覚悟を決めるか……
「失礼します。呉服商の魚屋でございます」
緊張のしすぎで自分の声が震えているのがわかる。
冷や汗が止まらないんだけど!
「よく来てくれたな。九郎右衛門から話は聞いておる。最近養子になった弥九郎とはお主のことだな?」
「左様でございます」
あれ?なんでこんな話し方をしてるんだろ?
こんな言葉遣い人生で一度も使ったことがないのに!
凄い!もしかしてこれが才能というやつなのか!
「早速だが九郎右衛門から何か渡されておらぬか?」
待ってましたこの質問!
というよりもこのためだけに使いに出されたと思うから、その問いがなければ困ってしまうところだった。
「はいこちらに」
そう言いながら自分は懐から軍用金を取り出した。
これ一度やってみたかったんだよな!
いかにも悪いことをしてるみたいでワクワクする。
「いつもすまないな。これにはいつも助かっておる」
商人からしてもこのお金により安全を確保されるからお互い良い関係だよね!
まぁ詳しくは知らないけど。
「今日はもう遅いし、泊まって行くが良かろう」
これはもしかして城で一泊していけということですかね?
もしかして寝首をかこうとしてらっしゃるのか?
意地でも帰らせてもらうぞ!
「そんな迷惑になりますし……呉服屋の皆も心配しますので」
これは名演技だろう!
怖いわ……自分の才能が怖いわ……
「そう言うな、九郎右衛門には早馬で伝えておくから」
あっこれは完全に詰みましたね。
明日、目が覚めることを祈るか……
そんなことを考えながらも夜は更けていくのであった。