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俺は世界樹になりました。  作者: 赤血球
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2話 いざ、異世界へっ!

「頼むからかかってきませんよーに!」




久しぶりの休日を迎えた俺は部屋の真ん中で携帯とにらめっこしていた。





本当は仕事が休みの日は週1日~2日あるはずなのだ。




しかーしっ!!




この1ヶ月、何故か俺は毎日会社に出向いているのに気づいた。




俺の要領の悪さとか、ミスったせいで出勤するのはしょうがないと思う。




でも、大半は上司からの急な出勤要請のせいなのだ。




サービス残業も多いし、上司の機嫌取りは疲れるし…もう転職しちゃおうかな。




いつもそう考えるが、最後は「俺が甘ったれなんだよな」という考えに至る。



そんなこんなで続けること、もう6年だ。






ーー♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~




不意になったよく聞く着信音。



もうなんとなく分かってたことだ。


俺はフラグ一級建築士なんだ!





「もしもし、齊藤です。…はい、すぐ行きます。失礼します」




すっかり開き直った俺は、クローゼットからワイシャツとスーツを取り出す。






「ーー$%<?!*^>&#x20AC;&#x2022;+=^%#!!!!」




そんな時、声が突如として聞こえた。



外から聞こえてきてるのか…?と思っていたらさらに音がなる。




明らかに俺の部屋、しかも俺の後ろから物音がしている。





「$%*=£>%<£+^&#x20AC;=%#$*=???」



「ーふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




俺が慌てていたら、不意に肩を叩かれてしまった。




「どうか命だけは命だけはぁぁぁ!」




俺は相手の姿を確認しないで、綺麗なDOGEZAをする。




「£^=*+!!........言葉、通じますか?」




知ってる言語が聞こえたからか、俺は顔を上げた。




だ、誰だこいつは………?




「あれ??この言語じゃないのかなぁ…私が言ってることわかりますか?」





急に顔を近づけてきたので、驚きながらも縦に首を振った。





「うっはぁぁぁ!やばやばやばっ!

私………つい来ちゃったぁぁぁ!!」





目の前に突如として現れた金髪の女。




いったい何が起こってるんだ…?





「あの…あなたは一体……」




俺がそう言うと彼女は自信に満ち溢れた顔で、自分の胸をポンと叩きながら言った。





「私はアグノルト・スーリよ。アグって呼んでね?えっと……」




「さ、齊藤……紅蓮だ」





やっぱりこの名前を名乗るのは恥ずかしい。


なんだか厨二病みたいなんだよな……





「グレンくんね!…じゃ、行くよっ!」





そう言った瞬間、シャツの襟を掴んで俺を引きずってきた。





「は、ちょちょちょ、待って!いきなり何なの!?ていうか、誰!?」




「だか、アグ…「名前じゃなくて!」





何とか彼女の手から逃れて、少し距離を取る。





「な、名前じゃなくて!なんで君はここにいるの?ここ、俺の部屋なんだけど…」





「あぁ、ごめんよ。説明しなきゃだね?


私はトーループトレインに乗って異世界から転移してきましたぁ!」





トーループトレイン…異世界…転移…。





「は、はぁ…えっと、家出娘とか面倒なんでちょっと」




「ノンノンノンっ!家出じゃなくて転移よ!て、ん、い!」




そう言った彼女は腰にぶら下げていたバッグからメガネのようなものを取り出した。




「はい、これかけて~??


今から、アグ先生が説明したげるから!」





それをかけると、俺の部屋の風景から見たことのない街に変わった。




「はい、こっち見てぇ~!」




声をした方を見ると、アグがいた。





「ここは【世界樹】の麓にある街、ユグドリアだよ。



私が住んでいる街で、沢山の人々が仲良く暮らしているの。



言語はユグドリア語で、私がさっき話してたやつね。



私はこの世界から、グレンの世界に来たんだよ」





ユグドリアの呼ばれた街には、沢山の人が歩いてるいた。



しかし、俺みたいな外見ではなく猫耳が生えていたり、手足がツタだったりしてる。




「じゃ、次はこちらぁ~!」





アグが指を鳴らすとまた風景が変わり、どこか近未来的な駅のようなところになった。




「こちらが先ほど話したトーループトレインです!


バードニマルやインセニマルの人以外の足として活用しておりま~す!」





「バードニマルとかインセ……ってなんだ?」




俺が聞くと突如として俺の前に2人の人が現れた。




1人は青い鳥羽耳、もう1人は翅耳(虫の羽)の生えている人だ。





「通常は翼や羽をしまっておりますが、見分けるポイントは耳ですよ~」





そう言うとその2人は背中からそれぞれの翼や羽を出してその場から飛び去った。





「話を戻すね。


私はこれに乗ってあなたの元へ来たんですけど、その目的はただ1つ!


異世界の人を連れてくることです。」





アグがそう言い終わると、また俺の部屋の風景に戻っていた。





「ということなんで…来てくれます?」





正直これは願っても無いチャンスだ。



突然俺の部屋に現れたし、今の映像だって作り話に思えない。



とても行きたいのは山々だ。




でも、俺は知ってる。


異世界に行く為にはこことお別れしなくちゃいけないこと。



要するに死ななければならないこと。





「なんていう、死ぬのは怖いかな。


未練という訳じゃないんだけどまだ仕事とかやりきってないし…………ああっ、仕事ぉぉぉぉぉぉ!」





携帯を確認すれば先ほどの電話から1時間近く経っていた。




やばい、また怒られるんだけどっ……





「悪いけど俺、仕事行かなきゃっ!えっと…夜には帰るから待ってて!


冷蔵庫のものとか食べてていいからっ」




俺はスーツを着ながら、アグにそう言って家を出た。





「すみません、取引先から連絡があったのでそちらに行ってました。


今から向かいますので……」




電話相手なのに俺は頭を下げる動作しながら、会社に向かった。





なんとか誤魔化せたのでお叱りはなかったことに安堵しながら席に着く。





ユグドリアか…良さそうなところだったなぁ。





「齊藤~、ここ数字合わないぞ」



俺は慌てて書類を受け取り、見直す。





あんな上司の下について社畜でいるより、あっちに行こうかな。





「紅蓮、また休日出勤か?お疲れ様」





こんなイケメンに慰められて、敗北感を味わうのも辛いしな。




いつか機会が…と思って書いておいた退職願を引き出しから取り出す。




少し震え気味の手で今日の日付をポールペンで記入する。




俺は向こうで新しい生活をスタートさせるんだ!





「ー係長、受け取ってくださいっ!」




俺は退職願を突き出しながら、頭を下げた。













案外、あっさりしてるもんだな~




夕焼けの空を眺めながら、俺は歩いていた。




「そうか、今までお疲れ。じゃあな。

あっ、その書類だけやってけよ」




という言葉で俺はすっと切られた。




噛み締めながら書類を作り直した俺は、係長の机の上に提出して会社を出た。



部長や係長の連絡先を削除して、携帯をポケットにしまう。




もういい、未練は何もないから…




俺は静かに決心をして家へと帰った。






「アグー?いるの、かぁぁぁぁぁぁ!」




そう言いながら、部屋に入るとあまりにも荒れている部屋に驚いてしまった。




「あ、グレン~!おかえりなさい」




そう言うアグの周りには冷蔵庫からとったと思われる野菜などの食べ物の残骸が広がっていた。





「な、な、な、なんじゃこりゃぁぁ」




「えー?グレン食べていいって言ったからぁ」





うん、確かに俺は言った。


言ったよ、でも、全部食う奴がおるかぁぁぁぁぁぁ!!





家から食べ物という食べ物が全て消えている。



今、口にできるのは水道水のみだ。




そんな状況下でアグはマイペースだ。




「んでー?来るの、来ないの、どっちなの?」




そうだ、もう決めたんだ、迷うな!




「俺は行くよ、ユグドリアにっ!」




そう言うとアグは俺に抱きついてきた。




「会社も辞めてきたし、未練はないからそっちに行けるぞ!」




「ありがとう、グレン!…でもなんで会社辞めたの?」






俺は思わず「え、なんで?」と聞き返してしまった。




「だって向こうで暮らすなら、死ななきゃいけないから辞めた方がいいと思って……」




俺がそう言うとアグは頭の上にクエスチョンマークを立ててこう言った。




「えっと、暮らすってどういう事?


私はただあなたを連れて行って、またこちらの世界に返すのが任務な訳で。


別に少しの間だけ時間をくださいって事なんだけど……」





は…?嘘だろ…?会社、辞めちゃったんだけどぉ!!





「ま、まじか……そう言う事なのか…」





確かにアグは「暮らす」という事は言ってなかった。


ただ「行く」や「来る」と言っていただけだった。





まぁ、まぁ、まぁ…。


丁度、転職しちゃおうかな、って思ってたところだし。





とりあえず、飯食おうかな。



そう思って冷蔵庫を開ければ、すっからかん。





そうだった…アグが全部食ったんだった。



俺が冷蔵庫の前で、打ちのめされていると、後ろの方では「ケプッ」っと小さなゲップが聞こえた。




なんだかもうどうにでもなってしまえ。





「とりあえず行きたいな…ユグドリアに」




俺がそう言うと、アグは俺の両手を掴んだ。




「おっけ!なら、行こっか!我がユグドリアへっ!!トーループトレイン!」





彼女がそう言うと家の壁をすり抜けて、部屋の中にトレインが入ってきた。




「ほら、行くよっっ!」




俺が呆然とする中、アグに手を引っ張られ緑の車体へと入っていった。





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