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僕のパーティーには脳筋しかいない  作者: naki太
イナゴスレイヤーと呼ばれて
4/5

第4話 助っ人

ようやく女性キャラが出てきます。

長かったような短かったような……

まだまだ修行が足りないので、誤字脱字の発見、または表現に疑問を感じた方は報告をよろしくお願いします。

 声をした方を見ると、長身で全身泥だらけのおそらく女の人が立っていた。腰には二本の剣を差し、背中には弓と矢を背負っている。

 なぜ泥だらけ? という疑問は尽きないが、今はそんなところではない。少しでも役に立つのなら、猫はおろかその辺を飛んでいる羽虫にですら助けを借りたいくらいだ。

 ともかく、今は時間がない。僕は剣を抜ききり、その女性に指示を出す。


「後でお礼はする! 今はあの一番ヤバそうな大猪の気を逸らすのを手伝ってくれ!」

「了解! あ、食べるなら肉がいい!」

「わかったよ! 好きなだけ食わせてやるから、早く手伝ってくれ!」

「やったー!」


 なんだろう。こいつ、アルフレッドと同じ系統の匂いがする。

 いや、僕が最近接した家族以外の人ランキングで現状単独首位に立っているのがアルフレッドなわけで、周りの人間がアルフレッドに見えているだけなんだろう。


「うおおお!! クリス!! こいつ、なんか持ち上がりそうだ!!」

「その調子で頑張っとけ! ええ、と、泥の人! 行きますよ!」

「泥の人って酷いな。でも、面白いから許す!」


 大猪その2の相手をしているアルフレッドの後ろに泥の人と武器を構え並んで立ち、大猪その3をけん制する。

 大猪その3は突進する寸前だったのに、なぜか少し後ずさり首をブルブル振ると意を決するように後ろ足の筋肉がボコっと膨れ上がる。いや、これ当たったら確実に死ぬだろ。

 恐怖で膝が笑い始め、手に力が入っているのかも分からなくなる。


「ははは! 君、めっちゃビビりだね!」

「わ、笑うなよ! そういうお前は怖くないのかよ!」

「全然へーきさ! 慣れてるし!」

「はぁ?」

「そうじゃ、いくよ!」

「ちょ、危な!?」


 泥の人は腰の剣を抜くと、地面を這うような低姿勢で結構離れていた大猪その3の懐へ、瞬き2つ分くらいで忍び込み、首を切った。


「プギィ!?」

「どうだ!」


 大猪その3は大きくよろめき、首から血液を噴水のように垂らしながら横転し、泥の人はその血を浴び、血の色に染まり血みどろの人になった。ホラーかよ。

 既に一回バカみたいなことを経験したとはいえ、驚かないわけではない。つまり、僕はこの時、顎が外れた。


「そんな野生のドラゴンを見たような顔をしないでくれよ。面白いから」

「うぃがう。あおかはうれた(違う。顎が外れた)」

「えっ! そりゃ大変だ!」


 通じたのかよ。

 え、そんな急に手なんか握られたら……。


「うーん、でもなんともないみたいだよ?」


 うーん、惜しい。それは腕だ。あと、汚れるから触られたくなかったんだが。

 手を持って、首を傾げている血みどろの人を眺めていると、後ろでアルフレッドと戯れていた大猪その2から悲鳴に近い驚愕の奇声が上がった。


「ちょ、クリス! 持ち上がったぞ!」


 見ると、大猪その2が宙高く持ち上げられ、泡を吹いていた。

 神様、人間ってこんなにもバグキャラで溢れていましたっけ。とりあえず、顎が外れたことを理由に僕は何も話さなかった。


 ■ ■ ■


「へー、2人とも冒険者なんかやってるんだ」

「そりゃあ、男はロマンってな! そうだろ、クリス!」

「ああ、知らん」

「クリス君は照れ屋さんかな?」

「アホみたいなこと言わんで下さい。血みどろの人」

「なんか称号が格上げされてる!? お姉さん嬉しいな」

「褒めてねえよ」


 顎の関節をなんとか治した僕たちは、依頼主のゴルドさんへ大猪三頭分の死体をアルフレッドの馬鹿力で持って行き、成果を報告すると、あれほどハードボイルドでクールガイというイメージが強かったゴルドさんも顎を外していた。

 その後、大猪を解体してもらい、いくつかのお肉を分けて貰い、報酬金も貰った。

 ちなみに、ゴルドさんが血みどろの人を見た時、片腕が折れているにも関わらず近くにあった斧を握り締めて撃退しようとして追い回すっていうこともあったが、血みどろの人が水を頭から被ったことで事なきを得た。


 そういうわけで、血みどろの人が綺麗になったわけだが、顔はかなりの美形だった。僕の街でよく見るような金髪ではなく、真っ黒な髪で砂さえ混じっていなければとても美しかっただろうに。

 ゴルドさんと別れ、その帰り道。機嫌よく前で、アルフレッドと話す血みどろの人を眺めてそう思うのだった。


「なるほど、そういうわけか」

「見たことあるんだったら、協力してくれよ!」

「でもなー、あれはちょっとやそっとではなー」

「まあ、細かいことはなんとかなるって! オレたちも鍛えるからさ!」


 ん? いったいなんの話をしているんだ? 嫌な予感しかしないんだけど。


「そうか、それは見ものだな!」

「そうだろ? そしたら、オレたちは世界一有名になるだろ? そうしたら、王様になれるかもしれない!」


 王様!? なんだそれ、話はよくわからないが聞いたことが一度もないぞ!


「ほお! それはすごいな!」

「まあ、王様に興味はないんだけどな」


 興味無いのかよ。

 突っ込みたいところだが、大猪を投げ飛ばす奴にはきっと効かないだろうから、ここは堪える。というか、今日1日で山を登ったりビビったり驚いたりしてそんな気力はない。


「だから、いいだろう? な?」

「うーん、まあ、私も目的はアレだしね」


 血みどろの人はくるりと振り返って、僕を見下ろす(少し身長差がありそうなってしまう。男としてはなんとも不服である)と、キラリと光る笑顔で僕の名前を呼ぶ。


「クリス君!」

「な、なんですか?」

「私も冒険者になる! そんでもって、今日からクリス君とアル君のパーティーメンバー!」

「……」

「あれ? 反応悪いな。壊れたかな?」

「クリスは賢いんで、考え事をしてるんですよ。きっと」

「なるほどね! 私、頭悪いからそういうの任せたぞ!」


 その笑顔、歯に泥が残っていなければ最高でしたよ。そう伝えようかと迷いながら、僕は足を進めた。

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