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プロローグ

 小説や映画でタイムマシーンやタイムリープものを見た時、そんな非現実的なことがおきるわけがないと笑っていた。


 だが、もしやり直せるのならやり直したい。そういう思いがあるからこそ、タイムリープやタイムマシーンにあこがれをもつのだと思う。


 俺だってそうだ。『あんなこと』になるなんてわかっていたらどうにかしたいって思う。回避できる方法があるのなら回避だってしたい。


 実際そんなことを思っての行動ではなかった。俺はただ逃げ出したのだ。いや、目の前で起きたできことに俺は茫然として、次に泣き叫び、走り出した。


 気が付いたら俺たちの思い出でもある鉄橋にたどり着いていた。街と街を分断する大きな川を支える鉄橋。車が通る横にあるこの橋を歩くのは怖い。そこをよじ登る。かなりの高さだ。しかも俺はそんな水があるような場所まで行く気もない。だって、俺は飛び降りるのだから。


 現実から逃げる。俺の選択しはそれだった。だって俺にとって『アイツ』が居ない世界なんて意味なんてないのだから。


 そう思って俺は空を飛んだ。怖かったので俺は地面を見ないように空を見ながら飛んだんだ。空には月がきれいで、星も出ていた。そうか、兄貴もこういう景色を見ていたのかもしれない。少しだけ兄貴のことがわかったきになった。


 でも、それも一瞬だ。俺にとっては「アイツ」がすべてだ。この空の下にさっきまで笑って一緒にいたのにな。俺があんなことをあんな場所でしなければよかったのに。そう思っていたら体に強い衝撃がやってきた。ものすごく痛い。体も心も。だが、もっと『アイツ』は痛かったはずだ。俺は気が付いたら叫んでいた。そして気を失った。多分、死ぬのだろう。


 後悔している?


 しているに決まっているじゃないか。死んだことじゃない。『アイツ』を目の前で死なせてしまったことにだ。


 痛いの?


 当たり前のことを聞くな。


 だが、気が付くと俺は不思議な場所に立っていた。おかしい。あの鉄橋から飛び降りたはずなのに俺はなんでどこも痛くないのだろう。というか、この真っ白な靄のかかった場所は何なんだ。そう思っていたら声をかけられた。


「なんでこんなところに人が来るんだよ」


 声をした方を見ると少年が立っていた。ただ、その少年が普通じゃないことは見て分かった。うっすらと光り輝いているからだ。


 ただ、服装は野球帽をかぶりスカジャンを着ている。しかも見たことがない大きなペロペロキャンディをなめている。なんだこいつ。


「めんどくさいな。こういうイレギュラーってやめてほしいんだけれど。ねえ、君。痛かったんだよね。まあ、規則だから仕方ないんだけれどね」


 ふてくされているその少年、というかガキにこう言った。


「なんだお前は?光り輝いているから神様かと思ったけれど、見た目は小学生みたいな子供だし、服装なんてかなりファンキーだし、何なんだ?」


 そのガキはこう言ってきた。


「仕方がない。説明してやるよ。本当はめんどうなんだけれどね。僕はLamed、もしくはLibra。まあ、めんどうだからLとでも呼んで。


 ここはね、なんかすっごい痛みを経験して後悔をした人がたまに来る場所なんだ。そして、その人たちの調整をするのが僕の役目なんだよ。んでも、面倒だからさくっとその人の望む時に戻すんだけれどね。んで、君はいつに戻りたいの?ちゃちゃっと決めちゃって」


 何を言っているのだ。意味がわからん。そう思っていたらLと言ったガキがこう言ってきた。


「ああ、信用してないのね。仕方がない。今の君の状態を見せてあげるよ」


 そう言うと靄がかかっていた白い部分の地面が少しだけ開いた。そこに血まみれで倒れている自分が映し出されている。


「ね、君はあんな状態。とりあえず君が望む時間に戻してやり直させてあげるよ。もうここには来ないでね。君みたいなのを相手するのはめんどうなんだ。僕はそれでなくても色んなことに使われるんだから」


 多分、これは夢なんだろう。そう思った。夢なんだったら都合がいいことを言ってもいいんだろう。


「ならさ。俺が野坂美穂と出会ったその時に戻してくれ」


 そう、俺が好きになった彼女。その彼女との出会いからやり直したい。そして、あの事故だけは回避したい。


 どうして俺はあんな場所で彼女に野坂美穂に告白なんてしたんだろう。あんなことさえしなければよかったんだ。びっくりした野坂。あの時俺になんて言おうとしたんだ。


 俺にとって野坂が居ない世界なんて意味がない。だから鉄橋から飛び降りてしまった。でも、それでいいと思った。Lと言った少年が言う。


「ああ、良いよ。ならとっとと行くがいいさ」


 そう言って俺の足元にあった白いもやがなくなる。下におちる。浮遊感。気持ち悪い。


 その勢いに俺はまた気を失ってしまった。


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