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魔剣使いの救世主  作者: 天使長ミカエル
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惑星ウルスラグナⅥ



「その鍵は?」


 カレンの胸にかけてあった鍵を取り出し、ほとんど崩壊した家の瓦礫をかきわけ、地下に通じる扉にカレンの持っていた鍵を挿しその扉を開け、カレンとカノンは地下へと足を運んだ。

 黒羽とフィオナも二人に続き地下へとつながる階段を降り、その地下に待つ二つの武器と対面した。

 一つは赤い宝石が手の甲の部分に埋め込まれた手甲、そしてもう一つは剣の刀身に赤い文字が彫られた大剣。

 二つの武器に埋められた赤い宝石は煌光と輝き、何か特別な光に満ちていた。


「ローズレッドの人間しか操れない「暁の神器」、焔と紅です」


 カノンは焔と紅の一つである紅を取り、カレンは焔を装備し地下室を上がった。

 黒羽とフィオナも上に上がった所で、カレンは黒羽に一つ尋ねた。


「黒羽は、なんでここまで助けてくれるの?」


 その問いに黒羽は少し黙り、やがて口を開いた。


「少し前にな、大切な人を失ったんだ、俺がもっとしっかりしていれば助けられたかもしれない、そうやって今も後悔しているんだよ、だから俺は後悔しない選択をする、その後悔しない選択が二人を命を懸けてでも守ることなんだよ」


 地球にいた時とは持っている力が違う、黒羽が自らの力をふるうのは他人を守ることを誓ったのだ。

 それが黒羽のすべきことでこの星に降り立った意味、存在証明だと感じた。


「・・・ありがと、黒羽」


 二人は少し照れながらそっぽを向き、山賊のいる屋敷へと向かっていった。

 と、屋敷までの道を歩いていた所で、傷だらけになった老人とその後ろに数人のこの村の住民と思われるグループを発見した。

 

「カレン!カノン!」


 老人たちは二人に近づき、二人の生存に喜んでいた。どうやらこの老人たちはカレンとカノンの知り合いのようだ。

 老人たちが出てきたのは、カレンとカノンが武器を取った地下室のような場所で隠れていたのだろう、その地下室を見てみると中には幼い子供もいて、そんな小さな子供も殴られたような傷跡がみえる。


「このお二方は?」


「私を助けてくれた人、黒羽とフィオナ」


 黒羽とフィオナは軽い挨拶をかわし、フィオナはさっき黒羽の目に入った子供含め、周りに回復の繭のような球体を生成する。


「エンジェリック・ヒールスフィア」


 フィオナの手から光輝く魔法の球体が周囲の傷ついた人間の傷を癒していき、継続的に回復が続く玉が住人を覆う。


「もう大丈夫よ」


 フィオナは傷ついた子供の頭をなで、ほほ笑んだ。


「まさか、あなたは・・・天使様か・・・?」


 この光輝く球体を見てある一人の老人がフィオナに驚いた様子で尋ねる。


「あなたの言う通り、私は闇の神エレボス様の使いである黒天使フィオナ、今は横の黒羽と契約している天使よ」


 フィオナはその証拠として背中から二本の漆黒の翼を生やし、宙を浮いた。


「やはり、天使様でおられたか・・・」


 このウルスラグナにはたくさんの種族がいる、人間はもちろんのこと、エルフやドワーフ、精霊に竜。それらの生き物は当たり前だが生き物である。

 生き物は必ず争い合い、自分の地位を高くしようと戦争を止めない。このウルスラグナでもかつて生物戦争が起こり、領土の奪い合いが起こった。

 この戦争は長い間決着はつくことなく、最終的に神帝巫女という二人の少女によって終戦を迎えた。

 生物戦争で長い間劣勢状態にあった人間は戦争の終戦に喜び、同時に神帝巫女と人間に加護を与えた天使を崇めるようになり、天使は人間にとって平和の象徴と化していた。


 フィオナの姿を見た住民は両手を握り、祈りを黙とうした。


(天使はここまで崇められているのか)


 黒羽のいる地球では天使はいるかいないか都市伝説のレベルだ、星が違うだけで同じ人間でも全く考えが違うという事に黒羽は改めて感じた。

 

「この村を襲った山賊はまだ村長の家に?」


 カノンが老人に山賊の居場所について聞くと老人とその周りの住民は顔を少し曇らせ、口を開く。

 

「あ、あぁ」


「何があったんですか?」


「村長も奴らに殺され、隠れていたその家族全員が、殺された」


 その老人曰く、村長が殺された少し後にその家族の断末魔が聞こえ、全員は震えあがっていたそうだ。

 村長の家族はいろんな人と仲が良く、村でも人気のあった少年も死に、その友達らしき少年、少女の精神状態も少し不安があった。

 

「・・・そうですか、カレン、黒羽さん、フィオナさん、行きましょう」


 カノンは静かに怒りを燃やし、山賊のいる村長の家へ向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 村長の家の付近には血が飛び散り、家の柱が赤く染まっていた。

 近くには腐敗臭が漂い、黒羽とカレン、カノンは思わず顔をしかめ、鼻を覆った。


「あ?客か?」


 と、腐敗臭漂う家を潜り抜け、村長の家に近づくと山賊の手先のような男が黒羽達を見つけ、腰に下げた剣に手を当てた。

 

「そこをどきなさい」


 瞬間、フィオナはその男に黒い魔法を当て、その男は意識を失いその場に倒れた。

 フィオナは敵の意識を一瞬で刈り取り、一定の時間意識を奪ったのだ。


「行くぞ」


 木の少し軋んだ音が響く中、黒羽達は山賊の声がする方向へ歩いていき、戸を開けると大量の山賊が、この家の金品をほとんど集めお祭り騒ぎ状態だった。


「お前らがこの村を襲撃した山賊共か」


 黒羽が炯眼な目つきでその山賊たちを睨みつけ、山賊全員が黒羽達の方に向く。


「誰だてめぇらは・・・ん?娘共、その武器は・・・」


 山賊の長のような巨体の男はカレンの手甲とカノンの背中にある大剣を見て目を見開いた。

 二人の持つ「暁の神器」に注目する。


「てことは、あの娘がローズレッドの・・・」


「これは二つの武器、奪うべきだな、お前ら!あの娘から武器を奪え!おまけにあの容姿ならかなりの額になる、あの男以外は捕獲しろ!」


 黒羽は息を一つ、深呼吸しフィオナは黒いオーラに包まれ、虚空に消える。

 瞬間、黒羽の手には漆黒の魔剣が生まれ、禍々しい瘴気が魔剣を包んだ。

 フィオナが消え、黒羽の手に魔剣が出現したのはカレン、カノン含め山賊の男たちは驚愕に顔を染めた。


「フィオナ、頼むぜ」


(苦戦なんてしないでしょうから、肩の力を落として眠ってもらいましょう)


 黒羽は山賊達の中心に走り込み、一閃、数人を吹き飛ばし、鬼のような剣撃を繰り出す。


「な、なんなんだ・・・この男・・・」


 剣を構えた山賊の一人が黒羽から少し距離を置き、仲間が倒れているのを、その男は

眺めるしかできなかった。

 と、後ろから激しい熱を感じ、慌てて後ろを振り向くと二人の少女は二つの神器に魔力をこめ、やがて二人の体は炎のように熱を帯び、来るもの全てをなぎ倒していた。


「くっ!ガキ共ぉぉっ!」


 三人の剣撃に圧倒されていた山賊の長がついに大剣を構え、黒羽に迫ってくる。

 が、相手は二メートル近くある怪力の持ち主というだけである。そんな力任せの巨人に黒羽は相手の大剣が体に触れること無く、魔剣ダークスレイヴを黒羽が自分で作った構えで大剣が迫るギリギリまで待つ。


 そして大剣が迫る瞬間、黒羽は敵の懐に入り、地球で編み出した剣術で一薙ぎ、魔剣の刃は巨体の上半身を切り裂き、そのまま倒れる。


「百鬼流剣術 鴉羽」


「なんて、奴だ・・・」


 巨体の男は気を失い、カレン、カノンのほうも片付き、この村を襲った山賊は全滅した。

 と、外で何やら話し声が聞こえた。声からしてこの村のフィオナが回復の光を当てた人間の声では無い。

 ならば、新たな敵か何かと考えていると戸が開き剣を構えた兵隊のような全員が同じ服装の人間が入ってきた。


「この家にこの村を襲った山賊がいると聞いたのだが」


「山賊は俺たちが全部倒しましたが・・・」


 黒羽がそう言うと部隊の人間は驚いた様子で三人の足元に倒れている山賊たちをみて、驚愕した。

 と、奥からその隊のリーダーらしき人間が出てきた。


「我らはギルド戦闘部隊です、山賊が襲撃したと通達があり来てみましたが、この山賊たちはあなた方が?」


「はい」


「なるほど、この山賊たちは賞金首にかけられているので、次にあった時賞金をお渡ししましょう、そしてここからは私たちが処理しますので」


 ギルド戦闘部隊の人間たちは黒羽達に敬礼し、三人はその家から出ていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「黒羽、ありがとう」


「黒羽さん、ありがとうございました」


 二人全く同じタイミングで、黒羽に感謝を伝える。この時黒羽は二人はこの先どうするのかふと気になった。

 たくさんの人間が殺され、家も壊され彼女たちに残っているものはたった一人の家族のみ。


「その・・・二人はこれからどうするんだ・・・?」


 二人は顔を曇らせる。


「俺とフィオナは北にあるハルバリオンって所に向かうんだけどさ、そこに行って稼いだら、村を復興できるんじゃないかなって思ったんだよ」


「村を・・・」


 二人の曇った表情が少し明るくなり、黒羽の方を向いた。


「この件に関して俺は最後まで付き合うからさ、二人が良いなら俺と来ないか?」


 カレンとカノンの目に少し涙が浮かび、二人は黒羽の胸に抱きついた。

 そして、二人が黒羽から離れ、カレンとカノンは黒羽と共に行くことを決意した。


「ありがとう、黒羽」


「ありがとう、黒羽さん」


 沈む夕日の光が目元の涙を光らせ、カレンとカノンはとても美しかった。




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