10話
「……朝か…」
「そうよ。おはようリョーガ」
「レ!…レイン!!!!」
目を開けたらレインが目の前に居た
そして、つい勢い余って抱きついてしまった
泣きそうだ
スッゲェ泣きそうだ
泣いていいかな?
嫌、男リョーガ!ここで泣いたら男がすたる!
何とか堪えてやるぜ!
「く、苦しい……」
「あ、めんごめんご」
「リョーガ…私……私!」
レインが何か悲しそうな顔をしてる
そんな顔させたくないのに…
こういう時は…
「おかえり」
トールみたいに出来たかな?
「うっ、うぅう………」
泣いちゃった
どうしよ!どうしよ!
助けて!トールまーーーん!!
って言ってもタイミング良く来ないのがトールなんだよなぁ〜
って、トールどこ行ったんだ!?
レイン泣いてるし!
どうしよ!!
○○○○○○○○○○
やべぇー!あんなに警備が増えてるなんて思ってなかった!!
今俺は絶賛逃亡中です
逃亡するに当たって良かった点は仮面を被っていた事と街を隅から隅まで調べた事だ
「こっちだ!こっちに行ったぞ!!」
しつこいな〜
しつこい奴は嫌われるぞ!
って、そんな事おもってる場合じゃないな!
俺は路地を走っている
ただ、俺の足は遅い!
物凄く!
兵士がすぐ近くまで追いついてくる
これはキツイぞ
さっきから路地ばっかり走っているから何とか逃げれてるけど、兵士が後ろ5m以内まで近付いて来ている
確か、次の曲がりを左に曲がって、また左に曲がり、右に曲がったら行き止まりで、そこを登ったら逃げ切れるだろう…
「よっと!」
壁を登り屋根を少し走る
今頃は行き止まりで消えた俺でも頑張って探しているだろう…
ってか、もう朝だよ!
朝日はまだ出てきて間も無いけど、どんだけ集中してたんだよ!
教会内部は兵士の量が半端無いし
何とか、マリアの場所は分かったし終わり良ければ全て良し…だ!
あれ?少し違うか??
まぁー、いいや
さっさと帰ろう
俺は屋根から飛び降りて外套を脱ぎ仮面を外して、近くに座って俺に驚いている汚いおっちゃんに外套をあげてから宿屋へと向かう
仮面は頑張って作ったのであげたくない
懐に隠してるから、その辺で俺を探してる兵士も見つけられないだろう
「ただいまー。部屋もう1つ取ったから……ごめん、邪魔したな」
部屋に入ったらリョーガがレインの上に覆い被さっていた
一つ屋根の下、男と女…2人でやる事と言ったら……
「ち、違うわよ!違うから戻ってきなさい!」
「そうだぞトール!俺は決してやましい事はしていないぞ!」
「……………」
戸を開け顔を出して中を再確認する
2人は正座で別々の布団の上に座っている
「そうか、違うのか」
違うのに何故正座してんだろ?
「あのな!あのな!えっとな!」
「えっと、ーーー」
「ーーーと言う事なの」
「そういう事だったのか」
泣き出したレインを慰めようと頑張っていたけど、中々泣き止まなくて、立ち上がったらバランスを崩してレインの上に覆い被さってしまった
と言う事だったらしい
………………なんとも言えん
このまま、ゴールインすれば良かったんじゃね?
「で、マリアの場所は分かったのか?」
「あぁ、バッチリだ!作戦決行日は1週間後の昼過ぎになる。その前にちゃんと準備だけは整えとけよ」
「おう!」
「分かったわ」
レインも分かってるみたいだ
何故?
リョーガが説明でもしたのか?
ま、分かってるなら良いや
俺も色々と揃えなきゃな…
話は終わったと思い、俺が出て行こうとするが
「何でやねん!違うがな、部屋もう1つ取ったからなレインそっち行って寝な205号室で、この部屋の前だ」
「うん、ありがと」
急に大声を上げた俺に驚くレイン
そして、正座を崩し、ゆっくり歩いて取った部屋へと向かう
「さて、俺も寝るか…」
今は朝日が登りきった時間だ
たぶん、7時か8時だろう
けど、俺は眠い
リョーガとレインには悪いけど、寝させてもらう
って、朝なのに部屋追い出してどうすんだ俺…
ま、良いか
「おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
○○○○○○○○○○
ここは教会の地下にある部屋
そこには白銀色の騎士と太って豪華な聖職者の服を着ている者がいる
この者は、教国に3人しかいない枢機卿で教皇の次にこの国を動かしている者だ
「捕らえた亜人どもが逃げ出しただと!?さっさと捕まえないか!?」
「で、ですが、全員何処からか街を出てしまいまして…」
「だったら、街の外をくまなく探せ!!」
白銀色の騎士が報告をし、それに怒る枢機卿
と、そこに
バンッ
勢い良く扉が開けられる
「報告します!教会内に侵入した者に逃げられました!」
「な、何だと!?どういう事だ!!」
「それが、奴は行き止まりの角を曲がった途端見失いました!」
「探せ!草の根を分けてでも探し出せ!」
「はっ!」
姿勢を正しながら返事をし部屋を出て行こうとする
この部屋は豪華で教室が1つ丸ごと入るかと言うぐらい広い
だが、周りには書物や飾り物が置いてあり、狭くなっている
人が5人入れば一杯になるぐらいだ
そこに
バンッ
またもや勢い良く扉が開けられる
「報告します!」
新たな兵士がやってくる
既に2人居るのでキツキツだ
なのに、新たな兵士が来てしまい、白銀色の騎士と兵士が新たな兵士を入れる為に端へと寄らなければならないため、転けそうになる
「報こ、申し訳ございません」
新たに来た兵士は寄らなければならなくなった初めに居た騎士と兵士に謝罪する
「報告します!協会内部と外部!それと牢獄付近に殺された兵士の死体を発見しました!」
「な、何だとーーーーー!!!!何故こんなにも厄介事が来る!!さっさと殺した犯人を探し出して死刑にしろ!!」
「はっ!」
そして、兵士2人が出て行く
残った白銀色の騎士は
「それを行った者は同一人物では無いでしょうか?」
顎に手をやり考えながら独り言を呟く
「何故そう思う」
そこへ枢機卿が食いつく
「いえ、これは私の推測に過ぎないのですが、余りにも都合が良過ぎないでしょうか?それに、脱走した亜人達にしてもそうです。誰かが手引きしなければ脱走などできない事でしょう」
「それもそうだな…では、その者を捉えるように手配しろ!」
「はっ!」
兵士と同じく姿勢を正し返事をして出て行く
「くそっ!どういう事だ!それもこれも、あの聖女が戻ってからだ!厄病神め!だが、忌々しい聖女もあと1週間の命だ!クビヒヒヒヒヒヒ」
気味の悪い笑い声が狭い部屋に響きわたる
○○○○○○○○○○
さて、下準備しますか
夜中に目が覚めた
仕方ないだろ?最近ずっとリョーガの為に走り回ってたんだよ!
後はマリアだけだ
少し気が楽になったが油断はできない
リョーガもだろう
元気が少し戻って何時ものリョーガになりつつあるからな
俺もあと一息頑張りますか!
って事で始めます
俺が用意するのは、教会の地図と即効性のある毒の調合、潜入用の服と仮面…かな?
服は露店で売ってる外套を買って改造すれば良いし、仮面は木を削ったら作れる
ちなみに、俺が昨夜着けていたのもそうだ
その時に手がかぶれる液がツタの葉っぱに付いていたので、採取しておいた
ちなみに、俺が着けている仮面は黒く赤い亀裂の模様が書かれた狐の面で、リョーガに作ったのが般若の仮面だ
レインには作戦に参加させないので作らない
教会の地図は、もう一度協会へと潜り込んで探る
逃走経路とかも作っておくつもりだ
前回潜り込んだ時に確認したが、壁やら天井やらに少し隙間があるようで、それが使えそうだ
そうと決まったら早速やりますか
○○○○○○○○○○
トールが夜中に起きて何かし始めた
俺は眠い!
明日になったら用意しよう!
用意って言っても何をすれば良いのか分かんねーから、とりあえず、いつも通り依頼をこなそうかな?
あ、そういや、この前トールに武器を修理に出した方が良いって言われてたんだった
ここの武器やって何処にあるんだろ?
まーいっか、明日で
○○○○○○○○○○
リョーガ、私の為にあんなに慌てて…
思い出すだけでも面白いわ
「ふふふ」
けれど、嬉しかった
とっても嬉しかった
とっても怖いけどトールの言う通り優しい人なのね
そういえば、トールは「俺はリョーガ程優しく無い」とか言ってたっけ?
そんな事言っても、逃がした他人種達を助ける為門番を買収してまで街から逃がしてあげるんだから私は優しいと思うな
それに、リョーガよりって、何処がなのよ
リョーガより充分優しいじゃないの
後は、マリアを助けるだけ…私も頑張らなくちゃ!
夜
コンコンコン
「起きてるか?」
この声はトール?
「起きてるわよ」
「そのままでも良いから聞いてくれ。行くのは俺達だけだ、レインはここに居てくれ」
え?何で?何で私を連れて行ってくれないの?
「何でよ!」
私は扉を開けて目の前に居るトールに尋ねる
「その方が効率良い、それに、レインは牢屋から出てきて間もない。あまり無茶はさせたくない」
「納得いかないわ!」
わからない!
何で私が行ったらダメなの!?
もしかして、私は足手まとい?
嫌よ!そんなの嫌!
「納得してくれなきゃ困るんだが…」
「嫌!絶対に嫌よ!私もマリアを助ける!!」
トールが困った顔をしているけど、笑っているせいで分かりにくい
けど、私も行きたい!
私だって戦える!
私だってマリアを助けたい!
「んじゃ、ハッキリと言わせてもらうが…」
トールは常に笑ってるけど、目が真剣だ
私もそれにつられて真剣な顔になり生唾を吞み込む
ハッキリと足手まといって言われるのを待つ
「俺らのする事をレインにあまりみせたくない」
え?
やっぱり、足手まといなのかな?
トールは先程の真剣な顔付きが何処へ行ったのか、笑いながら言っている
けれど、そんなので納得できない!
そんな理由だったら私も行きたい!
「レイン…まー、そんな怒らずによく聴けって。俺は優しくない…言っただろ?リョーガより俺は優しく無いって。それに、リョーガなんてキレると手がつけられないんだよ。だから、連れて行かない。リョーガのとばっちりが来るかもしれないからな」
「そ、そんなの大丈夫よ!」
そうよ、いつもリョーガの怒った所を見てるけど何も言って聞かないわけじゃなかった
トールだって優しく無いって言いながらも優しいじゃ無いの!
「大丈夫じゃない!」
トールが怒った
初めてトールが怒った所を見た
怒っても口は不気味な笑みを止めないのね
「レイン、リョーガは、お前の事を心底心配してるんだ!それに、見せられないって言う事も冗談じゃない!リョーガの事も俺の事も見せれない事は沢山あるんだ!だから、我慢してくれ。頼むよ…」
怒ってたけど、最後の方になるにつれて声が小さくなっていき俯いた
我慢…ね……
そういえば、リョーガ達と会ってから我慢なんてした事なかったっけ…
「分かったわ。我慢する」
私は肩を落としながらトールの言う通り我慢する事にする
そんなにも、見せたく無いのかな?
リョーガとトールって、やっぱり隠し事をしていたのね
寂しくて私だって行きたいけど我慢しなくちゃ!
だって、こんなにもトールに頼まれた事なんて初めてだし
私だって知られたくない事もあるし……
「ごめん……」
「レインが謝る事は無いよ。ゴメンな。ちゃんと連れて帰ってくるから大人しく待っていてくれ」
「うん」
私は、たぶん泣いているんだろう…
とっても悔しくて、寂しくて、悲しい
リョーガなら、こんな私を見たら、さっきみたいに慌てて転んじゃって…
「ふふふ」
思い出したら笑いが込み上げてくる
けれど、涙が止まらない
私はマリアを助けにいけない
あの時、私がしっかりと周囲の確認をしてなかったのが悪かったのに
私が強くなかったのが悪かったのに
私の所為で…マリアが……
「ごめんなさい。私は行けないけど、リョーガとトールが必ず助けてくれるから。待っていてマリア……」
届くかな?
届くと良いな
ごめんなさいマリア…




