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クロスロード  作者: 八尺瓊
~第一章 シロヤギさんとクロヤギさんの手紙~
6/31

6:匠と千秋先輩 

結局学校に着いたのがお昼休み中だった。

5時間目の授業に出たところで今日一日の出席状況は欠席扱いになる。

ということで、僕は約束を果たしに部室に向かった。

湊ちゃんと水無月姉さんにはトイレということで僕は教室を抜け出し、部室の扉の前で一旦深呼吸をしてノックをする。


「失礼します。神野着ましたけど。」


扉を開けると目の前にイケメンのメガネ野郎が制服のジャケットをはだけてスラッとした長い足を組みいたずらな視線を僕にぶつけてセリフ口調で挨拶をする。


「や・ら・な・い・か。」


もちろん扉を閉める。

ものすごい勢いでこっちに向かってくる足音が聞こえる。


「もう~~いけず~~。」


両手をくねくねくねらせ、体もそれに合わせてくねらせ近づいてくる変態がいた。


「千秋先輩気持ち悪いです。」

「そんな事は100も承知だ。しかしこれ、わが性分なり。」

「かっこよく言っても変態ですから。」

「そこは後に”紳士”という言葉を入れたまえ。」

「変態紳士。」

「そう。その称号こそ、私を評価するにふさわしい響きだ。」


変態紳士の後ろから女性の非難する声が聞こえる。


「その辺で、変態行為はおやめになってください。品性が問われます。もちろんそんなものは”ない”!!と分かっておりますが。」

「白鷺~~それいいすぎ~~。」


変態紳士はまた体をくねくねさせながら、オネエ言葉で返事をする。

顔はイケメンなのに非常に残念である。

千秋先輩はもちろん普通に話しも出来る人だ。

本人曰く、最近のマイブームがオネエ系らしく、気持ち悪い動きを取り入れ、会話をする変態紳士を演じているらしい。

しかし、僕と千秋先輩が出会って数ヶ月はたっているが、”変態”という部分はなくなったことがない。

白鷺と呼ばれた女子生徒は、彼女の後ろにあった湯沸かし器ポットを使って僕にコーヒーを入れてくれる。

ああ、和む~。

部室に入って大きなテーブルを挟むように僕が座り、その正面に千秋先輩と白鷺さんが座る。

僕がコーヒーに口をつけて落ち着くと千秋先輩から本題が切り出される。


「例のモノは出来上がってきてるよ。」

「ありがとうございます。」

「前回の試作品より数段魔力耐久値が増しているはずだ。ただあれは君じゃないとテストできないから。」

「わかってます。」


千秋先輩がテーブルの上にプラスチックで作られたハンドガン用のガンケースを置く。


「あけてみて~。僕の心はいつも君のためだけにオープンマイハートしているけど。」


ウィンクと一緒にイケメンの千秋先輩に変態語を言われると殺したくなる。


「どうしてもその軽口は必要ですか?」

「いや。まったく必要ないんだが。君の目が俺をたぎらせてしまうのだよ。」

「あ、そうですか。」


軽く話を切ったことで悲しそうな顔の千秋先輩をとりあえず放置プレイして、ハンドガンケースの左右にある留め具に手をかけケースを開ける。

そこにはハンドガン本体と2本のマガジンがあった。


「お、ガバメントですか?」

「そう今回、M社のガスブローバック M1911A1ガバメントだ。もちろん君のオーダーどおり魔力制御の為のルーンはスライド、インナーバレル、アウターバレルに、弾丸強化のルーンはマガジンに掘り込んでいる。」

「前回のグロック17も良かったですけど、僕の力には耐えれるイメージはなかったので。」

「ルーンの術式もかなり変更を加えられていると聞いているよ。」


実際ケースから銃を取り出し、弾が装填されていないマガジンを手に取り、ルーンの模様を確認する。

確かに前回見たときより文字数が増えている気がする。

一旦マガジンをケースに戻し、今度は本体を取り出す。

少し重い。


「これって少し重いですけど、ウェイトを仕込みましたか?」

「おお~さすが~。そう、耐久性の向上を考えた上でグリップ内にウェイトを仕込ませてもらったよ~。ウェイトの周りにもルーンが彫られているらしいの~。」


そろそろオネイ系の言葉使いをやめてくれないだろうか?

マジで殺しそうになる。


「なるほど。重量感は”強さ”を連想させますからね。所で、千秋先輩そろそろその言葉使いやめていただけませんか?」

「う~んいけず。じゃあやめる条件として、俺の男強さを見せてやろうか?ベットの中で。」

「遠慮しておきます。」

「つれないわ~。でもそこがいいわ~。」


変態紳士はほっておいて、今度は本体をケースに戻し、僕の後ろにある棚の引き出しからハンドガン用のBBローダーを取り出し、マガジンに弾をこめる。

ちなみにBB弾の弾自体は市販されているバイオBB弾で、特にルーンなどを掘り込んではいない。

2本のマガジンに弾をこめ終わると、ガスをマガジンに注入し1本を本体にセットする。

僕のリクエストが効いたのか、いつの間にか千秋先輩の口調が元に戻っていた。


「じゃあさっそくテストしてみるか。白鷺、結界を。」

「イエス、マスター。」


部室が一気に真っ白な空間に変わり、周りをどこをみても真っ白。

純姉さんが使っていた結界とはまったく違う。

感覚だけで、どこがどう違うのかを説明できないが大きな違いが、”圧迫感”がない。

純姉さんが結界を張る瞬間、胸が締め付けられる気分になる。

結界内にいるときも、圧迫感があるのだが、耐えれないほどではない。

それに比べて、白鷺さんが使った結界はまったくそういった違和感はないのだが、真っ白な空間が視覚的に違和感を出しており、結果として純姉さんの結界と落ち着かない気分が変わらない。


「相変わらず、何もない空間ですね。」

「ま~この空間は”外”と隔離しているだけの空間だからね。必要最低限、”世界”さえあればいいのさ。」


千秋先輩が説明をしてくれている間、僕はガバメントのセーフティレバーを下げる。そして僕は言霊を口にする。


「我、我に問いかける。そのうちに秘めし力の解放。対価は時間。我に力を指し示せ。」


ガバメントのスライドに描かれたルーンが輝き、”俺”が現れる。

”俺”はどんな”銃”でもいいので手に持ってから、言霊を唱えると、体内にある魔力を開放し、身体を変化させる事ができる。

性格も若干変わるらしく”僕”から”俺”に口調が変わる。

身体変化はまったくの別人。

たぶん姉2人が見ても分からないだろうし、湊ちゃんが見ても分からないだろう。

身長180センチに体重は元の70キロのままだが、比率でいうと痩せ型になる。

そして顔が、超イケメン。

マジ生きててよかった。

これを初めに見たとき、何度顔をつねって、夢でない事を願ったことか。

喜びのあまり奇声を発してしまい危うく通報されるところだった。


「う~んいつ見ても君のその姿は最高だね~~。俺は普段、”攻め”専門だが、”受け”でもいいよ。」

「そんな気持ち悪いことを言っていると撃ちますよ。」

「エアーガンは人に向けて撃ってはいけないルールなんだぞ!」

「18歳以下の僕がこれをもっていること自体ルール違反なんですけど。」

「そこは”お上”が認めていることだから問題はないよ。ただし、特例書だけはいつも携帯しておいてくれよ。いちいち警察まで迎えにいくのは面倒なんでね。」

「この間はすみませんでした。」

「いやなに、問題ないよ。一晩・・・。」

「貸しませんから。」

「う~んもう、い・け・ず。」

「マスター。そろそろテストに。」


白鷺さんの言葉に、悲しそうな千秋先輩を尻目に、俺はガバメントのテストを開始する。


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