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クロスロード  作者: 八尺瓊
~第一章 シロヤギさんとクロヤギさんの手紙~
5/31

5:匠と幼馴染 湊

化け物と出会う機会が少ないと言った事を覚えていますか?

あれはうそではなく、本当の話で、通常一般人には化け物、”妖魔”と呼ばれているモノはよってきません。

妖魔の好物は、”力”と人間の”腐”の感情。マイナス思考よりさらに進み、自殺、他殺、狂気といった”すでに行動”をしている状態でないとよってこないのです。

よってきて、肉体ごと取り込み自らを大きくしていきます。

”妖魔”は最初は人間の怨念から生まれ、動物の死骸などにとりつき、体を得え邪気を吸収していき、妖魔としての”序列”を上げていきます。

ある程度の力を得ると、”妖魔”は知識を得て、それ以上の力を得るために、共食いを始めるか、力を持った人間を襲うかの行動を取ります。

今回の化け物は後者のほうで、姉さん達の”力”にひきつけられて、やってきたと思われます。

逃げられたけど本来は倒すべきだった。

純姉さんが僕を守りながら戦ったせいで、実力の半分も出せていないようだったし、足手まといだとは思うけど、それでも姉さん達の戦いを見ていたいし、本当は一緒に戦いたい。

そんな気持ちが顔に出てしまっていたのか、僕の頭に純姉さんの手が優しく乗っかる。


「そんな顔をするな。」


純姉さんに頭をなでられながら、声をかけられる。


「たくちゃ~~~ん。」


ものすごい勢いで水無月姉さんが走ってきて僕を抱きしめる。


「すごいお姉ちゃん心配したんだよ。純ちゃんも大丈夫?」

「み~ちゃん心配しすぎ。」

「だってだって。」

「み~ちゃん、少し疲れたから今日は学校休む。たくの事お願い。」


僕から傘を受け取ると純姉さんは水無月姉さんの顔を見て目だけで何かを話あうと移動を開始し、水無月姉さんは大きく目を見開いて少しびっくりした感じになり何度も縦に頭を振る。

そして胸をたたいて張り切った口調で大声で純姉さんに向かって言う。


「任せておいて!」

「何を任せるんです?」


後ろから、姉二人の声でない女の子の声が聞こえる。

もちろん聞きなじみがあり、振り返るとやっぱり知っている女の子がいた。


「み、湊ちゃん?!何でこんな時間に・・・。」

「だって匠、なかなか学校に来ないから迎えに来ました。」


水無月姉さんの質問に軽く答える幼馴染の西園寺さいおんじ みなとちゃん。

身長は160CMぐらい。年齢も僕達と同じで16歳。

髪型がボブカット、肌の色が白く、顔立ちははっきりしており、結構男子からの人気が高い。


「匠が、またおねしょしてその後処理に必死な顔をしていたのかと思って見に来ましたけど。」

「おねしょって何年前の話だよ。もうそんな事してないし。」

「ココ最近の話じゃなかったっけ?」

「そんなわけないよ。」


湊と話していると僕の隣で、水無月姉さんが顔を膨らませていた。


「たくちゃん、いつもみなとちゃんとばっかり話ししてる。」

「そりゃ、”妻”で ”幼馴染”ですから。」


当たり前のことを何で聞くんですかという顔で湊ちゃんが言い返す。

”妻”って何?今はじめて聞いたんですけど!?

湊ちゃんの爆弾発言に水無月姉さんのこめかみ辺りがぴくぴく反応する。

なんだこの空気は。

重い、重すぎる。

確かに、妖魔と出会って動物の死骸を見ていや~な気分になったような感じがしたけどそれとはまた違う種類の重い空気に耐えれそうにない。

彼女に浮気現場を押さえられた感じがする。

いままで彼女なんて出来たことないけど、こんな感じなんだろうなと思う。

そんな困った顔をしてしまったのか僕の顔を見て湊ちゃんが、何かを思いついたようなうれしそうな顔をした。

嫌な予感しかしなかった。

湊ちゃんが、僕の腕に腕を絡ませて水無月姉さんの顔を見てニコリとする。

ギャーやめて。

修羅場が・・・。


「湊ちゃん。”妻”じゃないでしょ?それとたくちゃん嫌がってる。は・な・れ・てあげてね。」


水無月姉さんがすごい形相で、やさしい言葉遣いとは裏はらに声質がまるでそう聞こえない。


「匠がいやがってるわけないじゃないですか。私みたいなかわいい~~子にくっつかれて悪い気分にはならないですよ。ほらすごくうれしそうな顔してるじゃないですか?ね、匠。」


なんでだーーーー。ここで僕に話を振ると困る~~~。

汗だくの僕の額を湊ちゃんがふきふきすると、それも気に食わない水無月姉さんのボルテージが上がっていく。


「たくちゃんこっちに来なさい。」


水無月姉さんの迫力ある”こっちに来なさい”を受けて、飼い犬の習性か僕は無意識に水無月姉さんのところ移動する。

それをとどめるように、つないでいる腕で湊ちゃんが引っ張る。


「た~く~み~わかっているんでしょうね?」


何がわかっているか言いたくない。

本能でこの会話を拒否したい。

そんな怖い笑顔で言わないでください。湊ちゃん。

そして、ギラギラした獣の目で僕をにらみつけないでください。水無月姉さん。

究極の選択。

しかし、ほぼ毎日選んでいる選択肢。


「ごめん。僕用事あるから先にいくね~~~~。」


2人を振り切るためにスーパーダッシュで逃げる体制に入った僕だったけど、すぐに2人に前をさえぎられて脱出に失敗してしまいました。

それから30分後ぼこぼこの顔をした僕と、二人から説教とあーでもないこーでもないと罰を考えられ、今度別々だけど二人とお出かけすることになりました。

僕のおこずかいで・・。

誰か僕の財布に福沢さんのブロマイドを補充してください。

機嫌が直った二人は左右に分かれて、僕の腕を組み学校にようやく到着いたしました。

雨が降っていて傘を差すのに非常に困難なはずなのに二人はきれいに傘の中。

もちろん僕はびしょびしょ。

下駄箱に着くとようやく左右の腕組みから開放され、二人から離れたところでカバンからタオルを取り出し体を拭きながら息を吐く。


(疲れた。かわいい女の子2人に挟まれて幸せではあるけど、このままじゃ僕の体が持たないよ。)


「匠~どこ行った~~。」

「たっく~~~ん。」

「ここにいますよ~!」


さっさと返事を返さないと殺される。

ちょっとでも返事が遅れるものなら、あーだこーだとお小言を言われ、最後には必ず聞いてるのか?と質問ぜめにあう。

こんなことを繰り返ししてるから僕のストレスがたまっていくわけで。

二人の所に戻ると、またはさまれて教室まえ向かう。

もちろんその間は、他の生徒の注目の的だ。

羨ましそうに見てくる奴と、ひそひそ話をする女子生徒など、まだ学校に入って数ヶ月しかたっていないけど、学校で僕達のことを知らない生徒はいないんじゃないかと思える状況になっていた。

教室に入ると、自分の席に着く。

席は真ん中の列の真ん中、まさに中心。

二人はちょうど左右の壁ぎわに分かれており、二人のところに女子友達が群がる。

僕に声をかけてくる友達なんて、この教室では1人いたらいいぐらいだった。

その1人の男友達が声をかけてくる。


「よ。たくみ。重役出勤じゃないか。」

「さくや。その冗談笑えない。」

「知ってていってる。」


僕の苦笑いに、教室の中で一番仲のいい男友達の島 さくやが話かけてくる。

こいつはかなり中性的な顔立ちで、見方によっては女性にも見える。

体型はほっそりとしていて身長が168CM、体重は内緒らしい。髪型は女性雑誌にでてくるようなショートヘアーで、よく似合っていた。

電車通勤のさくやは、よくおっさんの痴漢にあうらしく、手をつかんで電車からひきずりだし、ぼこぼこにしてから警察に引渡ししていると聞いたことがある。

確かにこいつが笑うと僕でも見とれる事があり、男であることが神様のいたずらだと思うことがある。


「しかし、あれだな。重役出勤プラス美女を引き連れて出勤だもんな。学校でこれだけ目立つ奴はほかにいないね。」

「僕だって目立ちたくて目立っているわけじゃないよ。どっちかっていうと影薄くひっそりと学校生活を送りたい。」

「そりゃ無理だ。あんなに美人な姉妹と、あの幼馴染だもん。」

「さくやは、うちの姉2人と付き合いたいと思わないのか?」

「見ていて脈がない戦いなんかナンセンスだよ。」

「そっか。けどお前のルックスだったら、ほかに告白してくる女子とかいるんじゃないのか?」

「ゲスいな。そんなモテる、モテないなんかどうでもいいし。まだ誰とも付き合う気なんてなれないよ。ひとりを除いては。」


そんな事を言いながらさくやの目がな~んかいやな感じがして、そんな事を思っていたらさくやが、急に笑い出した。


「やっぱいいわ。たくみは。顔にすぐに出るもん。」

「お前が変な話するからだろ。」

「冗談に決まっているだろ。考えただけで気持ち悪いし。」

「だよな。」


話がひと段落したところで、湊ちゃんが声をかけてきた。


「男二人でなんの話し?」

「たくみの奴が俺と付き合いたいって言うんだ。」

「ぶーーー。」


噴出す僕に汚いなとさくやが言う。


「島君。匠は売約済みだからごめんね~~~。」


湊ちゃんが片目をつぶりながら、右手を上げてさくやと軽く話しを交わす。


「いいさ。そのうち買い取ってあげるから。」


二人の間で火花が散ったように見えた。

湊ちゃんはさくやが僕をネタを良く使って、からかわれている事に本気で答えなくてもいいのにと思うんだけどな。

水無月姉さんにも同じような事を言って怒らせていたし。

話は僕が小学生2年生の時になるのだけど、湊ちゃんは僕の机に入っていたラブレターを僕より早く発見し、休憩時間に教室の前にある教卓に行き、僕がラブレターをもらったことを暴露して、うれしい反面、恥ずかしい気持ちで赤面している僕を尻目に、その場でラブレターを掲げてびりびりと破き始めた。


「匠は、私と結婚するって決まってるの。誰も私達の間に入ってこないで!!」


と大声で叫んだ大事件があった。

それ以来、僕らは夫婦扱いされて非常に困った。

当時困っていたのは僕だけで、湊ちゃんは堂々とした態度で、ちゃかされてもそれがなに?みたいな顔をして平気だった。

小学校4年生の時、僕に姉妹ができ、湊ちゃんはそこからさらに僕にかまってくる頻度が激しくなった。

それに比例して僕のストレスも増え始めたけど、それでも僕と湊ちゃんは現状のまま一緒にいる。

決して僕はMじゃないよ。

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