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クロスロード  作者: 八尺瓊
第2章 シロヤギさんとクロヤギさんの復讐 中
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第14話 再会

 ののんが来てから陣は、彼女の事を意識している。

 確かに陣としてののんは見ているようだが、ごくたまに自分を見ながら遠くを見ているような眼差しをする事がある。

 そのたびに心が針でさされたような痛みを感じる。

 今までに感じたことのない何か。

 これが恋なのか?

 今まで、女性にそれとなく言い寄られることがあっても自分から、どうにかしたいと感じたことはなかった。

 智子に関しては、少し違う。

 彼女は見方を変えれば敵となる存在であり、ギリギリのラインで一線を越えることができない存在。

 今の陣にとってののんとは、本当に必要な存在なのだ。

 しかし彼女が自分の先に見ている存在”ジン”。

 考えたくもないが強烈な嫉妬心が心に渦巻く。

 

 (ホラミロ、コノオンナヲコロサナイカラ、ソンナカンジョウガウマレル)

 (コイツサエイナケレバ、ソンナカンジョウモキエル)

 (コロシテシマエ、サアハヤク)

 

 この言葉に、陣はブチ切れた。

 ののんを失う事は考えられない。

 絶対に手に入れる。

 身も心も自分のモノにしたい。

 ののんのぬくもりを感じたい。

 それを、取り上げるだと!!

 

 (ギャーーーヤメロ!オレタチトツナガラナイト、チカラガツカエナイノダゾ)

 (ヤメテクレー)

 

 まるで壊れたラジオのように”あいつらの声”がノイズのように聞こえて、最後に大きな悪魔の叫びが聞こえたような気がしたが、それから何も聞こえない。

 そして、陣は魔法が使えなくなった。

 

 「どういうことか説明しろ」

 

 笹川が、腹心の女性に現在、目の前で裸で治療用ベットに横になる陣の説明を聞いている。

 ここ数日前までほぼ調整がうまくいっており、5体の悪魔とのシンクロも順調かと思われていた。

 しかし、いきなり、陣の体から悪魔とのシンクロパスが切断。

 緊急に呼び出された陣は例の屋敷とは違う、”黒の薔薇”の息がかかる市内の病院の地下にある研究施設で、検査を受けていた。

 特に体には異常は見当たらず、精神パルスも正常。

 むしろ、この正常値が問題だった。

 ”乱れがない”。

 数日前なら正常値から急に激しく変動するパルスが、今日はピクリとも動こうとしない。

 悪魔と、”契約”ではなく強引に魔力を移すには、精神的に直結する必要がある。 

普通の人間なら10分ともたず精神が崩壊し、死に至るか、暴走する。

 陣は特別であるがゆえに、パルスの乱れは少なくて済んでいる。

 ”黒の薔薇”はこの悪魔との精神直結の研究で一歩も二歩も、他の組織から先をいく技術を持っていた。

 それと、切り札になる”モルモット”。

 陣は麻酔で寝かされているが、笹川のイラついた声は耳に届いていた。

 説明を求められても、彼女には、シンクロパスが通らない原因は見つからず、悪魔側から送られている信号はしっかりと接続されているのだが、陣に信号が届く瞬間に切断される。

 

 「精神的なブロックがかかっているように思われます」

 「精神的なブロックだと?」

 「ここ数日で”ジェイ”に何らかの接触があったと推測されます」

 

 笹川は携帯を手に取ると電話をかける。

 座っている椅子の肘置きをコツコツと叩きながら、イラつきを抑えるが逆にイライラした気持ちを表している事を示しており、周りのスタッフに緊張が走る。

 

 「笹川ですけどぉ。最近君の大事な大事な”一ノ宮君”に何か変わった事はなかったか?」

 

 電話の相手から情報を聞くと、笹川はわかったと電話を切る。

 

 「最近、”ジェイ”の体から女のにおいがするそうだ。身辺を調べろ」

 「わかりました」

 

 とりあえず問題解決に繋がりそうな方向に進み笹川が安堵する。

 それを感じた周りのスタッフも気は抜けないが、一旦は自分達の身の安全を感じることができ、作業に集中する。

 

 「わかりました。今から”ジェイ”の家に向かいます」

 

 サングラスをつけ、フルフェイスをかぶってバイクに跨って疾走していた”ソイ”はインカムから連絡を受けて、”ジェイ”の家へと向かう。

 セキュリティがしっかりしているマンションの一室を借りている”ジェイ”の部屋のインターフォンが鳴る。

 ののんは、いやな予感がしており、クローゼットの中に隠れて身を潜める。

 インターフォンが鳴って数分後、ガチャっと家の扉が開く。

 何も悪いことしていないはずなのに、恐怖心がののんを襲う。

 

 (助けて陣。助けて)

 

 廊下を歩く音がだんだん近づいてくる。

 猫の姿に変身したいが、まだ魔力が回復しておらず、息を潜めるしかない。

 ギィーという音と共にクローゼットが開かれる。

 目の前に立っていたのは金髪のソフトモヒカンでタックトップといったいかにも肉体派ですと言いたげな少年がたっていたが、発せられた言葉は思っていた声色とはまったく違っていた。

 

 「ののん?」

 

 どこかで聞き覚えがある。

 金髪の少年は大きく目を見開き、腰を下ろしてそっとののんに近づく。

 恐怖はあるが先ほどの声がどうしても気になり、ビクビクしながらではあるが、声をかける。

 

 「私を知っているのですか?」

 「私よ?あ、そうかこの姿か」

 「?」

 

 よくわからないことをいう少年が立ち上がると、目をつぶり、少し上を見て両手を広げる。

 体が発光し、ののんがそのまぶしさに目をつぶり、次に目を開けると、目の前にダクトがいた。

 

 「ダクト!」

 「ののん!」

 

 二人は抱き合い、安心したようにうんうんと頷く。

 ののんが先に口を開く。

 

 「よかった。どこにいっていたの?」

 「ののん。時間がないの。ここじゃあ見つかってしまう。私達のところに着て」

 「けど陣が・・・。」

 「彼は今、病院で調整を受けているわ」

 「調整?」

 「それも場所を変えて話をするわ」

 

 二人は急いで、陣のマンションを出て、バイクを走らせると市内から外れた大きな屋敷の前に着く。

 

 「ダクトここは?」

 「信頼できる人の家よ」

 

 バイクを降りた二人は、屋敷のインターフォンを鳴らす。

 カンコーンと、上流階級を思わせる音に、ののんはドキドキしながら、屋敷の扉を開けたのは色の白い、人間とは思えないほどの顔の整った女性だった。

 

 「白鷺。ひさしぶりね」

 「どうしたのですか?ダクト。いつも連絡をしてくれるのに」

 「少し、話がしたくて。いいかしら?」

 

 ダクトの後ろにいるののんを見た白鷺と呼ばれる女性が、素敵な笑顔を浮かべて、屋敷に招きいれてくれる。

 

 (ダクト、ダクト)

 

 小声でののんはダクトに話かける。

 白鷺を先頭にダクト、ののんと続き、あまりの屋敷の豪華さに少し腰が引けるののんは現状をちょっとでも把握しておきたかった。

 

 「大丈夫、ここには私の父と呼べる人がいる場所なの」

 「マスターはこちらにおられます」

 

 コンコンと豪華な装飾がされた扉を白鷺がノックし、中から男性の声が聞こえる。

 「開いているよ」

 「失礼します」

 

 そこにいたのは桃色の女性用のゴージャスなドレスを着て、別のドレスを作成中の男性がいた。

 歳は16歳~18歳ぐらいでまだ高校生ぽさが残るの印象を受ける。

 

 「おお~ひさしぶりだね。ダクト」

 「相変わらず、そんな格好をされているのですか?お父様」

 「僕の趣味だからね~、でそちらのかわいい女性は?」

 「あ、え~と雀 ののんといいます。」

 「フムフム。君は”悪魔”かい?」

 

 目の前にいるののんは、人間の姿をしており、どうみても”悪魔”とは判断できない。

 しかも、魔力が現在切れており、変身もできなくなっている状態なのだが、どうやって彼が自分を”悪魔”と判断したのかわからない。

 

 「僕は”まけん”に所属しているので、なんとなくだけどわかるんだよ」

 「そうですか。確かに”悪魔”ではありますが、私は人間と悪魔のハーフです」

 「おおーーーーー!それはすごい。かなり興味深い話ではあるけどダクトの用件とは違うようだね」

 「確かに今、ののんが人間と悪魔のハーフだと言う事は始めて知りました。それとは話が違うのですが、”黒の薔薇”がかなり活発な動きをしており、私のこ・い・び・とが捕まって、さらにののんが居候している人にも、危機が」

 「う~ん、なんだか複雑な話っぽいね。白鷺、みんなにお茶を。座って話をしようか」

 「これは失礼しました。マスターは普段腐っているのに、こういう所には良く気がきく方です。」

 「一言多いよ」

 

 こうして、4人は自分達が持っている情報を話し始める。

 ほとんど、ののんと、ダクトがメインで話をし、千秋も”黒の薔薇”に関して知っていることを混ぜていく。

 

 「なるほどね。その”仁”と”陣”という男の子を助ければいいんだね」

 「しかし、私が”ソイ”となり潜入調査を行ったのですが、”仁”が見つかりませんでした」

 「じゃあ先に場所がわかっている”陣”の所に行ってみようか。あ、ちょっと待ってね頼りになる後輩に電話してみるよ」

 「匠様を呼ばれるのですか?」

 「彼の力は必要だよ、あ、もしもし神野君~?」

 

 電話の受話器から悲鳴のような声が聞こえる。

 

 (ちょ、ちょっと水無月さん!ズボンをずらさないで。電話女の子じゃないから、千秋先輩だから)

 (たくちゃ~~ん、おねいちゃんに嘘はだめだよ~。かわいい女の子なんでしょ。マジでそんな女の子と電話してたら、たくちゃんコロシテおねいちゃんも追いかけるから)

 

 電話から大きな声で物騒な会話が聞こえる。

 なんともいえない空気に聞いている全員が苦笑するしかなかった。

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