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クロスロード  作者: 八尺瓊
~第一章 シロヤギさんとクロヤギさんの手紙~
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1:プロローグ クロヤギとシロヤギ

とあるカップルが学校の屋上で別れ話をしていた。


「もう、私達終わりなの?」

「俺からすれば始まってもなかったけどな。」

「ひ、ひどい。スキだって言ってくれたじゃない?」

「そんな事いったっけ?面倒な女は嫌いなんだ。じゃあ。」


男子生徒が去っていく背中を見ながら崩れ落ちるように泣く女子生徒。

それを”影”から見ている存在がいた。


「いや~、毎回面白いね。クロイノ。」

「うんうん。人間の恋愛感情の移り代わりの激しいこと。」

「クロイノ、今回の”馳走”はあの娘だね。」

「そうだね。かなりのうまみ成分が感じられるよ。シロイノ。」

「「僕達グルメでよかったね。」」


彼女の”影”に潜む4つの目が光を強くする。

泣き崩れている彼女には”影”の声が聞こえている様子はなく、その目の光にも気付いた様子はない。


「今日はどのカードがでるかな。僕たちが作った”レゲメント”デッキをよく切って、一番上のカードをめくると。」


闇の中その中でも光るカードを子供のような小さな手で名刺ぐらいの大きさのカードをきる。

そして本来絵が描いてある部分を裏向きにして束にしておき、一番上のカードをめくる。

カードに描かれた絵は中世の騎士を思わせる鎧の騎士が描かれており、騎士が跨いでいる馬に特徴があり、ペガサスのような翼を持っているのだが、その翼がコウモリのような皮で作られた翼を持った絵で描かれていた。

そして、カードの絵の下には名前が書かれており、”Eligos”と記述されていた。


「う~ん、エリゴスか~。騎士のカードを悪魔の僕達が引くなんて、変な気分だね。シロイノ。」

「けど、失恋の女性に対して騎士なんてどこかメルヘンを感じるねクロイノ。」

「なるほど、なるほど。そのメルヘンを利用するんだね。シロイノ。」

「利用?違う僕達は押し売りするだけだよ。クロイノ。」


引いたカードを手のひらに載せると小さな丸い球体へと変わる。

女の子の影から2つの子供?のような黒い影が浮かび上がる。

顔を両手で伏せてまだ泣いている女の子がそれに気がつくはずもなく、その子供に声をかけられて初めてそちらを向く。


「「やあ。かわいそうなお嬢さん。僕達がその気持ちを買い取るよ。」」


彼女が2つの重なった声のしたほうを向くと、小さな悲鳴を上げた。

そこに居たのは2匹?のヤギだった。

もちろんただのヤギではない。

ただのヤギで彼女が悲鳴を上げるわけはないから。

執事服を着た身長100CMぐらいで色が1匹は白、もう一匹は黒。

一見人形かと間違えそうになるが現実として彼らの纏う空気が生き物だと表現していた。

彼女が彼らを見て絶句している間もひたすら2匹は彼女に話かけていた。


「その気持ちをお金で買い取ってもかまわないし、それよりも君にぴったりのアイテムがあるんだ。」

「そうそう。今の君にぴったり。」


黒いヤギが手にしているのは先ほど変化させた丸い球体だった。

よく見ると丸い球体はパワーストーン屋で売っている石のようだった。


「このオニキスは君に彼の気持ちを取り戻させてくれる奇跡を埋め込んだルーンが刻まれているんだ。」

「彼の気持ちが一生、君に。」


ヤギ達が彼女の周りを回りながら、歌い始める。


「シロヤギさんからお手紙着いた。」

「クロヤギさんたら読まずに食べた。」

「仕方がないのでお手紙書いた。」

「さっきの手紙のご用事なあに。」


子供のような、柔らかいボイスでささやきかけるように歌いそれを聞いていた彼女、はじめは目を見開いて驚いていたようだったが、何かに取り付かれたような遠い視線になり、黒いヤギが差し出した黒と白が交じり合ったオニキスに目を向けると、そっと手を伸ばし受け取る。


「これで契約は成立したね。」

「うんうん。成立した。」


彼女は何も言わずまだ夢から覚めていないような顔だったが、頭を縦に振る。


「さあ、それを額にかざしてごらん。」

「きっといい夢が現実になるから。」


彼女がオニキスを額にかざすと石が額に吸い込まれ、彼女は意識を失い空中に浮き上がりだらんと腕を垂れ、眠ったように体から力が抜けえる、胸のあたりから光を放ち飴玉のような塊が出現し、シロヤギがそれを手にする。


「おお、これはやっぱり上質のご馳走だよ。クロイノ。」

「うんうんではさっそく頂こうか。シロイノ。」

「けど一個だけだよ。」

「一個だけだね。」

「この間クロイノが食べちゃったから僕がもらっていいかな?」

「はあ!?それとこれとは違うだろ!シロイノ。」

「なんだと何が違うんだ?!クロイノ!」


急に雰囲気すら変えて、怒り始める2匹のヤギ。

一個の食事を取り合いながら、闇に消えていく2匹。

残った女の子はまだ空中に浮いており、やがて体を黒いオーラが包むとどす黒い光を放ち、黒い煙の中から黒い鎧を着た女の騎士が立っていた。

女の騎士が口笛を吹くと、大きな鎧を着た翼を持った馬が出現し、屋上を駆けて天に消えていった。

それから数日間イケメンの16~18歳の少年が失踪する事件があった。

その中には屋上で言い争っていた男子生徒も含まれており、彼らの捜索願いが出ていた。

同時に1人の女子生徒の捜索願いも。



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