85話
武司とタケノコはお互いの様子をうかがいながら距離をとった。二人の視線がぶつかり合う。有利なのは作者であるタケノコ。なぜなら文章を好き勝手に書き換えれるのだから。
例えば武司は着ている衣服が消えトランクス一枚になった。「キャー」や「イヤー」等観戦している女性陣から悲鳴が上がった。タケノコはふてぶてしい笑顔で
『武司さん、敗北を認めた方がいいですよ? 露出狂として逮捕される前に』
「俺は東京に帰るって決めてるんだ! しかし、小説○になれるかなには制限があるからトランクスまでは消せまい」
『ムムム、ばれてましたか』
向かい合う作者と主人公はバスターソードを握っている。
『武司さん僕にかすり傷一つでもつけられたら元の世界へ帰してあげますよ』
「ふん、なめられたもんだな。はあー!」
武司が目を閉じ唸ると黒いフレームの眼鏡をかけカッターシャツにスラックスを履いたタケノコの周りに数百の刀身が現れた。心牙の一つ現牙だった。多数の刃は刀身の中心にいるタケノコに向かって飛来した。
ついに番狂わせが起きて武司が勝利を掴んだかのように思われた。しかしタケノコの姿は霧散していた。剣の刃が大音響を上げぶつかりあっただけだった。