84話
さっぱりした天気で気候が良い。風も少し吹いている。微風が肌を撫でて心地よくて過ごしやすい日和だ。
金属音がぶつかり合う音がノース国の広大な公園で響いていた。何度も鍔ぜり合いを演じる。戦っているのは男が二人。武司とタケノコだ。タケノコはついに小説の世界にまで姿を出現させたのだ。タケノコは剣で突き、横切り、袈裟切り、逆袈裟切り、と攻め立てる。
それを楽にさばく武司。彼は異世界での冒険を通じて肉体的にも精神的にも剣の扱い方も成長していた。公園には武司達の決闘を見学するちょっとした人だかりができていた。声援を送る人までいる。二人の戦いは三十分以上続いた。果たして終わりがあるのかと言えるぐらい熾烈なバトルだった。武司は疲れからか動きが鈍くなり始めていた。足運びが僅かに失速する。
『武司さん。この小説を書いているのは僕なんですよ。勝てると本気で思ってるんですか?』
「諦めねえぞ! 俺は東京に帰って沙織ちゃんとデートするんだ!」
武司は剣を握っている右手に左手を添えタケノコに体全身を使った突きを仕掛けた。しかしタケノコ余裕にかっこよくかわす。
武司達の周囲から歓声が上がった。武司は体中から汗を垂れ流しながらも攻撃を行う。剣を一閃させたがタケノコは軽く剣を横にして防いだ。