8話
「え!? どうなんの俺? 焼かずに食っちゃったけど」
『焼かないと一時間程症状がでますね』
「え、どんな?」
武司は焦った顔で怯えている。武司の傍らにある木立の梢に茶色い鳥が留まって唇を尖らせ「ホーホー」と寂し気に鳴いている。
『脱衣全裸踊り症候群です』
「ええー! どんな症状やねん……あれ体が勝手に!」
武司はタタンタンタンタンと足でステップを刻みながらシャツを脱ぎ放り投げた。次いでジャンプしながら靴下とスニーカーを脱ぎ散らし、両手を打ち付けながら半ズボンを脱ぎ、ついにはトランクス――
「キャー! 変態!」
と森の奥から姿を見せた美少女は言いながら武司の左頬を張った。鋭い一撃だった。それに驚いた茶色い鳥が飛び立った。木の枝が揺れ緑色の葉がハラハラと二枚落下した。
「あ、イタ!」
武司はビンタで目を覚ましトランクスを脱ぐ一歩手前で回復した。武司と顔立ちの整った少女は木を燃やしそれを囲って座った。
「つまり、キノコを食べたせいで服を脱ぎながら踊ってたって言うのね」
「そう。だから変質者じゃないぜ」と武司。
焼かれている木や葉がパチパチと音を発て爆ぜた。辺りには夕焼けの光りが差していた。