79話
武司は湿気混じりの石段をスタスタと降りていくと異変に気付いた。何やら四角く人の顔ぐらいのサイズ物体がフロアを山積している。まさに足の踏み場もないといった様相を呈していた。
その物体の正体は本だった。色とりどり、題名様々な書籍がところせましと堆く積まれている。小さな本の山がいくつかあった。
「荒れてるな、階段の場所すらわからね」
武司はそう喋りながら本を一冊拾ってみた。題名は「熟女の口説き方大全」。ルーノが両手で自身を抱きしめながら
「武司……そういう趣味だったのね、だから私に興味が無い……。この変質者! 恐!」
「いや、違うって。たまたま拾っただけだよ!」
そんなやり取りをしていると一冊の本が浮き言葉を発した。
「挑戦者の諸君、ごきげんよう。さて君達に対する難題は一冊の本をこの本の海の中から見つけだすことだ……焦っているだろう。不可能だと。ふふふ、絶望感を味わいたまえ……」
「無理難題ってやつだな……。何時間かかるか分からねー……そうだ! タケノコ! おいタケノコ!」と武司。
『ZZZ……クー……(-_-)zzz』
「って、寝てる! 顔文字出た! ピンチなんだから覚醒しろ、タケノコ!」
武司の必死の願いにも救いの手は差し延べられなかった。空中を漂う本は述べた。
「探す本の題名は……『熟女の口説き方大全』! さあ必死に探索してくれたまえ、ククク。諦めてもいいんだよ?」
武司はポカンとした顔で手にしていた一冊の本を天高く掲げた。題名は『熟女の口説き方大全』。空中を浮遊する赤い外観の本は言葉を紡いだ。
「早い!! 二秒かかってない! なんて強運の持ち主なんだ! 仕方ない……」
フロアを犇めきあっていた本の山は跡形も無く消えた。そのため不意をつかれてしたたかに腰を打った武司。ルーノとサリナは無事接地した。そして下層につながる階段が現れていた。