78話
武司はボードゲームに興じていた。ゲームの内容はサイコロを転がして出た目の数だけ盤上を進めゴールに先に到達した方が勝者だ。対戦相手の女性サルバはニコニコ顔を貼付けた表情をしている。
サルバはゴールまで後一歩。武司は後十七マス。今は武司の番だが勝敗はけっしたかのようだ。出る目の最高は六。このゲームの敗者になると挑戦者は一階に戻されてしまう。
「サリナ、ルーノごめん……負けが濃厚だ」
「あはん、仕方ないわよ……」とサリナ。
「ゲームだしどうにもならないわ」とルーノ。
武司は盤上にサイコロを転がした。出た目は六。そして進んだ先にあるマスの内容は「もう一度サイコロを転がし、出た目の数だけ進む」。サルバの妖艶な表情が僅かに曇った。武司はさらに人形を進めサイコロを投げる。出た目はまた六。武司は喜々として人形を盤の元の位置から進めた。 次のマスの内容は「サイコロをもう一度振る。そして出た目だけ人形を進ます」。武司は微かな勝利の臭いを嗅ぎ付けた。武司は作者が味方についていることを思い出した。まさにご都合主義だ。武司はサイコロを盤上に落とした。コロコロと音をたてながら出た目は六。合わせて十八マス進め武司は勝ち星を拾った。
「や、やったぜ!」
「こんなことがあるなんて……」
武司は両手を挙げ喜び、対戦相手は苦虫を噛み潰したような顔をしている。