77話
ひんやりするダンジョン。風は無いが下の階に進む程、気温が低くなっていくようだ。ついに地下三十五階まで到達した。この部屋は全面鏡ばりだった。武司達の姿を何十枚もの鏡が映す。
このフロアのモンスターは武司だった。えっ? 武司? そうだ、しかし赤い肌をしている。モンスターが武司に化けているのだろうか。偽武司はサリナに接近し切り付けた。その一撃をバルハートで受け止め返す刀で突きを放つ。その攻撃は正確に偽武司の心臓部を貫いた。
圧勝だなと感じた武司だったが偽武司は平然としていた。
『ガガミというモンスターですね。鏡に映した者に変化するんです。本体は鏡です』
「タケノコ了解した。でもどの鏡だ? いっぱいあるんだけど」
『そこまで教えたら簡単過ぎて面白みに欠けるので頑張って鏡を破壊してください』
「へいへい」
とタケノコと武司の会話が行われた。武司達はバラけフロア中の鏡を破壊していく。焦ったガガミは武司に襲い掛かった。剣戟の音が響く。幾度もぶつかり合う二本の剣。武司は亀と徒競走するように余裕でガガミの攻撃を凌ぐ。武司はガガミを見ながら言葉を紡いだ。
「サリナ、ルーノ、俺が時間稼ぎするからその間に鏡を壊してくれ」
「あはん、分かったわ」
「オッケー」
鏡の部屋がどんどん破壊されていく。大小の鏡のカケラが地面に転がる。サリナが伸縮させたバルハートで天井に設置されていた一枚の鏡を粉砕するとガガミは表情を崩し眉を下げ泣きそうな表情になりながら悲鳴を上げ体から煙りが立ち上り始めた。
「グガー! グガ……」
バタリと俯せに倒れたガガミは次第に肉体が薄くなり最後には姿が無くなった。武司達は勝利をもぎ取った。