71話
「グエー!」
ゴムレスは沈痛な悲鳴を上げ武司達から離れていく。勝敗は決した様子だ。度重なる攻撃に耐え兼ねたのだろう。相当痛かったのかもしれない。なんせ肉体に穴が幾つも開いたのだから。
ゴムレスは遁走した。しかし上の階への道はルーノが立って塞いでいたので向かえない。したがって逃げ道はないのだ。この三十メートル角のフロアを逃げ惑うしかない。ゴムレスはゆっくりとしたペースで走った(歩いているように見えるが駆けているのだろう。全力疾走かもしれない)。壁に寄り掛かり戦意を喪失したようだ。壁から離れようとしない。
モンスターのくせに死ぬのや痛み、苦しみがおっかないのだろうか。武司達は戦うのを忌避するゴムレスに面食らっていた。今までのモンスター達は死ぬまで襲い掛かって来ていたが、今回は違う。
武司がゴムレスの背後から近づくと奴は泣き叫ぶのだ。
「グゲー、グゲー」
武司達は弱い者虐めしているようで気が引けた。仕方なくゴムレスの様子を見聞することにした。五分待ち、十分待機する。ゴムレスは相変わらず喚いきながら壁を叩いている。
「グエー、グエー」
ついにフロア内に変化があった。地下四階への道が開けたのだ。地面の一部がスライドし階段が出現する。それを見たゴムレスは会心のガッツポーズをした。