68話
地下三階の主は体格が大きく体が重いためかノッシノッシと歩く。まさに鈍重だ。攻撃の意思はあるようで武司達に近づいて来た。 本人は全速力で足を進めているのかも知れないが圧倒的に鈍かった。ゴムレスは腕を振り上げチョップを繰り出した。しかし的が居ない。
あまりにスローペースな攻撃の為、武司達は歩いてかわせたのだ。ゴムレスは唖然として棒立ちしている。きっと自分の動きのとろさを実感しているのかもしれない。
ショックも大きいだろうな。しかしゴムレスはめげずに右肩を前に出し体当たりをかましてきた。当たれば大ダメージは必須だろうがヒットするのはまずないだろう。動きがハイハイする赤ちゃんと大差がないのだから。体当たりを外した後、勢い余って灰色の石の壁に追突した。壁が崩れ亀裂がはいり穴が開く。立ち上がったゴムレスはまるで自身の不甲斐なさを嘆くように吠えた。
「グガーー!」
ゴムレスは悔しいのか叫びながら手足をばたつかせ暴れている。まるでお菓子を買ってと駄々をこねる幼稚園児だ。
力はあるので壁に凹みを作り床を陥没させてしまう。武司達は残念なものを見る目をモンスターに向ける。哀れみの視線だった。いくら怪力の持ち主でも当たらなければ宝の持ち腐れだ。