63話
松明やランタンに照らされた石造りの部屋。そこで対決するのは凡庸な容姿の武司と一つ目の怪物アサシン。
攻め掛かるのはアサシン。武器を失った人型のモンスターは肉弾戦をしかけていた。殴り掛かり回しげりを繰り出す。防衛に回った武司は待っていた。迫撃を軽快なステップで鮮やかにかわしながら。
それからも攻守は変わる事なく数十分が流れた。始めは勢いがあった黒いつるっ禿げのモンスターは大粒の汗を顔や体にかき動きが鈍くなってきていた。ついには膝に手をつき「はーはー」と荒い息をしながら休息をとりだし動きが止まった。
それを勝機と見た武司は人差し指をアサシンに向ける。そして突き出した指先に意識を集約した。現牙はイメージが肝要だ。精確な発想力が強力無比な技となり発現する。
すると武司の指先から細長い金属製の刃が伸びる。狙いは勿論アサシンだ。標的は危険を察知し右に飛びのく。しかし音の早さに匹敵する伸びる刃は目標の動きを追撃し、くるっと曲がった。そして鈍い動きのアサシンの肩を正確に貫いた。そして貫通して石室の壁に刺さってやっと伸びが止まった。
その後、次第にアサシンの黒い顔に青みがさし、喉を詰まらせ「ヒーヒー」と辛そうな呼吸音をさせるようになった。